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ドローンやボートの騒音を大幅に低減する「トロイダル・プロペラ」


ほとんど飛行機や船、またドローンが前進するための装備として「プロペラ」を採用しています。


しかしプロペラの駆動は騒音のもとであり、特にドローンにおいては街中を大量に飛び交うような状況に懸念が示されています。


そこでこの「プロペラの騒音問題」を解決するかもしれない、ユニークな形状の「トロイダル・プロペラ」に注目が集まっています。


ここでは、アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)リンカーン研究所が発表(PDF)したドローン用のトロイダル・プロペラと、アメリカ・ミシガン州を拠点とする船舶・航空工学会社「シャロウエンジニアリング(Sharrow Engineering)」が開発したボート用のトライダル・プロペラを紹介します。




目次



  • ドローンの騒音問題を解決する「トロイダル・プロペラ」
  • トロイダル・プロペラはボートの騒音も燃料消費量も大幅に低減させる

ドローンの騒音問題を解決する「トロイダル・プロペラ」



ヘリコプターのプロペラが回転すると、非常に大きく不快な音が周囲に鳴り響きます。


これはプロペラのブレード先端が引き起こした渦の中に、次のブレードが突入することで発生する音です。


近年開発が盛んなドローンでも、同様に騒音がネックになっています。



ドローンには撮影や配達などの役割が期待できますが、居住区では騒音問題に発展する恐れがあるのです。


こうした背景にあって、MITの研究チームは、ドローン用のトロイダル(環状体の意)・プロペラを開発しました。


トロイダル・プロペラを採用したドローン
Credit:MIT Lincoln Laboratory_Toroidal propellers: A noise-killing game changer in air and water(2023 New Atlas)

従来のプロペラではブレードの先端が1枚1枚離れているのに対し、トロイダル・プロペラではブレードがねじれながら繋がっています。


このループ状の閉じた構造が、ブレード先端で発生する渦を最小限に抑え、プロペラ全体の剛性も高めてくれます。


結果として、プロペラ特有の不快なノイズが大幅に低減されます。


従来のプロペラ(a)とトロイダル・プロペラ(b)が発生させるノイズ比較
Credit:MIT Lincoln Laboratory_Toroidal Propeller(2022)(PDF)

人間は100~5000kHz付近の音を敏感に感じ取る傾向がありますが、グラフが示すように、この範囲の音を低減してくれるのです。


Twitterに投稿された動画では、音の違い(1:12~)を確かめることができます。




しかもテストでは従来のプロペラと同程度の推力が得られており、飛行能力が低下しないことも実証しました。


現在はさらなる開発が進められています。


そしてトロイダル・プロペラを研究しているのは、MITだけではありません。


ボートに設置されるトロイダル・プロペラでは会話も難しくなるほどのボートの走行音が大きく低減されています。事項でそれを紹介します。


トロイダル・プロペラはボートの騒音も燃料消費量も大幅に低減させる


シャロウエンジニアリングが開発するボート用トロイダル・プロペラ
Credit:Sharrow Engineering

大きな音は、空を飛ぶときだけでなく、海上を前進するときにも発生します。


ボートや船にはスクリュープロペラが欠かせませんが、これが近くの人の声が聞こえなくなるほどの大きな音をまき散らすのです。


騒音のメカニズムは次の通りです。


まず、プロペラ先端で渦が発生。


この渦の内部が低圧になることで、気泡が生成(キャビテーションという)されます。


そして気泡が弾けるときに大きな衝撃が生まれ、これが振動や騒音、推進力の低下に繋がっているのです。


ボート用トロイダル・プロペラのブレード先端はねじれて他と繋がっている
Credit:Sharrow Engineering

シャロウエンジニアリング社は、こうした騒音問題に対処すべく、ボート用のトロイダル・プロペラを開発しました。


MITのドローン用トロイダル・プロペラとは形状がいくらか異なりますが、こちらのボート用トロイダル・プロペラでも、ブレードの先端が他のブレードとねじりながら繋がっています。


ドローン用よりも立体的なループ構造が採用されていますね。


従来のスクリュープロペラ(左)では渦が発生するが、開発されたトロイダル・プロペラ(右)では抑えられている
Credit:Sharrow Marine(YouTube)_University of Michigan TEST FOOTAGE SHARROW PROPELLER(2019)

そして上の動画で示されているように、この構造によってプロペラの渦が抑えられ、キャビテーションによる騒音もなくなります


下の動画でも、トロイダル・プロペラ(上)のブレード先端からはキャビテーションが発生していないのがよく分かります。


従来のスクリュープロペラ(下)では、ブレード先端に螺旋状のキャビテーションが見られる。トロイダル・プロペラ(上)では発生していない
Credit:Sharrow Marine(YouTube)_SHARROW PROPELLE vs Standard Stainless CAVITATION(2019)

結果として、ボートの騒音を大幅に低減させることに成功しました。


下記の動画で違いを確認してみてください。



また性能の面でも大きなメリットがあります。


従来のスクリュープロペラと比べて燃料消費量を約20%削減でき、3000RPM(1分間での回転数)では約2倍の効率を生み出すのです。


RPM(1分間での回転数)における効率の比較。(赤線)従来のスクリュープロペラ、(青線)トロイダル・プロペラ
Credit:Sharrow Engineering

シャロウエンジニアリング社が開発したトロイダル・プロペラは、現在販売中です。


従来のプロペラの常識を覆す「トロイダル・プロペラ」に、徐々に注目が集まっています。


今後、様々なマシンに採用されていくかもしれませんね。


全ての画像を見る

参考文献

toroidal propellers turn your drones and boats into noiseless machines
https://www.designboom.com/technology/toroidal-propellers-quiet-efficient-alternatives-aerial-marine-sectors-01-27-2023/
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