キングダム面白いですよね。
蒼天航路以来の胸熱漫画です。
また、なぜかメッチャいいやつ嬴政、下僕上がりの李信、暗殺者&女性の羌瘣、王の座を狙う王翦、強すぎ龐煖、誰だよ媧燐など独特な解釈で描かれる個性的なキャラ設定も中国史ファンとしては行間を埋められた気持ちになり、キャラ出るたびにフォオオオオオオってなります(賛否両論あるでしょうが)。
その中でも最近特に異彩を放つ将軍「桓騎」。
個人的には、単行本38巻で樊於期が毐国の将軍として登場したあたりから「桓騎ってもしかしてラスボスになるんじゃないか」と思っていたので、その理由や、キングダムの今後の展開を簡単に説明していきます。
大前提 「秦は韓、趙、魏、楚、燕、斉の順に滅ぼしていく」
今後のキングダムの展開を史実に沿って順にまとめると
(1)「桓騎」が、趙の将軍「扈輒(作中未登場)」を倒す
(2)「桓騎」が、趙の将軍「李牧」に敗れる
(3)「騰」が、韓を攻め落とす(韓征服)
(4)「李斯」の政略により、趙の将軍「李牧」が趙王に処刑される
(5)「王翦」「楊端和」「羌瘣」が趙を攻め落とす(趙征服)
(6)燕の「太子丹(作中未登場)」が秦王嬴政の暗殺を企て、暗殺者として「荊軻(作中未登場)」を送り込むが、暗殺は失敗する
(7)「王翦」「信」「王賁」が燕を攻め落とすが、太子丹と燕王は遼東に逃げる
(8)「王賁」が魏を攻め滅ぼす(魏征服)
(9)「信」「蒙恬」が、楚の将軍「項燕(楚国最強の将軍。漫画では名だけ登場)」に敗れる
(10)「王翦」が、楚の将軍「項燕」を倒す
(11)「王翦」「蒙武」が新たに楚王になった「昌平君」を倒し、楚を攻め落とす(楚征服)
(12)「信」「王賁」「蒙恬」が、遼東に逃げていた「太子丹」と「燕王」を捕え、燕を攻め滅ぼす(燕征服)
(13)「信」「王賁」「蒙恬」が、斉を攻め滅ぼす(斉征服)
という順に物語は進み、最後の(13)で、秦は見事中華統一を果たします。
この史実を踏まえて、なぜ「桓騎」がラスボスになりえるのかを説明します。
秦王嬴政の暗殺未遂事件における「樊於期」と「桓騎」の関係性
「李牧」にやられてしまった「桓騎」のその後については下記の3つの説があります(ちなみに現在では説3が最も有力とされています)。
説その1 : 「李牧」にやられて戦死(戦国策より)
説その2 : 「李牧」にやられて燕に逃亡(史記より)
説その3 : 「李牧」にやられて燕に逃亡し、名を「樊於期」に変え、秦王嬴政を暗殺するために自身の命を捧げる(戦国史より)
なので、「李牧」に殺されるか、燕に逃げて野盗にでも戻るかして、「キングダム」からフェードアウトする可能性もありますが、作中で「秦国で最も危険な人物」と称される「桓騎」がそんなあっけない終わり方するとも考えづらいですよね。
となると実際に最も史実的に有力視されている説その3が浮上するわけですが、説その3で挙がっている「桓騎」と「樊於期」が同一人物とする説自体は既にないでしょう。
何故なら、「樊於期」は既に単行本38巻の毐国との戦いで毐国の将軍としてデカデカと登場しているためです。
史実では、「樊於期」は秦王嬴政が提唱した軍の少数精鋭化に反対したことで嬴政がブチ切れ、一族を皆殺しにされ、それを憎んだ「樊於期」は自分の命と引き換えにしてでも燕と組んで嬴政の暗殺を図ります。
ですが、作中ではそういった暴君っぷりが全くない嬴政ですから、「樊於期」が嬴政を殺したい憎悪の理由を「毐国の戦い敗戦の将として一族を皆殺しにされたため」に作り変えたんだと思います。
という具合に、既に「樊於期」が登場し、嬴政暗殺未遂事件の伏線を敷いてるわけですから、説その3はないでしょうが、仮にも「桓騎」が燕に逃亡してその後も登場するのであれば、
説その4 : 「李牧」にやられて燕に逃亡し、嬴政に恨みがある「樊於期」を利用して、嬴政の暗殺を企てる
といった流れになる可能性があるのではないかと考えています。
山場のない最後の戦い「燕」と「斉」に「桓騎」が花を添える
(9)〜(13)を見ればわかると思いますが、史実通りにいけば、この物語のクライマックス的な戦いは楚との大戦です。
最後の(13)の「斉」に関しては、元々秦の同盟国ということもあり、政治的に各地で強制的に和睦を進め、斉はあまり抵抗することなく秦に吸収されて終わります。
また(7)と(12)の「燕」に関しても史実では、有名な人物は暗殺を企てた「太子丹」だけで、このとき有名な将軍は皆無です。
なので、最後の燕と斉に本来そんなに戦における山場はないのですが、「キングダム」ではこの2国のうち少なくともいずれかに山場を持ってくるだろう伏線があります。
それは作中で若手筆頭として強調されている「信」「王賁」「蒙恬」の存在です。
史実では、この3名が秦の中華統一のラスト2国を締めくくる重要人物とされており、作中で彼らを一括りで強調して描くのもこのためだと思われます。
ここまでこの3名を強調しておいて、彼らが最も活躍するラスト2国「燕」「斉」に山場がないとは考え難い。
また上記でも説明したように「斉」は同盟国ということで穏便に終わるため、山場があるとすれば、やはり嬴政暗殺を企てた「燕」でしょう。
もしも「桓騎」が「燕」を背後にして嬴政の暗殺を企て、「燕」の大将軍として擁立されれば、
中華統一のラストを飾るクライマックスの戦は、
遼東における燕国将軍「桓騎」と秦国将軍「信」「王賁」「蒙恬」の戦いになるでしょう。
また「信」「王賁」「蒙恬」が燕を征伐する際、燕側の将軍が誰だったかはどこにも記録されていないため、ある程度自由に戦を描くことが可能だと思われます。
やはり、楚との大戦を終え、秦国の大将軍へと昇格した「信」「王賁」「蒙恬」がはじめて揃って将軍として活躍する「燕」「斉」で一切の波風が立たずに中華統一へと向かってしまうのは漫画的にもいい展開にはならないのではないかと考えています。
そうなると、山場を作れるとしたら遼東での「燕」の戦。
そこに「燕」、そして秦と深い関わりのある「桓騎」がラスボスとして登場するという展開には、ある程度可能性があるのではないか、というのが今回の仮説です。
まとめると
・「李牧」に敗れた「桓騎」は秦を捨てて燕に逃亡
・燕国につき、太子丹と共謀して秦王嬴政の暗殺未遂事件を起こす
・燕国の将軍として、遼東で「信」「王賁」「蒙恬」と戦う
といった流れです。
この説の見極めどころとしては、
「李牧」に敗れた「桓騎」の動向
嬴政暗殺未遂事件での「桓騎」の動向
の2点でしょう。
嬴政暗殺未遂事件に「桓騎」が関わり、その後起こる(7)の第一回燕征伐で「桓騎」が将軍として関われば、ほぼ決まりじゃないでしょうか。
現在黒洋の戦いで起こっている「信」と「桓騎」の軋轢っぷりも見ものです。