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首長竜は「首の長さが弱点」になっていた!首を噛みちぎられた化石を発見


太古の昔、恐竜時代の海には極めて長い首をもった爬虫類が繁栄していました。

その長い首は獲物の狩りに便利だった反面、「長すぎて逆に弱点になっていたのでは?」との疑問が大きな争点となっています。

そして今回、独シュツットガルト州立自然史博物館(SMNS)らの研究により、この謎に終止符を打つ化石が発見されました。

絶滅した海洋爬虫類の「タニストロフェウス」の化石を分析した結果、明らかに何者かによって首が噛み折られている証拠が見つかったのです。

やはり首の長さがアダとなっていたのかもしれません。

研究の詳細は、2023年6月20日付で科学雑誌『Current Biology』に掲載されています。

目次

  • 「首が弱点だった説」は200年前から唱えられていた
  • 首を噛みちぎられて、胴体だけテイクアウトされていた?

「首が弱点だった説」は200年前から唱えられていた

タニストロフェウスは三畳紀(約2億5190万〜2億130万年前)の中期に出現し、1000万年ほど繁栄した海洋爬虫類です。

最初の化石は1855年にポーランドで発掘され、その後ヨーロッパを中心に多数の化石が見つかっています。

極端に長い首は胴体の3倍近くあり、10〜13個の椎骨からなっていました。

しかし柔軟性に乏しく、左右に振ることはできても、ヘビのようにクネクネした柔らかさはなかったようです。

陸にも上がれましたが、近年の研究では「首が長すぎて陸上生活には不向きであり、ほとんどの時間を水中で過ごした」と考えられています。

タニストロフェウスの復元イメージ
Credit: en.wikipedia

この首の長さは確かに獲物の狩りに役立った一方で、古生物学者らは200年も前から「弱点にもなっていただろう」と考えてきました。

例えば、イギリスの地質学者であるヘンリー・デ・ラ・ビーチによる1830年の有名な絵の中には、捕食者に首を噛まれる海洋爬虫類の姿が描かれています。

中央右に「首を噛まれる爬虫類」の姿(画ヘンリー・デ・ラ・ビーチ、1830年)
Credit: en.wikipedia

これほど前から「首が弱点だった説」は唱えられていましたが、今日に至るまで、この仮説を証明する化石は見つかっていませんでした。

しかし今回、研究主任のステファン・シュピークマン(Stephan Spiekman)氏は、スイス・チューリッヒ大学に保管されている標本から、ついにその化石証拠を発見したのです。

首を噛みちぎられて、胴体だけテイクアウトされていた?

シュピークマン氏が見つけたのは、約2億4200万年前に遡る2種のタニストロフェウスの首の化石です。

この2種は現在のスイスとイタリアの国境辺りに位置する浅い海に生息していました。

1つは体長1メートル半ほどの小型種で、エビなどの軟体動物を食べ、もう1つは体長6メートルに及ぶ大型種で、より大きな魚やイカを食べていたと見られます。

2種のタニストロフェウスの骨格復元図
Credit: Stephan Spiekman/SMNS(Twitter, 2023)

2種の標本はともに首が完全に切断された状態にありました。

そして詳しく分析した結果、1種は首の途中に噛み跡があり、もう1種では首の切断部に合致する形で噛み跡が見つかったのです。

このことから、タニストロフェウスは明らかに何者かによって長い首を狙われ、噛みちぎられていたことが分かりました。

下:実際の化石、上:点線枠を拡大したものとその復元イメージ
Credit: Stephan Spiekman/SMNS(Twitter, 2023)

さらに研究チームが注目したのは、首と骨の保存状態がきわめて良い点と、胴体の化石の痕跡が一切見つかっていない点です。

これはおそらく、捕食者が細長くて食べる部分のない首や頭は捨てて、肉付きのいい胴体部分を狙った可能性を示唆しています。

つまり、水中で噛みちぎられた首はそのまま海底に沈んで、傷つけられることなく化石化し、肉のたっぷりついた胴体だけが食べられたか、テイクアウトされたのでしょう。

捕食者にとってタニストロフェウスの首はワインのコルクのようなもので、それを取り除いた後は興味がなかったのかもしれません。

研究主任のシュピークマン氏(右)と同僚のエウダルド・ムジャル氏(左)
Credit: Institut Català de Paleontologia Miquel Crusafont(2023)

またタニストロフェウスの首を噛んだ犯人はまだ特定されていません。

特に小型種の方は犯人の候補がたくさんいて絞り切れませんが、大型種を捕食できるのは同チームのエウダルド・ムジャル氏いわく「非常に大きな海洋爬虫類のノトサウルスの線が濃厚だ」と述べています。

上の復元イメージも犯人をノトサウルスと仮定して描かれたものです。

今回の研究は「タニストロフェウスの首の長さが弱点だった」ことを証明しましたが、他方で、首の長い海洋爬虫類はその後も長きにわたって進化と繁栄を続けます。

となると、首の長さにもそれ相応の進化上のメリット(狩りに便利など)があったわけです。

首の長い海洋爬虫類たちは、そのメリットを享受する上で「首の長さが多少ウィークポイントになっても仕方ない」と考えていたのかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

These long-necked reptiles were decapitated by their predators, fossil evidence confirms https://phys.org/news/2023-06-long-necked-reptiles-decapitated-predators-fossil.html In the Age of Dinosaurs, long-necked marine reptiles were decapitated by their predators https://www.naturkundemuseum-bw.de/en/press/detailansicht/im-zeitalter-der-saurier-wurden-langhalsige-meeresreptilien-von-ihren-fressfeinden-enthauptet

元論文

Decapitation in the long-necked Triassic marine reptile Tanystropheus https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(23)00475-X#%20
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