TEXT●工藤貴宏(KUDO Takahiro)
基本的に運転が好きだから、どんなクルマに乗ってもだいたい運転が楽しい。そんなボクに「最高に運転が楽しいクルマを3台選べ」なんて、今回も酷なお題過ぎるなあ(笑)。
というわけで今回は、「いま新車で売っているクルマ」のなかから選んでみました。
「なんにもないけど、すべてがある。」
かつて、とある編集長はこのクルマについてそんな名キャッチを付けた。意味不明だけどわかる気がする(笑)。
イギリスのスポーツカーメーカーであるロータス社の「エリーゼ」の素晴らしさは、軽さとダイレクトさに尽きる。デビュー当初に比べると重くなったとはいえ、800kg台の重量は今どきのクルマとしては超軽量級。まるで地面に座るかのごとく低い着座位置に収まれば、気分はレーシングカー。
今のラインナップはスーパーチャージャー付の高出力仕様エンジンのみだけど、個人的にはハイパワーではなく素の1.6Lエンジンで適度なパワー(136ps)を引き出しながら運転するほうが楽しい。
ハンドリングはダイレクトという文字を具現化したかのような操作感がたまらない。大きなレーシングカートのような感覚は他ではちょっと味わえないから、路面が濡れている日はちょっとスリリングなんてことは気にしない(本当はスタビリティコントロールが付いているので心配ないけれど)。
このクルマも楽しすぎる。何がいいかって、小さくて軽い車体に適度なパワーを組み合わせていることだ。
車幅感覚がまるで肩幅のように掴みやすく、タイトな峠道をスイスイ走る時の様子はまるで水を得た魚。トランスミッションはもちろんMTがいい。
それにしても、専用プラットフォームまで起こした本格スポーツカーが200万円ちょっとで買えてしまう日本ってスゴイ。S660のようなクルマを選べる日本のクルマ好きって幸せだと思う。本気で買おうかと狙っているのはここだけの話だ。
オトコは黙って2シーター+後輪駆動+MTである。その条件を満たすあのモデルを、運転が楽しいクルマの1位とさせてもらった。スズキ・キャリイであえる。
数年前に取材でキャリイは、運転していて心が躍りっぱなしだった。なんと楽しいのだろうか。
発進後にはすぐに2速へシフトアップが必要で、その後も次々とシフトアップを求められ、交差点を2速で曲がろうとシフトダウンしたら危うくシフトロックしかけた超絶ローギヤードのトランスミッション。非力だからシフトダウンも忙しいが、そんなトランスミッションをせわしなく動かしているとだんだん楽しくなってくる。
高速道路で速度を上げるとフラつくけれど(そこは重視して開発していないから文句ない!)、必死(ちょっと大げさ)にハンドル修正していると「あぁ、オレはいま運転しているんだ」とものすごく充実した気分になれる。
運転にはいろいろ神経を使うし疲れるクルマだけど、それが楽しいのだ。一生懸命操作することの喜びが、キャリイを運転していて感じる充実感なのだと思う。もちろんダイハツ「ハイゼット」でも同じ楽しさを味わえるだろう。
「スポーティなクルマじゃないと運転が楽しくない」なんていうのは絶対に嘘だ。キャリイの楽しさを知ると、そんなことを強く実感するわけです。
こうしてリストアップした3台を見て感じるのは、軽さは絶対欠かせず、やっぱりMTで後輪駆動がいい。エンジンパワーの大きさは気にしない、ということ。かつては「ハイパワー車楽しい。最高!」と思っていた時期もあったけど、最近は“適度なパワー”が一番楽しいと思うのですよ。
『運転が楽しいクルマ・ベスト3』は毎日更新です!
クルマ好きにとって、クルマ選びの際に大きな基準となるのは、
「運転が楽しいかどうか」ではないでしょうか。
とはいえ、何をもって運転が楽しいと思うかは、人それぞれ。「とにかく速い」「速くないけど、エンジンが気持ち良い」「足周りが絶品」などなど、運転を楽しく感じさせる要素は様々です。
本企画では、自動車評論家・業界関係者の方々に、これまで試乗したクルマの中から「運転が楽しかった!」と思うクルマのベスト3を挙げてもらいます。
どんなクルマが楽しかったか。なぜ楽しいと感じたのか。それぞれの見解をご堪能ください。
明日の更新もお楽しみに!