警察犬とは
Africa Studio/shutterstock.com
警察犬とは、警察などの法執行機関の捜査活動に参加する犬のことです。
犬は人間の4千倍~6千倍の鋭い嗅覚を持っているので、訓練された犬は足跡追跡や臭気選別などで能力を発揮し、人間をサポートしてくれます。迷子の捜査や麻薬捜査、災害時の救援活動などで、警察犬が働く姿を見たことがある人は多いでしょう。
日本の警察犬は、2種類います。警察が飼育管理している「直轄警察犬」と、民間施設や一般人が飼育管理している警察の試験に合格した「嘱託警察犬」です。
嘱託警察犬の場合、訓練も民間の訓練士が行います。嘱託警察犬は非常勤の警察犬で、要請を受けた時のみ訓練士とともに捜査に加わります。
一般の犬が直轄警察犬になることはできません。嘱託警察犬になるのも非常に狭き門で、審査基準を満たし、都道府県警察が毎年行っている、嘱託警察犬審査会という厳しい審査に合格した犬だけが認められます。
警察犬に向いている犬種
YUWADEE UNAPEE/shutterstock.com
日本警察犬協会が警察犬指定犬種としているのは、「ドイツシェパード」「ラブラドール・リトリバー」「ゴールデン・リトリバー」「ドーベルマン」「エアデール・テリア」「ボクサー」「コリー」の7種類です。
これらの犬はどれも体が大きく、優れた身体能力と知性を兼ね備えています。軍用犬として活躍したこともある犬種も多く、飼い主に忠実で忍耐力もあります。
直轄警察犬に指定されているのは上記の頼もしい7種ですが、嘱託警察犬は日本警察犬協会が指定している以外の犬種も認められています。
忠誠心の強い「ミニチュア・シュナイザー」、大胆で好奇心旺盛な「ロングコートチワワ」、頑固な日本古来の犬種「柴犬」、水猟犬として活躍していた「トイプードル」、ねばり強い「ミニチュア・ダックスフンド」といった犬種です。
これらの犬種は小さなボディを生かして、小型犬にしかできない場所の捜索や追跡を任されています。その中で特に有名なのが、日本で最初に小型の警察犬になった「トイ・プードル」です。
公益社団法人 日本警察犬協会警察犬として優秀なトイ・プードルたちの紹介
akihirohatako/shutterstock.com
トイ・プードルは、ぬいぐるみのような見た目からは想像できないほど優れた運動能力があります。水猟犬だっただけあって泳ぎは得意ですし、脚力もジャンプ力もかなり強いです。
性格的にも好奇心旺盛で人間が大好きなのでトレーニングしやすいですし、全犬種の中でもボーダーコリーの次に高い知能の持ち主でもあります。
小型犬ならではのメリットもあります。大型犬と比べてより地面に近い位置で臭いを嗅げるので、草むらなどの捜査が得意ですし、街中の捜査でも人を驚かせたり恐怖感を抱かせたりしません。さらに、トイ・プードルだと普通の散歩のように見え、捜査だと悟られないメリットもあるようです。
トイプードルはペットとしても常に1位~3位に選ばれる人気種で、ジャパンケネルクラブ(JKC)が発表している2019年度犬種別犬籍登録頭数によると72,941頭登録されており、日本で一番多い犬種となっています。
このように、飼育数が多く警察犬としてふさわしい資質が備わっている「トイ・プードル」は、なるべくして日本初の小型嘱託警察犬になったといえるでしょう。
では、実際に警察犬になったトイ・プードル3匹のストーリーを次にご紹介します。
アンズ
2015年10月の警察犬嘱託式に参列した、日本で最初の小型犬の警察犬がアンズです。
2013年生まれのアンズを最初の飼い主が虐待し捨てようとしたところを、茨城県東海村の警察犬指導士の鈴木博房(すずきひろふさ)さんが引き取りました。
その時鈴木さんの家には3頭のシェパードがおり、警察犬としての訓練を日々受けていました。いつしかアンズはシェパードの訓練を真似するようになり、それを見た鈴木さんが試しにアンズにも訓練の基本動作をやらせてみたら、見事にこなしてみせたのです。
そこで、本格的に訓練することを決意した鈴木さんと一緒に、アンズは次々と難易度の高い試験をパスし、日本初の小型嘱託警察犬と認定されます。認定されてからは、要請があればシェパードたちと共に出動し活躍しています。
アンズの詳しいストーリーを知りたい方は、鈴木さんが書いた「警察犬になったアンズ命を救われたトイプードルの物語」や、子供向けの「がんばれアンズ!けいさつけんになったトイプードル」が岩崎書店から出版されているのでお読みください。
エリー
アンズの子供であるエリーも、2018年に初めて嘱託警察犬の審査会に参加し、今では嘱託警察犬として立派に活動しています。トイ・プードルの親子が、2代に渡って警察犬になったのです!
マル
甘えん坊のマルは、しつけの一環で飼い主さんの前田さん夫婦が連れて行ったドックスクールで才能を見いだされた犬です。
教室で指導した警察犬指導員の高畑さんは、マルは他の犬より嗅覚が優れていることに気付き、警察犬としての才覚があるのではと考え、前田さん夫婦にそのことを伝えました。そして、2017年春から本格的に警察犬の訓練を始め、2018年11月に滋賀県大津市の嘱託警察犬の審査会に参加し、合格しました。
犬種の特徴を生かし、警察犬として働いてくれているトイ・プードル達の姿は、本当に頼もしく健気です。彼らに賛辞を送りましょう。