TEXT &PHOTO◎伊倉道男(IKURA Michio)
吾輩はスズキ・ジムニーである。1986年の生まれで、型式はM-JA71Cだ。金属のルーフもエアコンもない、切替え式のパートタイムの四輪駆動車である。錆も進み、あちこちが凹んでいるので、ゆっくりと余生を送ろうとしていたが、週に1回、アウトドアフィールドに出掛けることとなる。
デジタルカメラの急速な進歩で、あっという間に静止画は何千万画素、動画も4K、8Kと進歩していく。そのなかでお安いカメラ、例えば子供用のトイカメラも2千万画素なんて当たり前。そんな時代になってきた。だが、アナログなレンズの部分、色彩やシャープなどの処理能力は、さすがに高級カメラには敵わない。しかし、トイカメラには画質にこだわらない面白さが存在する。そのひとつが今回使ってみたトレイルカメラだ。
トレイルカメラは、被写体の動きに反応し、無人で撮影ができるカメラだ。赤外線センサーを搭載しており、熱を発する動物等の動きに反応して、写真や動画が撮れる。もちろん、植物にも熱があるので風に揺れると反応する。夜間はカメラ自ら、赤外線を発して撮影をする。赤外線なので野生動物に気付かれることは少ない。この場合、写真はモノクロームになる。だが、ストロボなどの可視光線を使うと、野生動物を驚かせてしまうので、吾輩はこれで良いと思っている。
トレイルカメラは値段もそれほど高額ではない。例えばご自宅の庭に設置、どんな猫達がやってくるのか、撮影してみるのも楽しい。また、マンションのベランダに、どんな野鳥が羽を休めに来ているのかなど、知ることも出来るだろう。
トレイルカメラにはWi-Fiを搭載しているモデルもある。トレイルカメラを道ばたに設置して、車内からスマホを操作、愛車の走りを撮影することもできたりする。
レンズは広角で35mmカメラフルサイズ換算で約30mmの焦点距離に相当すると思う。最短撮影距離は40cmくらいだろうか、そこから被写体がカメラに近づくとピンぼけとなる。また、夜間に発光する赤外線はレンズの画角すべてをカバーすることはできず、中央部に集中してしまうが、このあたりを理解して使えば自然界の動物を被写体とし、生態も撮影できる確率が高いので、遊びで使うには面白いカメラである。
アウトドアフィールドでは木の幹に付属のバンドで固定する。カメラ用の三脚を利用するのも良い方法と思う。
ただ、設置場所はどこでもよいというわけではない。まずは動物の痕跡を探そう。足跡、獣道などだ。もちろん「最近この辺りに狸がでるよ」「昨日、イタチを見たよ」など、人からの情報も忘れてはならない。
まずは木の幹に設置してみた。場所は明かせないが、大好きなアウトドアフィールドである。なんと!恐竜が写った。まぁテントポールに恐竜を刺し、カメラの前に出してみたのではあるが、パロディとして、写真を加工して仲間で笑うも良いだろう。
おっと、また恐竜だ。「小さいが肉食かもしれない。注意せねば」これは最短撮影距離を確認するためのテスト画像である。やはりカメラレンズと被写体を約40cm以上離さないとピントは得られないようだ。近過ぎた。
さて、トレイルカメラを手に入れて、まだ日が浅いので紛失、盗難は避けたい。そこで今度は自宅の庭にセットした。実は有力な情報を得ていたのである。最初に写った昼間のカラー画像は猫。これは実家の猫で名前は「セイ」という。
その後、ついに3日ほどで、夜間撮影で野生動物を捉えることができた! カメラの位置が悪く顔がわからなかったので、種類を確実には判別できない。そこでトレイルカメラの設置場所を移動する。すると今度は「耳の黒い淵どり」、「足の黒が背中まで廻っている」特徴が写し出された。「狸」である。
さぁ、トレイルカメラを手に入れた本来の目的はムササビの撮影である。以前、山道で正面から「板」のような物が滑空して来たことがあった。音もなくグライダーのようでしばし見とれてしまった。設営場所はほぼ決まっている。撮影に成功したら、また皆様に見て頂けたらと思っている。
ー吾輩はスズキ・ジムニーである。型式はM-JA71C。名前はまだない。ー