カブト求めて三店舗
「ちょっとあなた、聞いてよ！
ひろ君の初節句のために、
うちの両親がカブトを
買ってくれるって
言ってたじゃない？
それで、先に下見しようと思って
人形店に行ったのよ。
そうしたらね…
カブト、置いてないのよ！」
「そんなわけないだろ。
今の時期、カブトなんて沢山あるぞ」
「だってないんだもの！
ショッピングモールも行ったわ。
三店舗回って、ひとつもないのよ！」
「店員にきけばいいのに」
「きいたわよ。
店員はありますよって言うの。
でも、案内してくれたものは、
カブトじゃないの。
どこのお店もそうだったの」
「そんな馬鹿な」
「もう、みんな嘘つきなのよ。
あんなのカブトじゃないのに！」
「うーん…。
店員が嘘をつくとは思えないし…
お前、何か勘違いしてないか？
カブトが何なのか、知ってる？
昆虫じゃないぞ？」
「馬鹿にしないでよ！
カブトくらいわかるわよ！」
「じゃあ、今度一緒に見に行こう。
お前が行った店に」
「いいわよ。
きっとびっくりするんだから」
みんな仲良く浄水器
「この浄水器は高性能で、
他の製品とは格が違います。
浄水能力はもちろんですが、
カートリッジの交換も年に一度、
温水にも対応しています。
初期費用は高めですが、
長い目で見るとコスパも最高。
どうです？
お宅もこの浄水器を導入しては」
「そんなにいいの？」
「ええ、最高ですよ。
特に我が宇賀神工業社製のものは
素晴らしいです！」
「あなたの家では使っているの？」
「今度のボーナスで買おうかと」
「嘘つき」
「…は？」
「あなた、買うつもりないでしょ」
「な、なにを言うんですか！」
「早く出てきなさい！
このインチキセールスマン！」
「…ひどい目にあったなあ。
二度とこの人の家には来ないぞ…
なんて名前の人だろ？」
プレゼント
出社前の身支度は大切だ。
鏡の前で、
いつもの儀式をすませる。
女子社員が５人だけのうちの課で、
俺の誕生日に女子社員一同から
もらったプレゼントを使って。
なんど思い出してもうれしい。
誕生日に
女子社員一同からのプレゼント。
こんなことをしてもらってるの、
実は俺だけだ。
それとなく他の男性社員に
探りを入れたけど、
誰も誕生日にプレゼントを
もらってる人なんていなかった。
きっと誰かが俺のことを
好きって話してさ。
そしたら
「私も」「え、私もだけど！」
なんてことになって。
抜け駆けは禁止ってことで、
みんなからのプレゼントってことに
したんだろう。
モテるってのも考えモノだな。
みんなに公平に接しないと
喧嘩になったら大変だ。
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