新型コロナウイルス感染症の蔓延などを経て、観光地では、これまで以上にDXの機運が高まっているなか、観光産業や地域振興の世界に、デジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させ、新たな価値や需要を創出していくトレンドは、いまどこにどう吹いているか。
そんな観光DXのトレンドがわかるセミナーが、地域振興プロジェクト(HCJ2023/東京ビッグサイト 2月9・10日開催)で開かれた。
題して、「観光DXの推進による観光・地域経済活性化について」
セミナー「観光DXの推進による観光・地域経済活性化について」では、観光庁 観光資源課 新コンテンツ開発推進室 佐藤司 室長が登壇。
観光分野における各種課題の解決に資する DX について、事例を交えて紹介。政府における今後の観光 DX 戦略について佐藤司 室長が説明してくれた。
地域サイトや観光アプリの構築を優先的に支援
観光庁が事務局となり、観光業界のキーマンや有識者で委員を構成する「観光DX推進のあり方に関する検討会」が、中間取りまとめを公表。
この中間取りまとめについて、佐藤室長がポイントを説明。
旅行者の利便性向上・周遊促進において、オンライン予約・決済に未対応や、旅行者への情報発信不足といった課題には、予約・決済に対応した地域サイトの構築や、各地域のレコメンドを発信できる観光アプリ構築について優先的に支援することを示した。
また、観光地経営の高度化という目標に対しては、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)やDMP(Data Management Platform:データ一元管理)が進まず旅行者の特性や実態にあわせたプロジェクトが組めないといった課題を解決すべく、実証事業などでCRM・DMP活用を支援していくと伝えた。
PMSやOTAを巻き込みデータ仕様の統一化を
さらに観光庁 佐藤室長は、「売上やコストなどを管理できてない宿泊事業者が多く、経営資源を適切に配分できていない」「同一地域内で異なるPMS(Property Management System:宿泊管理システム)でデータ連携・共有できていない」といった現状課題も指摘。
こうした課題については、「主要なPMSベンダーやOTA(Online Travel Agent:ネット取引旅行会社)などを巻き込み、データ仕様の統一化を図る」「PMSなどのデジタルツールを地域単位で導入していく」といった対策を示した。
「観光DX化が実現したら内部留保せず、付加価値向上継続を」
観光庁は2022年度、10億円規模の「DXや事業者間連携などを通じた観光地や観光産業の付加価値向上支援」のなかで、とくに「旅行者の利便性向上、観光地経営の高度化」に継続して支援を集中させるという。
たとえば、イベントやスポーツなどの主催者などが、来場者の顧客・行動データなどを周辺自治体・DMOに共有することで、自治体・DMOはデータにもとづいたマーケティングが実現し、より旅行者のニーズに即した情報提供ができる。
また同様のデータを主催者と共有することで相互送客が実現し、旅行者数の増加、消費額向上も実現できると佐藤室長は説き、こう伝えた。
「今後もデータの利活用に着目した取り組みを重点化して支援していきたい。仮に観光DX化が実現し、収益的に余裕ができたら内部留保せず、付加価値向上を継続し、稼げる仕組みをさらにつくってほしい」(佐藤室長)
―――いま旅行業界や各自治体、地域団体に求められている観光DX。佐藤室長は最後に、観光DX推進最新事例を3つ、スライドで紹介していた。
ALLニセコ 多様なデータ集約による消費行動促進事業
ニセコエリアスマートリゾート推進コンソーシアム――― JTB北海道、ニセコリゾート観光協会、バカン、オープントーン、ニセコプロモーションボード、倶知安町、倶知安観光協会
“まち全体が一つの温泉旅館”のDX化実現事業
豊岡観光DX推進協議会――― 豊岡市、豊岡ツーリズム協議会、城崎温泉観光協会、城崎温泉旅館協同組合、豊岡観光イノベーション、芸術文化専門職大学、データストラテジー、TAP、ハイファイブ、Paak
一極集中下の来場客を活用した地域経済活性化事業
(仮)スポーツイベントツーリズムコンソーシアム――― 鹿嶋市、札幌観光協会、するが企画観光局、ぴあ、ナビタイムジャパン、JR東日本、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー、鹿島アントラーズFC、コンサドーレ、エスパルス、アビスパ福岡