キャットリボン運動とは?
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2019年9月1日に、猫の乳がん予防啓発プロジェクト「キャットリボン運動」が始まりました。この活動は、一般社団法人日本獣医がん臨床研究グループを中心に、乳がんで苦しむ猫をゼロにすることを目的としています。
キャットリボン運動の設立背景
近年、日本は空前の猫ブームとなっています。それに伴い、猫を飼育する家庭が犬を上回っています。しかも、以前は家の外と中を自由に行き来することができた猫でしたが、最近は完全室内飼いをするなど飼育環境や方法が改善されているため、猫の平均寿命は年々伸びています。
そのため高齢猫も増えており、シニア期を迎えると人間同様、ガンにかかる猫も増えてきています。中でも猫の乳がんにかかる確率は高く、その8割以上は悪性腫瘍の乳がんであると言われています。
飼い主さんの中には猫の病気というと腎臓疾患を挙げる方が多いことでしょう。しかし米国の動物健康善団体Morris Animal Foundation(モーリス・アニマル・ファウンデーション)が実施した調査によると、病気で死んだ猫の死因の1位はガンで、死因原因の約3分の1を占めているという事実が発表されています。
このような現状から、乳がんで苦しむ猫を減らすことを目的としたキャットリボン運動プロジェクトが立ち上がりました。このプロジェクトを通して、人間の乳がんとは異なる猫の乳がんの正しい知識、乳がんの予防や早期発見、早期治療などをしっかり理解できるようサポートしています。
キャットリボン運動を運営している団体
キャットリボン運動を運営している団体は、一般社団法人日本獣医がん臨床研究グループ(JVCOG)です。代表理事である公益財団法人・日本小動物医療センター附属日本小動物がんセンター・センター長の小林哲也獣医師を中心に活動が行われています。
小林獣医師は日本小動物医療センター附属日本小動物がんセンター・センター長でありながら、米国獣医内科学専門医(腫瘍学)、アジア獣医内科科学専門医(小動物)、日本獣医生命化学大学非常勤講師、JFVSS(日本獣医学専門医奨学基金)代表理事としても活躍しています。
そして、ねこ医学会(JSFM)、一般社団法人・日本獣医がん学会、一般社団法人・日本獣医麻酔科学会がキャットリボン運動を後援しています。
キャットリボン運動の活動とは?
キャットリボン運動は、猫の乳がんの知識をひとりでも多くの方が知ることができるよう普及に力を入れています。
一般の飼い主さんには猫に乳がんがあること自体あまり知られていないのが現状ですが、猫の腫瘍の中で乳腺腫瘍が占める割合はとても高く、乳腺腫瘍の約8割は悪性の乳がんです。猫の乳がんは治療時の腫瘍の大きさや手術法によって、その後の生存期間が大きく変わってくることも研究結果から証明されています。
このようなまだあまり知られていない猫の乳がんの事実を多くの方に知ってもらうことが、キャットリボン運動の主な活動です。
2019年9月1日には、キャットリボン運動公式ホームページが公開されました。公式ホームページでは、猫の乳がんの基礎知識や早期発見方法などが紹介されています。
また、人間の乳がんのように乳がん啓発のピンクリボン運動同様、”キャットリボンピンバッチ”も用意されています。まずは公式ホームページをチェックしてみてくださいね。
猫の乳がんとは?
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猫の乳がんについてみていきましょう。上記でも触れましたが、病気で亡くなる猫の約3分の1はがんです。死亡原因のトップ1~10までは次のようになっています。
1位から順番に悪性腫瘍、泌尿器疾患、心臓病、糖尿病、FIP、FIV、FeLV、甲状腺機能亢進症、肝臓病、感染症となっています。
そして猫の悪性腫瘍で一番多いのは乳腺がん、続いてリンパ腫、肥満細胞腫、扁平上皮がん、繊維肉腫、アポクリン腺がん、悪性黒色腫となっています。
猫の乳腺のしこりは約80%の確率で悪性のがんと言われています。乳腺のしこりの原因の約80%が乳腺がんで、残りの20%には乳腺過形成・乳管の拡張、肥満細胞腫、脂肪種、乳腺繊維腫症、乳腺などが占めています。
猫の乳がんの特徴
では、猫の乳がんにはどのような特徴があるのでしょうか?乳がんはわたしたち人間や犬にも発症する病気のひとつですが、特徴は必ずしも同じというわけではありません。
猫の乳がんは10~12歳にかかるリスクがもっとも高まると言われています。つまり中~高齢になってから発生する可能性がある病気です。しかし稀に若い猫でも乳がんを発症することがあります。
また、乳がんの発症は99%がメス猫ですが、ごく稀に雄猫でも発症することがあるようです。つまりすべての猫が乳がんになる可能性があると言えるでしょう。
猫の乳がんのステージについて
猫の乳がんは、がんの進行によって4つのステージに分類されています。乳がんの大きさ、リンパ節転移の有無、多臓器転移の有無などでステージを判断していきます。人間のがんのように、早いステージであれば完治する可能性が高くなります。
・ステージ1
しこりの大きさは2㎝未満
リンパ節転移なし
多臓器転移なし
・ステージ2
しこりの大きさは2~3㎝
リンパ節転移なし
多臓器転移なし
・ステージ3
しこりの大きさは3㎝以上
リンパ節転移あり
多臓器転移なし
・ステージ4
しこりの大きさはすべてが該当
リンパ節転移あり
多臓器転移あり
乳がんとホルモンバランスの関係
猫の乳がんの発生はホルモンと関係があります。そのため、早い段階で不妊手術をすることが乳がんの発生するリスクを低めることにつながります。具体的には生後6ヶ月前に不妊手術を受けるなら、乳がんの発生を91%低下させることが可能です。
生後7~11ヶ月は86%の低下、生後13~24ヶ月は11%低下させることができますが、生後24ヶ月以降経過していると不妊手術を受けても効果はありません。
猫には全部で8個の乳腺があり、それぞれの乳腺にがんが発生する可能性があります。また、33~60%の確率で同時に複数の乳がんが発生することもあると言われています。