猫の歯が抜けてしまう理由とは
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飼っている猫の歯が突然抜けてしまってびっくりした経験ありませんか?「何か固いものを間違って食べてしまったのかな」「もしかして何か病気のサイン?」などと、不安に感じてしまうかもしれません。
実際に猫を飼っている方の中で、猫の歯に関するこんな質問や疑問、心配の声が寄せられています。
5ヶ月過ぎの子猫の歯が落ちていました。根元に少し血が付いていて、折れたというよりは抜けたのかな?という感じです。今、口の中がどうなっているのか見せてくれないので、何本抜けているのか、いつ抜けたのか分かりません。子猫の歯って抜けるんですか?生え変わるのでしょうか出典:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1149892946
6歳になるオスの飼い猫の歯が抜けました。毛づくろいをしている時に、ぽろっと取れたようです。形状からすると前臼歯かと思うのですが、口の中を嫌がって見せてくれません。特に歯が黄ばんでいるとか、歯ぐきが赤いといった様子は見られなかったのですが、歯肉炎か歯周病でしょうか?こうやって歯が抜けるのは稀にありますか?出典:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12113291357
16~17歳のシニア猫の歯が抜けてしまいました。下の前牙のような歯なのですが、今朝見たら片方取れていました。様子は普段と変わりなく、食欲も旺盛ですし、特に出血もしていません。現在は高齢猫用のパウチをあげているのですが、えさをペースト状に変えた方が良いのか、病院に連れて行くべきなのか、悩んでいます出典:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1150081566
3つの例を取り上げてみましたが、これらの猫ちゃんたちの歯が抜けてしまった理由は、実はそれぞれ異なります。猫の歯が抜ける理由は、猫の年齢や時期、あるいは病気によるものなのか自然現象によるものなのかによっても違ってくるのです。
では、猫の歯が抜けてしまう理由に関して「幼少期」「成猫期」「高齢期」の3つの時期に分けて、それぞれどんな理由や原因が考えられるか取り上げてみることにしましょう。
猫の歯が抜ける理由① 歯の生え変わりによるもの<幼少期>
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先ほど取り上げた3例のうち最初の例に出てきた5ヶ月の子猫ですが、この猫ちゃんの歯が抜けてしまったのは、子供の歯(乳歯)から大人の歯(永久歯)へと生え変わった成長の過程によるものと考えられます。
人間の場合も、子どもが6歳前後の時期になると乳歯から永久歯へと歯が生え変わり、それに伴って歯が抜けていきますね。実は猫にもこの生え変わりの時期があるんです。
「え?歯が生え変わっていたなんてぜんぜん気付かなかったけど…」「うちの猫は歯が抜けた様子なんて見られなかったんですが…」という飼い主さんは意外と多いのですが、これが普通なんです。猫の歯の生え変わりを発見できたらそれはラッキーだと思ってください。
人間の場合は、乳歯が抜けてから永久歯が出てくるまでに少し時間が空きますよね。しばらくは穴が開いた状態が続くので、この歯が生え変わっていると気付くことができます。
しかし猫の場合は、乳歯が生えているところに永久歯も生えてきているので、見た目には生え変わっていることに気付けない場合が多いのです。
しかもその生え変わる乳歯は、猫がそのまま飲み込んでしまう場合がほとんどなので、たまたま外に吐き出したものを飼い主が見つけられるということはごく稀なことと言えます。
「え?歯を飲み込んでしまって大丈夫なの?」と心配に感じるかもしれませんが、飲み込んだ乳歯はウンチになって外に排出されるので問題はありません。
もし子猫の歯がポロっと落ちているのを発見できたらとても珍しい経験なので、記念として取っておくのも良いかもしれませんね♪
歯の生え変わりの時期っていつ?
では、子猫の歯が生え変わる時期はいつ頃なのでしょうか。
猫も人間と同じように、産まれたばかりの頃は歯は生えていません。生後2週間頃から生え始まり、生後1ヶ月でほとんどの乳歯が生えそろうと言われています。
そして乳歯から永久歯に生え変わる時期は、生後3ヶ月頃から7ヶ月頃までの間と言われています。歯の生え変わりが始まると、だいたい1ヶ月ほどですべて生え変わります。
歯の生え変わりを見分けるサインってある?
生え変わるサインを見分けてできれば発見したい!と思われる方もいるかもしれません。歯の生え変わりの時期によく見られる猫の行動や症状からそれを特定できます。
まず生え変わりの時期になると、子猫がやたらとおもちゃや飼い主の手や指など、固いものに噛みつくことが増えるかもしれません。人間の赤ちゃんにもよく見られるサインですが、これは永久歯が生えてきていて、歯や歯ぐきがかゆいために起こす行動です。
「なんだか最近やたらと色んなものに噛みついている」といった場合、それはきっと生え変わりの時期が来ているサインだと言えるでしょう。
また子猫の中には、生え変わる時期に口臭がきつくなる猫ちゃんもいるようです。これは、乳歯と永久歯が同時に生えている状態で、歯と歯の間に食べかすが残ってしまっている、あるいは乳歯が抜けて歯ぐきから出血があることが理由と考えられます。
ほとんどの子猫の場合、出血しても5分ほどですぐに収まりますし、口臭も生え変わる間の一時的なサインの一つなので心配する必要はありません。
猫の歯が抜ける理由② 病気の可能性がある<成猫期>
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大人になってから突然歯が抜けることがあるとしたら、それは何らかの病気のサインだと疑いましょう。いちばん多い病気は、歯周病もしくは歯肉炎です。
猫の口の中は、もともとはアルカリ性になっているため、虫歯になりにくいと言われています。しかし歯をきちんとケアしないことで、虫歯の元となる菌がどんどん増殖していき、酸性化していってしまいます。そうなると、歯周病などの病気につながっていくのです。
猫はなかなか口の中を見せてくれませんが、実は猫も人間と同じように歯を磨き、定期的にケアすることが必要です。3歳以上の猫のうち、なんと8割は歯周病になっていると言われています。
もし2歳以上の猫で、特に原因もないのに歯が抜け落ちたなら、それは何らかの歯の病気の可能性があると思ってください。
では、歯が抜けてしまう要因となりやすい病気について2つ詳しく取り上げてみたいと思います。
病気その①歯周病にかかっている
猫の歯の病気でいちばん多いのは「歯周病」です。先ほども取り上げたように、成猫のおよそ8割は歯周病にかかっているとも言われているほどです。
歯周病はなぜ起こるのでしょうか。そのいちばんの原因は、歯や歯ぐきの間に溜まる歯垢による細菌の増殖によります。
歯と歯の間の歯周ポケットと言われる場所に歯垢がどんどん溜まっていくと、それが石灰化し歯石となります。それをそのままにしておくことで、最近が歯の周囲に増殖し、炎症を起こして歯周病になります。
歯周病になると歯ぐきが腫れたり、出血を起こすようになったり、最終的には歯がすべて抜け落ちてしまうという場合もあります。
つまり歯が抜けたということは、歯周病の中でも重度の可能性が高いということになります。その場合、獣医師に見せて適切な処置を施してもらうのが良いでしょう。
歯周病を防ぐための対策
歯周病を防ぐにはどうしたらよいでしょうか。いちばんはやはり「歯を定期的に磨いてケアすること」です。
最近はペットショップで猫用の歯ブラシも販売されていますし、人間の赤ちゃん用の歯ブラシを使用することもできます。猫が歯ブラシを嫌がらないようにするには、子猫のうちから歯ブラシに慣れさせることです。
どうしても歯ブラシを嫌がるようであれば、飼い主さんの指にガーゼを巻き付けて歯を拭いてあげるとか、口腔内をきれいに保つ用のサプリメントやおやつをあげることもできます。
ただし歯の表面を拭くだけでは、歯の間の汚れやごみをすべて取り除くことはなかなかできません。やはりいちばん良いのは歯ブラシを使うことです。
無理やり歯ブラシを使おうとすると、猫はそれ以降ぜったいに歯を磨かせようとはしなくなってしまいます。初めのうちは遊び感覚で猫に歯ブラシを噛ませるとかして、リラックスした状態で少しずつ慣れてもらうようにしましょう。
さらに、歯周病はドライフードを食べさせている猫よりも、ウェットフードを食べさせている猫のほうがかかりやすい病気のようです。
なぜなら、ウェットフードは柔らかいので歯に挟まりやすい、あるいは歯にくっついたまま口内に残りやすいからです。ウェットフードばかり食べさせている猫ちゃんの場合は、特に歯周病屁の注意やケアが必要と言えるでしょう。
病気その②破歯細胞性吸収病巣
あまり聞き慣れない病名かと思いますが、「破歯細胞性吸収病巣」とは猫に多く見られる歯の病気の一つで、歯根が溶けてしまう病気です。
猫の食べ方に変化が生じた、たとえばゆっくり食べるようになったとか片側だけで食べている場合、あるいは口を触られるのを嫌がるような場合、もしかしたら歯の吸収病巣が考えられるかもしれません。
この病気の原因ははっきりと特定されていないようですが、歯周病が関係しているとか噛み合わせが良くない、ビタミンDの過剰摂取によるものなど、さまざまな要因があるのではと考えられています。
吸収病巣になると、歯を溶かす「破歯細胞」が異常に活性化し、虫歯のように穴が開いていきます。一つの歯に吸収病巣が起こってそのまま放置しておくと他の歯にも吸収が起きていきます。
あまりにひどくなると、口の中が痛むことで食欲が無くなったり、口臭がきつくなったり、あるいは出血が見られたりするようになります。