はじめに
愛犬にブラッシングをしているときや、撫でているときなど、ふと皮膚にシミのようなホクロを見つけたことはありませんか?
鼻にできたり、歯茎や口腔の粘膜、爪の周囲などにできやすい黒い点は、ただのホクロのこともあればガンである可能性もあります。
そのため、飼い主さんは犬の体にできたホクロの特徴をよく知り、適切な対処をする必要があります。この記事では犬のホクロについて解説していきます。
犬にもホクロはできるの?
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犬は体全体がほぼ被毛で覆われているので、皮膚の変化にはなかなか気づきにくいものです。そのため、たとえ小さな黒い点だとしても何か異変を発見すると気になるのではないでしょうか?
また、ホクロだと思っていたらガンだったという話もよく見聞きするので、不安を感じている飼い主さんもいることでしょう。
でも、そもそも犬にも人間のようにホクロができるのでしょうか?結論から述べるなら、犬にもホクロはできます。
ホクロは皮膚にできる黒色斑、黒褐色斑のことを指します。メラノサイトやメラニンと呼ばれる細胞が皮膚の一部に集まることでホクロになります。
犬も人間同様、基本的にはホクロができていても体に影響はありません。また犬の場合、歯茎や粘膜部分、また舌などに、色素沈着や舌斑と呼ばれる黒いシミがあることもあります。このような色素沈着や舌斑による黒い点、つまりホクロには特に問題はありません。
しかし、注意したいのはそれが本当にホクロかどうか?ということです。発見したホクロが膨らんでいたり、大きくなっているようなら、ただのホクロではない可能性があります。
黒い点がホクロではない場合はガンの疑いがあるかもしれません。犬のガンは死因の上位を占める病気のひとつで、珍しい病気ではありません。犬種によっては遺伝的に発症しやすいこともあるので注意が必要です。
犬の体にはホクロだけでなく、シミやイボもできることがあります。ただのシミやイボでない場合は、ガンや皮膚病などの病気を発症している可能性もあります。
犬に色素沈着(ホクロ)ができる仕組みとは?
皮膚の色は、メラニンによって形成されています。このメラニンがないと皮膚の色は青白く、皮膚から透けて見える血流でピンク色に近い肌色になります。
つまり、メラニンの量が少ないと皮膚の色は薄く、多いと濃い皮膚の色になります。
色素沈着が生じる原因とは?
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では、どうしてメラニンが変化して色素沈着が生じるのでしょうか?
それには次のような原因が関係しています。
原因①日光
犬は紫外線をたくさん浴びると、鼻が薄い小麦色やピンク色に変化することがあります。人間でたとえるなら、日焼けのようなものです。
人間のように夏の時期に色が変化しやすいですが、季節の経過とともに元の色に戻ります。しかし、年齢を重ねると進行するケースもあります。
原因②アルビノ(白皮症)
犬だけでなく、ほかの動物や魚にも先天性にメラニンが不足しているため、皮膚や被毛が白く、瞳も赤みがかったピンク色をしていることがあります。
このような先天性の症状をアルビノと言います。遺伝病とされていますが、特に障害はありません。
原因③薬
薬の副作用が原因となり、皮膚の色素沈着が生じることがあります。
薬の投与が完全に終われば、時間の経過とともに色素沈着も薄くなり、元の皮膚の状態へと戻るでしょう。
原因④全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデスとは、自分で作り出した抗体で、自分自身で攻撃してしまう自己免疫疾患です。
皮膚だけでなく、脳や関節、心臓、肺などの臓器に炎症があらわれます。
原因⑤ホルモン
メラニンは、ホルモンの量が変化することで増えて、色素沈着が生じることがあります。
具体的には妊娠や甲状腺の機能の低下などが挙げられます。
犬のホクロで注意したいこととは?
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では、犬の体にホクロを発見したら、どんなことに注意すべきでしょうか?
素人は判断することが難しい
上記でも触れましたが、犬の体にできる黒色のホクロのようなものは「メラノサイトーマ」と呼ばれており、そのほとんどが良性腫瘍と言われています。
メラノサイトーマの特徴には、「被毛の生える体の一部にできる」「皮膚との境目がはっきりしている」「急成長していない」「大きくなっていない」などが挙げられます。
一方、メラノサイトーマと似たもので「メラノーマ」と呼ばれるものがあります。これは悪性腫瘍である悪性黒色腫、つまりガンです。
ガンの特徴には、「輪舞がはっきりしていない」「形が整っていない」「色が均一でない」「大きい」「突起している」などが挙げられます。
メラノサイトーマもメラノーマもメラニン色素に由来しています。
しかし、良性と悪性という全く異なる性質を持っているため、素人にはどちらであるかを識別するのが難しいと言われています。つまり、素人は良性か悪性かを判断することができません。そのため、素人判断で放置してしまうと症状が進行し、命の危険性につながることもあります。
ですから、少しでも不安に感じるなら、早めに動物病院を受診し、獣医師さんに判断してもらうことが大切です。
口腔内や爪周辺のホクロには要注意
口腔内や爪周辺に出来るホクロは、悪性のメラノーマの可能性が高いことで知られています。特に口腔内の歯茎や粘膜部分、耳の内側、足の付け根、爪の周囲にできたホクロやシミには注意が必要です。
ホクロを見つけたのと同時に、「愛犬の口臭がきつくなった」「食欲が低下している」「よだれが以前よりも増えた」「歯茎が出血している」などの症状があらわれているなら、早急に動物病院で診察を受けましょう。
特に口腔内にできたガンは、リンパや肺、腎臓といった臓器への転移がとても早いので早期発見の適切な対処が必要です。
動物病院では、まず視診や触診で判断します。しかし、視診や触診で判断することが難しい場合は、良性か悪性かを確かめるためにその部分の細胞を病理検査します。口腔内の腫瘍の場合は、生検と呼ばれる検査が行われるでしょう。また、部位によっては全身麻酔をかけて切除をし、病理診断にかける場合もあります。
特に老犬の場合、全身麻酔は体に大きな負担を与えるため、治療方針をしっかり立てることが必要となってきます。そのほかにもレントゲン撮影やCT、MRTなどの撮影が必要となるケースもあります。
愛犬とのスキンシップが毎日必要な理由とは?
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飼い主さんが愛犬と毎日スキンシップのために時間をとることは、とても大切です。
愛犬を撫でたり、触ったり、遊んだりすることで絆が強まるだけでなく、愛犬にたっぷり愛情を注ぐことで愛犬の心を満たすことができます。
そのため、愛犬はストレスフリーの毎日を過ごすことができます。それに加えて、スキンシップには飼い主さんが愛犬の身体の異常に素早く気づくことができるというメリットもあります。
また愛犬に身体の隅々まで触らせることに慣れさせておくなら、病院で治療を受ける際、人に触られることに抵抗を感じません。特に口周りを人に触られることに慣れさせておくと、万が一病院にいくことになった際に治療しやすいでしょう。
ですから、愛犬とスキンシップを行う時は、優しく身体を触るのと同時に、異変がないかどうかをチェックするようにしましょう。
可能であれば、ブラッシングやマッサージなどを行いながら、愛犬がリラックスできるような状態で行うことができるかもしれません。そうすれば、愛犬もその時間が楽しみになるでしょう。
そして、スキンシップの際には、ガンができやすい部分と言われている口腔内の歯茎や粘膜部分、耳の内側、足の付け根、爪の周辺を念入りに確認するように心がけましょう。
被毛をかき分けて皮膚を確認したり、耳の中や舌の裏側まで細かな部分まで徹底的にチェックするようにしましょう。