三菱パワーは、英国の東海岸にあるハンバー川(River Humber)流域の三角州地帯において進められている、同国内最大規模を誇る産業クラスター(Humber Cluster)の脱炭素化事業計画に参画する。

 本事業計画は、ノルウェーに本拠を置く大手エネルギー企業エクイノール社(Equinor ASA)などグローバルに事業を展開する脱炭素化関連産業の12企業・機関が「ゼロ・カーボン・ハンバー・パートナーシップ(Zero Carbon Humber Partnership:ZCH)」のもと連携して、天然ガスから製造した水素(H2)の活用や二酸化炭素(CO2)の回収・除去技術を駆使することにより、2040年までに同産業クラスターにおけるCO2排出実質ゼロ達成を目指すもの。このなかで三菱パワーは、域内電源である天然ガス焚きの120万kW級ガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電所で稼働している同社製ガスタービン3基の燃料を水素に転換する技術検討とフィージビリティ・スタディー(実効性調査、 FS)を手掛けていく。




 この産業クラスターは、ハンバー川を中心に、北岸にある北部(Northern)、南岸にある南部(Southern)、ならびに川上部にある西部(Western)で構成されており、エクイノール社がすべてに水素の供給で参加する一方、それぞれについて参加企業・機関による取り組み体制が敷かれている。このうち三菱パワーは、北部の産業クラスター、ソルトエンド(Saltend Chemicals Park)にある天然ガス焚きGTCC発電設備のM701F形ガスタービンの水素転換について、同発電所のオーナー企業であるトライトン電力社(Triton Power)と連携して、技術検討・FSを進めていく。三菱パワーは体積比で30%の水素混焼で始め、将来的には水素専焼を視野に入れる。




 一連のZCH計画において劈頭を飾るアンカープロジェクトとなるのが、北欧最大のエネルギー企業であるエクイノール社が提案する「Hydrogen to Humber Saltend(H2H Saltend)」。H2H Saltendでは、世界最大規模のCO2回収を伴う水素製造設備で天然ガス由来の水素(いわゆるブルー水素)を生成。第一段階として近隣の工場群が燃料を水素に切り替え、天然ガス焚きGTCC発電所(Saltend Power Station)を水素焚き(30vol%水素混焼)に転換することで、全体で年間約90万tのCO2排出削減が可能となる見通し。




 英国のロンドンに拠点を構える三菱パワーの欧州法人、三菱パワーヨーロッパ(Mitsubishi Power Europe, Ltd.)CEOのCarlos Gonzalez Peton氏(カルロス・ゴンザレス・ぺトン)は、同社側の窓口として次のように語っている。




「我々は、発電における水素利用への移行を可能にするためにパートナーと協力できることを非常に喜ばしく思います。GTCC発電所を水素で稼働させることは電力部門の脱炭素化につながり、英国が信頼性の高いフレキシブルな電力を安定供給することを維持し、温室効果ガス排出実質ゼロの目標達成に向けて貢献するものです」




 ZCH計画では2020年10月、エネルギー・重工業・エンジニアリングなどに関わる12企業・機関が英国政府による助成事業に応募。このほど技術検討に対する補助金が採択され、大掛かりな脱炭素化産業クラスター創設に向けた動きが本格化したもの。今後は2023年内の最終投資決定に向け、 参加企業・機関ごとに詳細技術検討が進行。H2H Saltendプロジェクトについては、2026年以降の稼働を見込んでいる。

ハンバー・クラスター地図(写真提供:ZCH)

情報提供元: MotorFan
記事名:「 三菱重工業:英国で天然ガス焚き120万kW級GTCC発電所の水素燃料転換計画に参画