5ナンバーの小さなボディに収められた本格ハイブリッドシステムと燃費の良さが最大の魅力だ。
レポート=竹岡 圭[本文]/塚田勝弘[写真解説] フォト=中野幸次 モデル=住吉史衣
アクアが登場したのは、なんと!2011年のこと。その間、14年と17年にマイナーチェンジを受けているが、最近のモデルとしてはかなり息が長い感じがする。そしてスゴイのは、ずっと売れ続けていることだ。誕生当初は、プリウスよりもサイズが小さく使いやすい、だけれども内容は本格的なハイブリッドカーとして人気を博し、発売から9年経った今でも、販売状況は順調である。その人気の秘密は、なんと言っても燃費の良さだろう。グレードによって違うものの、「L」グレードではWLTCモードで29.8㎞/ℓという驚異の数値。JC08モード時代ならば、30㎞/ℓ後半の数値が表記されていたくらいの燃費である。
実はアクアのベースは二世代目のプリウスであり、カタログスペックではもちろん、実際に燃費計測してみても、ライバル達はどうやっても追いつけていないのが現状なのだ。そのプリウスは現在四代目となるが、ニーズに合わせて徐々にボディサイズが大きくなっていることもあり、横幅1700mm以下の5ナンバーサイズに入るお手頃なサイズ感、5mを切る小まわり性などを重視して選ぶとなると、アクアが残るという図式になってくる。もちろん、このSUV全盛時代の状況に合わせ、クロスオーバーモデルを設定してリフレッシュを図るなどが、人気モデルの座を維持している理由なのだろう。
クルマに詳しい方の中には「二代目プリウスがベース?!」と思われる方もいらっしゃると思う。システム的に古いのでは……?という疑問が湧いてきて当然だ。しかし、人気者のアクアがそこで黙っているわけはなく、きちんとブラッシュアップが施されている。なので、二代目プリウスではまだまだ気になった、ハイブリッド車特有のブレーキフィーリングなどもしっかりと改善されていて、最新型は違和感がほとんどない。完全停止する直前だけ、スッとブレーキペダルを踏む力を抜けば、カックンブレーキにもならずにコントロールできるのだ。そういった進化をきちんとしているからこそ、人気が続いているのだろう。
もちろん、ほかにも積極的に指名買いしたくなる魅力はたくさんある。例えば、お買い物ウォレットなど、ガソリンスタンドのレシートを見て数字を打ち込むと簡単家計簿のように把握ができたり、スーツケースもポンと入る大きめのラゲッジを持っていたり、スーパーUVカット&IRカットガラス、シートヒーター、ナノイー、最新安全装備など、特に女性にうれしい装備がたくさん用意されているのだ。そういった毎日乗るからこその使いやすさに特化しているので、突出したアピールポイントは逆に探すのが難しいが、だからこそ長く乗り続けても飽きない魅力があるといって良いモデルである。
ボディカラー:ベージュ(販売終了カラー)
オプション装備:T-Connectナビ9インチモデル(31万1300円)/ナビレディパッケージ(2万8600円)/LEDヘッドランプパッケージ(11万円)/スマートエントリーパッケージ(4万4000円)/他
前席はAピラーが寝ているため、頭上に気を遣う必要があるが、開口部は大きい。リヤは開口部足元がやや狭めで床も座面も低いが、子どもなら逆に楽に感じるかもしれない。2020年8月の一部改良で新色の「セメントグレーメタリック」、「ダークブラウンマイカメタリック」など計9色を設定した。写真の「クロスオーバー」は、販売を終了している。
センターメーターとナビやエアコンパネルが配されるセンタークラスターなど、パネルと操作系を中央に配置した機能的なレイアウト。カーナビはオプションで、花粉除去機能付オートエアコンを全車に標準装備する。
後席は、足元、頭上空間ともに広くはないが、前席下に足が入るため身長171㎝の筆者なら実用に足る。シートは固定式だが座面の中央部分が凹んでいて、座り心地への配慮も感じられる。
前席のシートサイズは大きめ。ホールド性もまずまずで座り心地は良好だ。2019年7月の一部改良で「G」のシート表皮がダークブラウン基調になるなど、質感向上も図られている。
4mをわずかに超える全長でハイブリッドにも関わらず、約300ℓの荷室容量を確保するほどの奥行きがある(グレードにより異なる)。最廉価の「L 」の後席は一体可倒式なので、3名乗車で多めの荷物を積むなら「S」以上が選択肢になる。
竹岡圭はこう買う!
長く販売されているからこそ、中古車を購入する場合は、どの時期のアクアを購入するかによって装備内容等は異なってくる。しかしここがトヨタの強いところで、2015年11月~18年4月に販売されたアクアのプリクラッシュセーフティ機能に、昼間の歩行者検知機能を追加する、ソフトウェアのアップグレードを行なっている。購入時は確認してみよう。
※本稿は2020年10月発売の「モーターファン別冊統括シリーズVol.128 2020年コンパクトカーのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。