捨てられた犬達に手を差し伸べ続ける夫妻と1匹の犬の話
マリエサ・フゲスさんとクリス・フゲスさんご夫妻は、捨てられた犬たちを保護し愛情を注ぐことに並々ならぬ情熱を注いでいます。二人が手を差し伸べる犬たちの多くが、虐待されたり、年老いて捨てられたり、あるいは何らかの理由で置き去りにされた犬たちです。
これはフゲスさん一家と、1匹のシェルター犬のお話です。
7月1日
小さな老犬がニューヨーク市のとある動物シェルターから夫妻のもとにやってきました。
フゲスさん一家は全員そろってこの子を大歓迎しました。
この「一家」には、これまで夫妻が引き取り、家族として迎え入れてきた7匹の犬たちも含まれます!
7月2日
白いタオルにくるまれた大きな瞳のこの犬は、推定10歳。イギーと名付けられました。
クリスさんはこの写真をフェイスブックにあげ、次のようにコメントしました。
「捨てられていた犬を家族として迎え入れるのは、何回経験したって胸が締め付けられます。一体どうすれば、こんな残酷な仕打ちができるんだろうって…」
7月3日
その写真の翌日、イギーは救急病院へ運ばれます。
おなかが異様に膨れ上がり、腹水がたまっていることがわかったのです。
イギーはクッシング症候群を患い、そのせいで胃壁が分厚くなってしまっていることがわかりました。
その他にも、肥大した前立腺には腫瘍がみつかり、腎臓も感染症におかされていました。
多くの健康問題を抱えていたイギーでしたが、適切な治療を続ければ、少しずつ回復していけるだろうという診断でした。
マリエサさんとクリスさんは、イギーを一晩だけ病院に入院させて、自力で飲み食いができるようになったら家に連れて帰ることにしました。
7月4日
クッシング症候群の典型的な症状のひとつが、筋力の低下です。
イギーの足も、自分の体重を支えられないほど弱っていました。
しかし入院の翌日には、マリエサさんとクリスさんに見守られながら、自分の足で一歩踏み出すほどの生きる意欲を見せたのです。
この日退院することはかないませんでしたが、それでもフゲスさん夫妻にとっては、イギーの回復への希望が見える喜びに溢れた一日となりました。
7月5日
退院
無事自宅に戻ることができたイギー。7匹の兄弟たちと一緒に、さっそく記念撮影です!
家族に囲まれて、新しい日々が始まるかに見えました。
アイスクリームまでごちそうしてもらったイギー。
なんと専用車まで!
7月6日
クリスさんは、保護された直後のイギーの写真と、あたたかいベッドの上で愛する家族に囲まれて眠るイギーの写真を並べて、フェイスブックにアップしました。
同じ犬とは思えないほどの変わりようです。そしてこうコメントしました。
イギーと夫妻に希望が見えたと思ったら・・・
一週間後、イギーの体調は急変。
イギーの苦しむ様子を目の当たりにしたフゲス夫妻は、イギーを捨てた元飼い主に向かって次のようなメッセージを配信しました。
「私たちの愛するイギーを捨てたあなたへ
あなたはこの小さな愛らしい命を、どこまで苦しめ痛めつければ気が済むのですか。
私たちの愛するイギーは今、全身であなたの無責任さ、無慈悲さ、そして冷酷さを訴えています。
あなたは命を尊ぶということを知らないのですか。愛するということを知らないのですか。
そんなあなたに吐き気がします。」
「あなたはこの子の命を踏みにじり、放棄しました。いつかその罰が下るでしょう。
この子は自分の糞尿にまみれて助けを待ち続けていたんです。関節炎の足も、白内障で失われた視力も、腹水でパンパンになったおなかも、去勢手術をしなかったが故の苦しみも、全部全部あなたのせいなのです。
どうして私たちがこの子を失わなくてはいけないのですか?
どうしてこの子を愛する多くの人が、これほど悲しまなくてはいけないのですか?
あなたが過ちを犯したからです。」
この次の日、イギーは天国へ旅立ちました。
フゲスさん一家との11日間の幸せな記憶を胸に…マリエサさんが最後にあげたフェイスブックのコメント
「イギーが逝った時、自分がどれだけ無力か思い知らされました。
11日間という短い時間の間に、イギーの放棄され忘れ去られていた魂は、私の魂の一部になったのです。
イギーがしっぽを振ってくれるだけで、一口食べてくれるだけで、薬がのどに入っていくだけで、それだけで私はこのうえなく幸せだったのです。
イギーは私たち家族に足りなかったもの、そして私たちの心に欠けていたものを埋めてくれる存在でした。
彼が私たちを必要とした以上に、私たちが彼を必要としていたのです。」
「そんなイギーはもう二度と帰ってきません。
もっともっと長く生きられたはずなのに、もっともっと美味しいものをたくさん食べられたはずなのに、もっともっと多くの友達と出会えたはずなのに、もっともっと多くの夜をベッドで一緒に眠るはずだったのに。
家が少しくらい散らかっていても、洗濯物がたまっていても、そんなことは気にかけずにイギーとの時間を楽しみました。
イギーがただそこにいてくれるだけで、イギーをただ見つめているだけで、私の心は満たされました。
イギーを失った今、私はイギー以上のものを同時に失ってしまったような、そんな感覚にとらわれています。」
最後に
やり場のない怒り、抱えきれないほどの悲しみ、現実を受け入れられない気持ち…虐待され捨てられた動物を保護し、お世話をし、愛情を注いでいる人々が、その命を救いきれなかった時に味わう感情は想像を絶するものです。無責任な飼い主たちのせいで、心の底から動物を愛している人たちが、そういった絶望的な感情を味わわなくてはいけないのですね。
シェルター犬のほとんどがハッピーエンドではないということ、その悲しみの結末を見届けなくてはいけない人が大勢いるということを、もっともっと多くの人が知らなくてはいけません。不条理に奪われる命が、そしてそれによって悲嘆にくれる人々が少しでも減るように…
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