TEXT●工藤貴宏(KUDO Takahiro)
日本を代表するホットハッチといえば「スイスポ」ことスズキ・スイフトスポーツ。コスパというテーマならこのクルマを外すわけにはいかない。
車体のベースこそ普通のハッチバックのスイフトだけど、1.4Lターボ(このエンジンはエスクードにも積むけれどスイスポ用はハイオク仕様にチューニング済み)エンジンをはじめ、MTは6速化とパワートレインはベース車とまったく別物。サスペンションはバネやダンパーとスタビだけじゃなく一部のアーム類も専用設計。そのうえ見た目はバンパーやグリルだけじゃなく、フェンダーだってワイドにした専用デザイン。とにかく手が込んでいる。コストがかかっている。国産のホットハッチでここまで手が込んでいるライバルはちょっと見かけないといっていい。
にもかかわらず価格は、187万4400円から(先進安全装備を外した受注生産車のMT)。このプライスタグは間違って付けっちゃたとしか思えないんだけど...。
ランキング圏外ではあるけれど、日産マーチのスポーツグレード「NISMO S」の187万6600円という価格設定も中身を考えると激安だ。
スポーツモデルといえば、ホンダS660も激安としか言いようがない。エンジンこそNシリーズ用を流用しているものの、専用プラットフォームなうえに少量生産だから開発もコストもとにかくお金がかかっている。生産終了までの生産台数は4万台ほどと予測されるが、開発費を生産台数で割ると1台当たりの負担は普通のクルマとは比較にならない額になるだろう。とにかく贅沢だ。
そんなS660の車両価格は、203万1700円から。軽自動車としては高いけれど、軽自動車だなんて思わず専用設計の車体を持つ本格スポーツカーがこの値段と考えたら...夢を見ているとしか思えない。
ときどき「普通のクルマ用に作ったエンジンを積むスポーツカーなんてありえない」という人がいる。そんな人には「ロータス『エリーゼ』とか『エヴォーラ』、そしてケータハム『Seven 160』といったスポーツカーを知っているのか?」と小一時間問い詰めたいところだ。
単純に「安い」とはいえないけれど、内容を考えると「激安じゃん!」と思わずにいられないのが、トヨタMIRAI。新型は車体の基本骨格がレクサスLSと同じ、インテリアの作り込みや装備もレクサスLS並み、そのうえたっぷりコストのかかった燃料電池を搭載。そんなクルマが定価で700万円ちょっとから(レクサスLSは1073万円から)、補助金を計算に入れると500万円台から買えるのは激安としか言いようがない。
この実質価格は、クラウンのV6ハイブリッド(710万7000円~)より安いだけでなく、4気筒ハイブリッドの最上位グレード(597万9000円)よりも安いほど。新型MIRAIは車格的には“クラウン以上”なんだから、これを激安といわずして何を激安と言ったらいいか...。
まあ、家の近くに水素充填施設がないと買うのは勇気がいるんだけど。
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