スリーター(三輪スクーターのこと)と呼ばれる三輪のジャイロシリーズには原付一種(~49cc)の白ナンバーや、ミニカーの水色ナンバーなどがある。それぞれの違いや特徴は何? 神奈川県横浜市にある三輪バイクのエキスパート「HVファクトリー」に聞いてみました。


REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)


取材協力●HVファクトリー https://hvfactory.com/

スリーター・ジャイロシリーズの特権!原付一種の「白ナンバー」からミニカーの「水色ナンバー」に変更可能!

 排気量49ccのジャイロシリーズは原付一種に属し、ナンバーの色は白。しかしトレッド(左ホイール真中と右ホイール真中の距離)を500mm超に広げれば、合法的に水色ナンバーであるミニカーへの登録変更が可能です。




 HVファクトリーのお客さんは、交通違反に問われやすいノーマルの原付一種ではなく、自動車扱いとなるミニカーに登録する人がもっとも多いのが特徴です。




 ミニカーとは、「総排気量20cc超50cc以下のエンジン」「定格出力0.25kw超0.6kw以下電気モーター」を備え、トレッド(左ホイール真中と右ホイール真中の距離。輪距とも呼ばれる)が500mm超の三輪以上の車両のこと。ナンバープレートは水色。




 ジャイロシリーズの場合、ホイールスペーサーの装着、ハブの交換、ホイールやタイヤの変更等によってトレッドを500mm超に広げれば、簡単にミニカー登録が可能となります。




 なおミニカー登録すると、原付ではなく自動車としての取り締まり対象となるため、HVファクトリーではミニカーとして販売するジャイロシリーズには、年式を問わずオーバーフェンダーを装着している(※2021年4月1日以降の新規登録車は、オーバーフェンダーの取り付けが義務化された)。詳しくは下記のジャイロキャノピーをチェック!

ジャイロXの大まかな種類。

ジャイロキャノピーの大まかな種類。

ジャイロUP(アップ)の大まかな種類。

原付一種(白ナンバー)とミニカー(水色ナンバー)の長所・短所は?

 水冷4ストエンジンを搭載した現行モデルのジャイロXやジャイロキャノピーは、トレッドを原付一種枠ギリギリの495mmに設定。トレッドを500mm超にできる市販のワイドホイールを使えば、手軽にミニカー登録できるのが特徴です。




 ジャイロシリーズの場合、ノーマル(排気量49cc)である原付一種のメリットは、




・原付免許で手軽に乗れる


・駅前の駐輪場が利用できる(駐輪場により異なる)


・バスレーンの走行が可能




 一方、ジャイロシリーズのトレッド(左ホイール真中と右ホイール真中の距離)を500mm超に広げ、ミニカーに変更するメリットは、基本的に四輪の自動車扱いとなるため、




・原付一種の30km/h速度制限から60km/h速度制限に引き上げ


・二段階右折義務なし


・ヘルメットの着用義務なし


・アンダーパスの走行OK(高速道路や自動車専用道路の走行は不可)




 スリーターのジャイロシリーズをミニカー登録すれば、ヘルメットの着用は不要。特に雨を凌げるルーフ(屋根)&ワイパー付きの大型スクリーンを装備したジャイロキャノピーの場合、「ヘルメットが屋根部分に接触してしまう」「夏場の配達時は頭部が蒸れる・暑い」「配達ごとにヘルメットを脱ぐのが面倒」等の理由でヘルメットを着用しない人もいますが、HVファクトリーでは「安全確保のため、ヘルメットは着用すべき」としています。




 なお、ミニカーの乗車には普通自動車免許が必要。また、四輪と同じ自動車扱いとなるため、駅前にある原付用の駐輪場が利用不可(ほとんどの駐輪場の入り口などに表示。下記写真参照)。




 金額的には、原付一種のノーマル49ccの軽自動車税は年間2000円ですが、ミニカー登録車は年間3700円となり、年間1700円アップ(2021年現在)。




 ジャイロシリーズをミニカー登録した場合、原付一種の30km/h速度制限から、60km/h速度制限となります。ジャイロシリーズのエンジンは非常に頑丈。しかし基本的に、




・49ccの小排気量エンジンであること


・構造的に二輪スクーターより重量は重く、各部に負荷がかかりやすい




 という特徴があります。そのため、常にフルスロットルの全開走行を続けるなど、“荒っぽい乗り方”を長期間継続すると、当然ながらエンジンや足周りが傷みやすい(2万km程度で不具合が出る等々)。そのため、「元々は原付一種である」ことを前提に取り扱ってあげることも大切です。

HVファクトリーが手掛けたミニカー仕様のジャイロキャノピー。4スト専用ワイドホイール&タイヤセット、オーバーフェンダーなどでカスタマイズ。

4ストのジャイロキャノピーをベースに各部をカスタマイズ。
エンジンや足周りは完全オーバーホール済み。詳しくは下記をチェック。
☆ミニカー仕様のジャイロキャノピー 車両情報


年式:2008 エンジン:4ストインジェクション1型 走行距離:47704km(重整備済み) 販売価格:63万9000円




◎外装新品カスタムパーツ


・国産ウインドスクリーン ・ワイドバイザー ・レッグシールド ・フルサイズワゴン(ピラーレス仕様) ・4st専用ワイドホイール、タイヤセット ・オーバーフェンダータイプ6 ・ハンドルグリップ ・シート張替え ・オールペイント(VW:サムライグレーメタ/ブラック) ・エンジンキーセット新品 ・ワイパーブレード新品 ・ウインカースイッチ新品 ・バッテリー新品




■問い合わせ:HVファクトリー https://hvfactory.com/

ボアアップによるジャイロ系の「原付二種化」は、2スト車ベースが前提。そのワケは?

 ちょっとややこしい話ですが……排気量49ccのジャイロシリーズを50cc超~125cc以下にボアアップして、原付二種登録することも可能。ただしトレッドが460mmを超えるとトライク扱いとなるため、トレッドが495mmに設定された「現行の」ジャイロXやジャイロキャノピーは、原付二種登録が不可。ジャイロシリーズを原付二種登録するには、トレッドが360mmか430mmの2スト車のベースが前提となります(注1)。




 仮に2ストのジャイロシリーズを原付二種に登録変更した場合、




・30km/h速度制限から60km/h速度制限へ


・二段階右折義務なし


・アンダーパスの走行OK(高速道路や自動車専用道路の走行は不可)




 となりますが、あくまでもバイク扱いとなるため、ヘルメットの着用が必要。また、乗車には普通二輪・小型限定免許(AT限定でOK)以上が必要。加えて駅前にある原付用の駐輪場が利用不可な場合が多く(ほとんどの駐輪場の入り口などに明確に表示されている。下記写真を参照)、駐車はバイク専用駐車場などの利用が必要となります。

※注1:トライクの定義は排気量50cc超でトレッドが460mm超。現行のジャイロXやジャイロキャノピーは、トレッドが495mmのため、ボアアップすると、即トライク扱いとなる。そのため、ジャイロシリーズを原付二種にするためには、トレッドが360mmか430mmの2スト車をベースとすることが前提。トレッドのサイズは上記の表A「ホンダ・ジャイロシリーズの大まかな種類」を参照。
排気量49ccエンジンを搭載したノーマルのジャイロキャノピー(原付一種の白ナンバー)。
トレッド(左ホイール真中と右ホイール真中の距離)を500mm超に拡大したジャイロキャノピー(ミニカー登録の水色ナンバー)。
排気量をアップし、トレッドを460mm超に広げてトライク仕様にカスタマイズしたジャイロX(サイドカー扱いの白ナンバー)。
原付一種(排気量~49cc)専用の駐輪場に貼られた注意書き。ミニカーや原付二種の駐車はNGとなっている。
情報提供元: MotorFan
記事名:「 「ジャイロのナンバープレート、白色と水色の違いはナニ?」|三輪バイクにまつわる疑問点、一問一答