REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●KN-YOKOHAMA (045-593-9402)
ヤマハ・CYGNUS GRYPHUS
シグナスXは前後に12インチホイールを採用。スポーティーなスタイリングを追求した本格派の標準的な原二スクーターである。
初代デビューは2002年。その後3~4年毎のモデルチェンジを重ね、現在国内販売されているのは2018年登場の第5世代モデル。今回試乗したシグナスグリフィスは、その後を継ぐ第6世代目モデルで、空冷から水冷へと進化したエンジンが最大のトピックとなる。
現行シグナスXと比較すると、車体サイズはひと回りボリューム感が増している。全長は45mm、ホイールベースは35mm、全高も40mm拡大されているが、車幅は従来通りの690mmがキープされている。
前後のタイヤサイズも共に70偏平の12インチを採用。この点に変わりは無いが、ワンサイズ太くなって前120後130サイズを履いている。スチール製アンダーボーンフレームも新設計。そして搭載されたエンジンは、次世代Blue Coreと呼ばれる最新の水冷SOHC4バルブ単気筒である。
実はこのエンジン、既に2018年登場の新型トリシティーに搭載。昨年4月発売のNMAXにも活用された事で知られている。
既に聞き慣れたBLUE COREとは、動力性能と環境性能を併せ持つ燃費の良いハイテク・エンジンを総称する呼称で、簡単に説明すると燃焼効率と各部フリクションロスの低減が徹底追求されている。
現行シグナスXとの比較で明確に異なっているのは冷却方法の水冷化、ボアストロークの一新(ボアは52.4→52mmへ縮小、ストロークは57.9→58.7mmへ延長)。そしてVVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーション)機構を搭載。
またオフセットシリンダーやSMG(スマート・モーター・ジェネレーター)を活用するSGCU(スターター・ジェネレーター・コントロール・ユニット)を採用。要は従来のセルモーターは廃止され、発電機に電流を流すことでクランクを直接回転させてエンジン始動する方式が新採用された。
注目のVVAとは、2015年に投入されたNMAXから始まっているバルブタイミング可変機構の事。吸気側のバルブ開閉タイミングを自動可変する仕組みが採用されているのである。
ごく簡単に触れておくとバルブタイミングとは、バルブを開閉する時期の事でバルブを押し開くカムのプロフィール(形状)がそれを決めている。
このエンジンはSOHCなので通常は吸気側と排気側用のカムがそれぞれひとつずつある。4バルブなので、ふたつずつ4個ある場合もゼロではないが、バルブが4本でもカムは2個であり、ロッカーアームを介してひとつのカムがそれぞれふたつのバルブを駆動するのが一般的。
今回のVVAエンジンはカムシャフトに排気バルブ用がひとつ、吸気バルブ用にふたつ、つまり全部で3個のカムを持っているのが特徴。
カムシャフトは左サイドカムチェーンで駆動され、カムは左側から順に排気バルブ用、吸気バルブの高速用、同じく中低速用の3個が並んでいる。
中央と右の吸気用カムに注目するとそれぞれにローラーロッカーがあてがわれているが、メインは右端のカムで2本のバルブを駆動。通常中央のロッカーアームは遊んでいる。
しかし右外に搭載された電磁式ソレノイドの働きで横方向にピンが押し出されると、遊んでいた中央のロッカーアームが右側のロッカーアーム(吸気用のメイン)と締結されて、中央カムのプロフィールで駆動されるようになるのである。
このVVAの働きで、エンジン回転の広範囲で理想的な高出力高トルクの発揮が達成されたと言うのである。
今回の試乗車はホワイト/ダークグレーのUBS (ユニファイド・ブレーキ・システム)前後連動ブレーキ仕様。カラーバリエーションはマットダークグレーとの2タイプのみだが、ABS (アンチロック・ブレーキ・システム)仕様は5色のカラーバリエーションが揃えられている。(あくまで台湾本国での話)
ちなみに台湾での価格は88,300台湾元、ABS 仕様は98,000台湾元。現時点でレート換算すると約346,000 円と384,000 円になる。現行のシグナスXは335,000円。国内での新ネーミングがどうなるかは不明ながら、このシグナスグリフィスが国内投入される時は、それなりの値上がりを覚悟する必要が有りそうだ。
Blue Core VVTダイナミックなスロットルレスポンスにびっくり!
足つき性チェック(身長168cm)
ディテール解説
⬛️主要諸元⬛️
全長/全幅/全高:1,935mm/690mm/1,160mm
シート高:785mm
軸間距離:1,340mm
最低地上高:125mm
車両重量:123kg(ABS仕様は124kg)
燃料消費率:48.9km/L(定地燃費)
原動機種類:水冷・4ストローク・SOHC・4バルブ
気筒数配列:単気筒
総排気量:125㎤
内径×行程:52.0mm×58.7mm※
圧縮比:11.2:1
最高出力:9.0kW(12PS)/8,000rpm
最大トルク:11.2N・m(1.14kg・m)/6,000rpm
始動方式:セルフ式
潤滑方式:ウェットサンプ
エンジンオイル容量:0.90L
燃料タンク容量:6.1L
年間燃料使用量:92L(年間走行4,500km分の参考値)
吸気・燃料装置/燃料供給方式:フューエルインジェクション
点火方式:TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量:12V, 6.5Ah(10HR)
クラッチ形式:乾式自動遠心、シュー式
変速装置/変速方式:CVT(Vベルト式無段変速)/オートマチック
フレーム形式:アンダーボーン
タイヤサイズ(前/後):120/70-12 51L/130/70-12 56L
制動装置形式(前/後):油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後):テレスコピック/ユニットスイング
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED/LED
最小回転半径:2.0m
乗車定員:2名
製造国:台湾
⚫️試乗後の一言!