はじめに
ペットは毎日の生活に癒しを与えるだけでなく、人生を楽しくしてくれる友達のような存在でもあります。ペットを飼うことで正しい生活習慣を送ることができるようになったり、運動をはじめるきっかけにもなります。また、落ち込んだ気持ちを和らげてくれる存在でもあります。
このようにペットと一緒に暮らすことにはたくさんの魅力がありますが、それと同時に健康上の危険をもたらすリスクもあります。それは「動物から人にうつる可能性のある病気がある」ということです。
どのようにして動物から人に病気がうつるのでしょうか?この記事では、身近なペットと日頃行っているキスで注意したいことについて解説していきたいと思います。
ペットが引き起こす感染症とは?
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近年行われている研究によると、ペットとのスキンシップは間接的な健康効果を得られることが分かっています。
例えばペットとのスキンシップは血圧やコレステロールを下げる効果があることや、精神的安定につながるなど医療的な価値があるとも言われています。
しかし、野生でも家畜でも人間に飼われているペットでも、すべての動物は人間にとって有害な細菌やウイルス、真菌、寄生虫などを持っており、人に感染させる危険性があるのでペットとのスキンシップには注意も必要です。
ペットから感染症がうつるのは、ペットの体液に触れることに加え、体を撫でたり触れたりすること、噛まれること、引っかかれること、キスされる(する)ことなどを通して感染します。
また、蚊やダニ、ノミなどを媒介して感染症がうつるケースもあります。ペットとのスキンシップを通して、動物との共通感染症にかかるリスクがあるのです。特にペットとの添い寝やキス、体を舐められることなどには注意が必要です。
抗生物質が効かない”耐性菌”が世界中で拡大!
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多くの飼い主さんは、ペットを家族の一員と考えています。
その考えは、米国で行われた調査からも伺えます。この調査では飼い主さんの90%以上は愛犬のことを家族の一員と考えており、そのうちの55%以上は愛犬と添い寝をしていることが分かりました。
また、ペットと一緒のベッドで寝ることやキスを習慣にしている飼い主さんが増えている事実も明らかになりました。しかし上記で述べたように、このようなペットとの過剰なスキンシップは、飼い主さんの健康に深刻な問題を与えることがあります。
人獣共通感染症を専門とするニュージーランド大学の教授らによると「抗生物質が効かない強力な耐性菌が世界で拡大しており、その一部はペットなどの動物を介して感染している可能性がある」と述べています。
これはつまり、動物病院で過剰に薬物を投与されたり、誤用された薬を投与されたペットとキスなどをすることで、細菌が抗生物質に耐性を持つように変化し、耐性菌が拡大してしまっていると言うことです。
実際、国内でもペットの猫から「コリネバクテリウム・ウルセランス菌」に感染したと思われる福岡県の60代の女性が亡くなっています。
死亡例ははじめてですが、室内飼いをする方は増える一方で、人間とペットとの距離は縮まっています。ですから、過剰なスキンシップには十分に気を付ける必要があります。
犬とキスすると狂犬病になるの?
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狂犬病は、狂犬病ウイルスによる感染症です。人間だけでなく全ての哺乳類に感染し、発症するとほぼ死亡すると言われている非常に恐ろしい病気のひとつです。
狂犬病の名前には”犬”と付いていますが、犬限定の病気ではありません。人を含めた多くの動物が感染するので注意が必要です。
人への感染源としては、犬が一般的に知られていますが、犬だけでなく他の動物にも感染します。噛まれたところから感染するので、キスなど唾液を介する行為で感染する可能性もあります。
狂犬病にかかった犬は理性を無くしてしまい、まさに狂ったように凶暴になります。その後、無気力な状態となり、昏睡状態になってしまいます。
狂犬病を発症していれば、どの症状の段階でも普通の状態ではないので、感染しているペットにキスをするような状況にはなりにくいと思われますが、感染する危険性があるので気を付ける必要があります。
日本では、すべての犬に対して年1度の狂犬病の接種が義務付けられているので、狂犬病の発生は1956年以降ありません。しかし、海外の事情をみてみると、日本やオーストラリアなどの一部の島国を除くと、ほとんどの国で発生しています。今後も日本で発生しないよう、犬を飼っている方は毎年、狂犬病の注射を忘れずに打つようにしましょう。
しかしペットからうつる感染症は、狂犬病だけではありません。ではどのような感染症があるのか見ていきましょう。