BMWとその傘下のミニでは旧来のBMWエンジンの命名規則に則ってN13B16、N14B16、N18B16と呼ばれる。当初は1.4や自然吸気版も存在したが、2010年の変更で1.6のターボ過給バージョンに統一。過給圧バリエーションと、それに伴う圧縮比の違いで、様々な出力バージョンを作り分けることになった。ジアコーサ式の横置きで積むミニの場合は、前方排気/後方吸気となる。縦置きの1シリーズの場合は、それを反時計回りに90°向きを変えた形、すなわち右側吸気/左側排気となる。これは従来のBMWエンジンと吸排気が逆である。
77.0mm×85.8mmのボア×ストロークと、84mmのボアピッチは共通。違いは燃料噴射システムと過給の有無、バルブトロニックの有無である。大別すれば、ポート噴射+バルブトロニック、直噴+ツインスクロール・ターボ、直噴+ツインスクロール+バルブトロニックの3種類にまとめることができる。このうち直噴+ツインスクロールは、過給圧などの制御の違いで異なる出力を引き出し、バリエーションを生んでいる。ポート噴射でも圧縮比は10を割らないし、高出力ターボでも10を割らない。搭載モデルは一例。ターボの応答性を重視し、ツインスクロール式を採用。これにより4気筒の排気干渉を最小限に抑え、低回転域から効率的な過給が可能となる。ガソリンエンジンターボではいまや常套ともなった手法のひとつである。ツインスクロールターボは、1/4番気筒と2/3番気筒のふたつの排気流路とし、それぞれをタービンに送り込むことで排気干渉をなくしている。過給圧はモデルによって異なるが、これにより低回転から分厚いトルクを達成。ラージミニバンからコンパクトモデルまで対応する。第二世代バルブトロニックを載せるヘッドとブロックはアルミ合金製。シリンダーヘッドの左側に載るのがバルブトロニックのコントロールユニット。オン/オフスイッチ付のウォーターポンプ駆動は前面左側の大径プーリーで行なわれる。シリンダー中央部、点火プラグの脇ではなく、ふたつ並んだ吸気バルブの間にインジェクターをレイアウトするサイドインジェクター方式を採用。微細な噴霧による吸気冷却効果を狙ったもので、広域にわたってストイキオメトリ燃焼(λ=1近傍)を維持する。N14B16:過給でもなく、直噴でもなく、バルブトロニックだけを装備するN14B/EP6シリーズ中もっともベーシックな仕様。連続可変リフト量制御の効果で、ポート噴射にもかかわらず10.5〜11.0の圧縮比を実現。バルブトロニックがもたらす効果を端的に表現する。N14B16:直噴+ツインスクロール・ターボにバルブトロニックを組み合わせたユニット。バルブトロニックを組み合わせたことで、低負荷域ではポンプ損失が低減。ターボラグを解消する方向に制御することもできるし、ノッキングさせずに高トルクを維持する使い方もできる。BMW技術の集大成のひとつ。N14B16T0:リッターあたり96.875kW(130hp)の出力を絞り出すシリーズ中もっとも過激なエンジン。ハイパワー指向とはいえ、インタークーラーを冷却風が効率良くあたる車両前端にレイアウトするなど、効率(=燃費向上)をないがしろにせず設計。バルブトロニックは装備せず、直噴+ツインスクロール・ターボの組み合わせ。1+4番気筒と2+3番気筒の排出ガスを、2分割されたスクロールのそれぞれに導く。ターボチャージャーや触媒、そして吸気管は車両前端にコンパクトにまとまっている。N13:MINIに搭載されるN14型をベースとしたFR用の縦置き配置バージョン。2011年6月に発表された116(iF20型)で、Princeエンジンとして初めてBMWブランドに採用された。直噴システムやバルブトロニック、ツインスクロールターボなどといった基本的なメカニズムはそのままに、N14型ではトランスミッション側に乗り出す形となっているオイルフィルターハウジングの方向を変更するなど、搭載方向の違いに対応。出力の異なるふたつの仕様が存在する。N181.6ℓ自然吸気のEP6。堅牢なリブ構造を持つアルミ合金製エンジンブロック、全域連続可変型バルブタイミング&リフトシステム、可変容量オイルポンプなどを採用、クランクシャフトからチェーンを介して駆動されるオイルポンプには流量可変型を新たに採用して、エンジンの状態に応じて必要な量のオイルだけを供給してパワーロスを防いでいる。ウォーターポンプもON/OFF切り替え式。