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肌がツルツルで歳が不明なイルカを「見ただけで年齢測定する方法」を発見!


野生動物の保全において、個体の年齢を把握しておくことはとても重要です。

しかし人間と違い、動物は成熟後の見た目の変化が乏しく、正確な年齢を把握することは簡単なことではありません。

そんな中、近畿大学農学部を中心とした研究グループが野生のイルカに対する画期的な年齢測定法を発表しました。

この研究の詳細は2022年1月31日付けで「Marine Mammal Science」に掲載されています。

目次

  • 実はわかりづらいイルカの年齢
  • イルカに触れずに「斑点」で年齢を推定

実はわかりづらいイルカの年齢

イルカの年齢は見た目ではわからない
credit:フォトAC

毛の生えた動物ならば毛の艶などである程度の年齢が推測できますが、イルカの場合は艶々の表皮は年をとってもほとんど変わることがなく、見た目からだとおおまかな年齢を推測することすら困難です。

しかし野生のイルカの生態を解明し、保全活動を行う上では、イルカの群れの年齢分布や年齢による死亡率などの把握が欠かせません。

歯や耳垢からの年齢測定は生きている個体には困難

イルカの歯
credit:フォトAC

これまでのイルカの年齢を測定する方法としては、歯の断面にできる層を数える方法や、耳穴をふさいでいる耳垢の層を数える方法などがありました。

しかし、歯はもちろんのこと実は耳垢も生きている個体から採取するのは困難なものです。

イルカの耳にとって耳垢は耳栓のようなもの。

イルカは下あごの骨の振動が直接内耳に伝わって音を把握しているため、耳穴は耳垢でずっとふさがれている状態がデフォルトであり、耳垢を人間のように簡単に取り出すことはできないのです。

このため、この2つの方法は生きた個体には使えず、死んだ個体を回収することでしか年齢を知ることはできませんでした。

出生時から年齢を数えるしかない

イルカの親子
credit:フォトAC

生きた個体の年齢を把握するためには、新しく生まれた個体を識別し、そこから年齢をカウントしていく方法しかありません。

しかしこの方法では調査開始以降に生まれたイルカしか正確な年齢を判断できません

そこで開発されたのが、イルカの「外観」画像から年齢を測定する方法です。

イルカに触れずに「斑点」で年齢を推定

ミナミバンドウイルカの斑点
credit:フォトAC

前述の通り、イルカは人間とは違い肌に皺が現れるなどの変化がありません。

しかし、近畿大学農学部を中心とする研究チームは伊豆諸島の御蔵島のミナミハンドウイルカの観察を通じて、ミナミハンドウイルカの腹部に現れる斑点が成長とともに規則性を持って現れることを発見しました。

腹部の「斑点」という外観から年齢を判定できるようになれば、生きて泳ぎ回っているイルカでも一切触れずに年齢の把握が可能になります。

年齢とともに表れるミナミハンドウイルカの「斑点」

御蔵島の個体群
credit:フォトAC

同研究チームでは1994年から水中カメラを用いたミナミハンドウイルカの観察を行っており、蓄積された個体の実年齢と斑点パターンから斑点が成長に伴い増え続けていくことを発見しました。

斑点は生殖孔の周辺に6歳ごろから出現し、その後成長に伴い頭部及び体側に出現範囲が広がっていきます。

観察によって27歳までの間に斑点が増えていくことが確認されていますが、調査が始まる前からいる年齢不明の高齢個体についてはよりたくさんの斑点が見られたことから、生涯にわたり年齢を経るごとに斑点が増えていくことが示唆されました。

数量化理論で斑点と年齢の関係式を作成

年齢と斑点の関係式の一例
credit:NEWSCAST

同研究ではこの年齢に応じて増えていく斑点の出現度合いを3段階に分け、5つの部位ごとに評価しています。

さらに、この画像から得られる情報を「数量化理論」と言われる解析方法で統計解析し、年齢と斑点の関係式が完成しました。

ミナミハンドウイルカの年齢と斑点の関係式により、調査以前に生まれた個体の年齢把握も可能となり御蔵島周辺で観察されたイルカの年齢情報の85%以上が判明したと言います。

このようにある特定の地域に住むイルカの個体群について、85%以上の年齢を把握できるというのは非常にまれなことであるため、今後より一層ミナミハンドウイルカの生態解明が進むことが期待されています。

イルカに優しいだけでなく、効率も良い生態調査

悠々と泳ぐミナミハンドウイルカ
credit:フォトAC

今回発表されたイルカの年齢測定法はカメラの撮影のみで年齢が測定でき、イルカに触れずに行えるため、イルカにストレスをかけることなく調査を行うことができます。

またミナミハンドウイルカの斑点については年齢だけでなく形状によって雌雄を判断できるともされているため、今後は個体の年齢だけでなく性別把握も進んでいくでしょう。

水中カメラでの撮影で行える年齢判定はイルカに負担をかけないだけでなく、さまざまな場所で応用可能で効率の良い生態調査です。

今後世界中でこのような生態調査が進み、イルカの保全活動が進むことを期待します。

全ての画像を見る

参考文献

世界初!イルカに触れずに年齢を推定する方法を開発 野生ミナミハンドウイルカの生態解明と保全に繋がる研究成果 https://newscast.jp/news/6809391 野生ミナミハンドウイルカの斑点模様の年齢や雌雄による違いを発見 生体を傷つけない年齢推定法の開発につながる世界初の研究成果 https://newscast.jp/news/5374302

元論文

Noninvasive age estimation for wild Indo-Pacific bottlenose dolphin (Tursiops aduncus)using speckle appearance based on Quantification-theory model I analysis https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/mms.12845 イルカのハイパーセンサ(PDF) https://www.jstage.jst.go.jp/article/sobim/31/3/31_3_134/_pdf
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