新たな日産SUVの国内市場登場への期待を込めて、そしてエールを送る意味で、マニアックな四駆専門誌編集長が、今なお人気が高く、かつて愛車としていた「日産・初代サファリ愛」(?)を語ります。今回はいよいよ初代サファリに試乗します!!
運良くというか、仕組んだというべきか、この記事の執筆前に、幸いにも初代・日産サファリの長短の初期型2台を同時に試走できる環境にあった。長尺車は中古車オークションから仕入れてきた極上車で、整備前の試運転を兼ねての仮ナンバー運行だ。
短尺車は自前の車として1万5000kmを走り、DIY修理も含めた検証期間は十分だ。最終型のターボも手元にあり、パワーの違いも感じ取ることができた。
純正グリーンの「バンAD」は車台番号410の初期型。4ナンバーの小型車枠でもホイールベースは3mに近く、市街地では内輪差に意識が集中してしまう。同じ全長でホイールベースの短いランクル77系よりも、同じ回転半径で小柄なジープJ30系よりも、取り回しは悪く感じる。見た目にもうすら長い車だ。
もう1台は除雪車上がりのハードトップハイルーフAD。車台番号162のド初期だ。私の手元に来てからは、その色合いから「タンポポ号」などと呼んでかわいがっていた。なかなか乗りやすい車だ。
同時期のジープやランクルと同様、キー操作に連動したエンジン停止機構(モーター式)が備わる。水温に応じて予熱時間を調整するタイマーも加わり、キーONのポジションで予熱が始まって勝手に切れる。よってキーシリンダーに「GLOW」ポジションはない……なんて書くと全て当たり前のことのように思えるが、当時は画期的なことだったのだ。
タイマーの設定上、氷点下でも10秒程で予熱は切れる。それでは始動性がイマイチで直後の安定も悪く、標高950mの我が家ではグロー操作を2回行なっていた。最初のマイナーチェンジで、クイックグローとアフターグローを組み合わせて改善された。
SD33型エンジンは歴史ある古いブロックである。サファリ登場時点で日産の乗用車用ディーゼルはOHCのLD系に移行していたが、過酷な使用条件を考慮してロングストロークの旧式エンジンが採用されたのだろう。
パトロール族は低速モリモリのイメージが強いが、この排気量で6発となると1気筒あたり550ccしかない。粘るには粘り、異常振動も起こさずアイドリング以下の回転域でも持ちこたえるが、雑なクラッチ操作であっさりエンストしたり、同格で4気筒のランクルBJ系がポンと立ち上がる場面でもたつく。
それでも6気筒への執着は初代パトロールからの伝統であり魅力だ。僅か1800rpmで最大トルクを発生しながらも高回転まで伸び、新世代本格四駆の鼻先にマッチしていた。純RV四駆の乗用車系ディーゼルのように、ディーゼルらしさを無理に消し去ろうとしていないのも良い。荒っぽさとスムーズさが共存しているのだ。
長尺車のファイナルレシオは4.625で、短尺車の4.111よりだいぶ低く、4速ミッションでは高速走行が苦しい。滑らかさと静粛性によって、なんとか100km/h巡航をこなす印象だ。つい5速目が欲しくなるのはジープやランクルと変わりないのだが、実現には3年ほど待たねばならなかった。
ギヤ比の高い短尺車では問題なく、気付けば速度警告アラームまで鳴らしてくれる。似たようなホイールベースのジープJ20系や短いランクルより直進性も良い。
シフトフィーリングなんてものは性能に関係ないが、このF4W81A型トランスミッションは操作に渋さがなく、しかし適度な手応えを感じるダイレクトシフトで好ましい。「トーシローはお断りだぜ」と言わんばかりの1速がノンシンクロの手強いレバーが生えるパトロール60系とは大違いだ。
ADグレードはパワステが標準装備となる。速度を上げるにつれ、ランクル40~60系がアシスト力の大きさから接地感が乏しくなるのに対し、しっとりした適度な設定である。
160系の特徴として真っ先に語られるのがテーパーリーフスプリングだ。走破性や安定性は全体のバランスの中で評価されるべきものだが、この高級なバネの効果は強く感じる。
後年に積載量を減らした161より硬いとはいえ、十分に乗り心地が良く、カーブで踏ん張り、回頭性にも優れる。それも独立懸架車の乗用車的な踏ん張りではなく、いかにもリジッドアクスルらしい、地に足を着けた感じが頼もしい。
砂利道を飛ばすと「リーフとコイルの中間的な乗り味」との通説を再確認できる。この足を生かせる高剛性フレームも、パトロール60系からの伝統である。