TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)
*本記事は2007年10月に執筆したものです
タービンを回転させるエネルギーを排ガスのみに頼るのではなく、なんらかの機構でアシストしてレスポンスを改善する。
発想自体は古くからあるもので、さまざまな渡来が行われてきたが、最近になって電気モーターと組み合わせることでレスポンスを改善するシステムの試作・発表が目に付いている。
構成は大別すると2種類。まずは「電動コンプレッサー」方式。ターボとは別に、モーターで駆動する専用のコンプレッサーを備えタービン回転数の低い領域では、モーター駆動コンプレッサーによってあらかじめ圧縮された空気を、ターボのコンプレッサーホイール前もしくは後に送り込むタイプ。過給に必要な圧力をアシストする機構で、電動コンプレッサーとターボによるツインチャージャーシステムと理解すればいい。
もうひとつは「モーター内蔵ターボ」。タービンホイールとコンプレッサーホイールをつなぐ軸上にモーターを配し、直接回転力をアシストするタイプもある。このモーターは発電機を兼ねていて、低回転時にはシャフトの回転をアシストし、排ガスのみで十分な過給が得られる状態では発電を行なう。電気モーターが持つ、良好なレスポンスと高いスターティングトルクが活かせる構成だ。また、電動コンプレッサーとモーター内蔵ターボを連携させるシステムも考案されている。
開発上の課題は、モーター回転子の分だけ増加する質量に耐えうるシャフトの実現、自己発熱に加えてターボからの熱に耐えうるモーターの実現と、スターターと同レベルの1~2kWの大電力を12V電源で供給する方法など、まだ多い。
電気モーター内蔵の専用コンプレッサーによる圧力アシストと、モーター内蔵型ターボを協調させるシステム(試作品)。消費電力など、トータルのエネルギー効率の向上が今後の課題だ。ちなみにVisteon社もVTES(Visteon Torque Enhancement System)として同様の機構を発表している。
タービン/コンプレッサーを結ぶシャフトを利用、ハウジング内にモーターを構成するe-Turboシステム(試作品)。現状のものは、モーター部分の出力が最大1.4kW。アシスト用としては不足気味ながら、電源の制約を考慮して抑えた設定か。消費電力は2kWで、回転数が高まると発電機として機能する。課題はモーター構成部品を組み込んだ上で、20万rpmにも達するタービンの回転に耐えられるシャフト強度と、モーター駆動用電源の確保。
マツダは2003年の東京モーターショーから、水素ロータリーエンジンと電動アシストターボの構成を技術展示。詳細は公開されていないが、リリースでは「低速域から高い過給効果を発揮する電動モーターアシスト式ターボチャージャーを採用。低回転域では、モーターでターボチャージャーの作動をアシストして過給効率を高め、高速域では通常の排気ターボによって過給し、水素希薄燃焼でも十分な出力を実現します」とされている。