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20年以上も水族館で人気だった魚が「新種」だったと判明!


20年以上前から水族館で人気のあった魚が「新種」だと判明しました。

この魚はコイ亜科アゴヒラ(Garra)属の一種で、赤い尾が特徴的なことから「レッドテール・ガラ(redtail garra)」の名で親しまれてきました。

アゴヒラ属の魚というと、人の皮膚の古い角質を食べてくれるドクターフィッシュ(Garra rufa)が有名です。

しかしこのレッドテール・ガラは20年も人々に存在を知られていながら、学術的には未記載の状態だったのです。

一体なぜそんなことが起きてしまったのでしょうか?

研究の詳細は、2023年6月30日付で科学雑誌『Zootaxa』に掲載されています。

目次

  • 「新種」として認定することの難しさ
  • 新種はどんな特徴を持っているのか?

「新種」として認定することの難しさ

今回新種認定されたレッドテール・ガラは2000年頃から水族館の商取引などで人気のある魚でした。

それだけ以前から知られていた魚がなぜ、ずっと科学的には未記載の状態になっていたのでしょうか? 水族館は研究機関も兼ねる施設のはずなのに、誰もその事実に気づかないということがあるのでしょうか?

実は、尾の色や形態など、他のアゴヒラ属とは大きく異なる特徴を持っていることから、研究者らもこの魚が科学的に未記載種であることは薄々分かっていたようです。

ところが、生物を「新種」として記載するには、ただ実物が目の前にいればいいわけではありません。

最も時間と労力が必要なのは、科学的な根拠にもとづいて新種と証明することです。

例えば、その野生個体が生息している現地の生態系を調べて、過去の文献を隈なくチェックし、形態や色、各器官の構造がどの記載種とも異なることを明らかにしなければなりません。

また場合によっては、近縁種間との違いを証明するためにDNA解析も行います。

レッドテール・ガラの標本
Credit: FMNH –New fish species discovered after years of popularity in the aquarium trade(2023)

今回のケースでは、レッドテール・ガラの野生個体がどこに生息しているかが分かっていなかったため、これまで科学的な調査ができませんでした。

ある生物を新種として記載するには、自然の生息地で観察する必要があります。

その野生の生息地が見つかっていなかったためにレッドテール・ガラは長い間、新種として記載できなかったのです。

ついに野生のレッドテール・ガラを発見!

しかし今回、米フロリダ自然史博物館(FMNH)の魚類学者であるラリー・ペイジ(Larry Page)氏らにより、ついに野生のレッドテール・ガラが発見されました。

淡水生のアゴヒラ属は、アフリカ西部からトルコ・イランを含む西アジア、中国やインドの一部を含む南アジア、そしてタイやミャンマーを含む東南アジアの河川に広く分布します。

ペイジ氏は2007年以来、魚類調査のために毎年タイの河川を訪れていました。

彼は、レッドテール・ガラはタイの隣国であるミャンマーの水族館でよく取引されていたため、ミャンマーに広く分布しているのではないかと推測していたといいます。

そして最近、タイの国境にも近いミャンマーを流れるアタラン川の支流でフィールドワークをしていたときに、野生のレッドテール・ガラを発見したのです。

アタラン川の流域(黒がレッドテール・ガラ、赤と緑は近縁の既知種)
Credit: FMNH –New fish species discovered after years of popularity in the aquarium trade(2023)

これにより、野生下での詳しい生態調査が可能になり、20数年越しに「新種」として記載することに成功しました。

新たな学名はタイの著名な魚類学者であるノン・パニトフォン(Nonn Panitvong)氏にちなんで、「ガラ・パニトフォンギ(Garra panitvongi)」と命名されています。

ではレッドテール・ガラ改め、ガラ・パニトフォンギは具体的にどんな生態をしているのでしょうか?

新種はどんな特徴を持っているのか?

こちらは野生下にいるG. パニトフォンギとその生息地の川です。

G. パニトフォンギは体長10センチ程で、頭部〜胴体にかけて深みのある青緑色、尻尾にかけて鮮やかなオレンジ色となっています。

野生下の個体
Credit: FMNH –New fish species discovered after years of popularity in the aquarium trade(2023)

顎の真下についている口部は円盤状の吸着パッドのようになっており、これを使って、岩肌に付着した藻類やデトリタス(微生物の死骸や排泄物を含む有機物質)をこそげ取って食べます。

彼らを水槽の中に入れておくと、ガラス面などにできた藻類を自然に食べてくれるので、掃除係としても活躍してくれるそうです。

G. パニトフォンギの口部
Credit: FMNH –New fish species discovered after years of popularity in the aquarium trade(2023)

また近縁種と大きく異なる特徴の一つは、鼻先のウロコが硬化してできたイボイボです。

他のアゴヒラ属にも同じような構造はあるのですが、そのほとんどは一時的なもので、繁殖シーズンに巣を守るために使った後は取れてなくなります。

しかしG. パニトフォンギでは、イボイボが永続的に残り、普段も攻撃用の武器として使用しているのです。

加えて、ツノのように細く尖った鼻先も彼らに特有の形態であり、研究者らは、こうした特徴をヒントにG. パニトフォンギを見分けています。

尖った鼻先と永続的に残るイボイボが特徴
Credit: FMNH –New fish species discovered after years of popularity in the aquarium trade(2023)

一方でペイジ氏によると、アゴヒラ属は200種近くが知られていますが、彼らの進化史に関する情報は驚くほど少ないと話します。

アゴヒラ属の種がどのように多様化し、世界の流域に拡散していったのかがよく分かっていないのです。

さらにペイジ氏は、本当は別種であるはずなのに、見た目が似ていることから同じ名前で一括りにされている種も少なくないと考えています。

今後の研究で、レッドテール・ガラのような隠れた新種がさらに見つかるかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

New fish species discovered after years of popularity in the aquarium trade https://www.floridamuseum.ufl.edu/science/new-fish-species-discovered-after-years-of-popularity-in-the-aquarium-trade/ A Popular Fish Found in Aquariums Is Actually a Whole New Species https://www.sciencealert.com/a-popular-fish-found-in-aquariums-is-actually-a-whole-new-species Popular aquarium fish from Thailand and Myanmar is new-to-science species https://news.mongabay.com/2023/07/popular-aquarium-fish-from-thailand-and-myanmar-is-new-to-science-species/

元論文

Species of Garra (Cyprinidae: Labeoninae) in the Salween River basin with description of an enigmatic new species from the Ataran River drainage of Thailand and Myanmar https://www.biotaxa.org/Zootaxa/article/view/zootaxa.5311.3.3
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