パナソニック インダストリアルソリューションズは、 ミリ波帯[1]アンテナに適した「ハロゲンフリー超低伝送損失[2]多層基板材料」を製品化、 2021年3月より量産を開始する。

 ADAS(先進運転支援システム)や自動運転の開発が進むなか、それらを支える走行環境認識技術にミリ波レーダー[3]が用いられている。また、第5世代移動通信システム(5G)の特徴である「超高速・大容量」「多数同時接続」「超低遅延」の実現に向けて、無線通信基地局ではミリ波帯の使用や、超多素子アンテナを用いたビームフォーミング技術[4]の採用が進んでいる。そのため、無線通信に用いられる高周波基板の構造は大きく変わり、ミリ波帯における低伝送損失および多層化の可能な基板材料が広く求められている。




 従来、アンテナ用基板材料として主に採用されてきたフッ素樹脂基板材料[5]は、熱可塑性樹脂であるため多層化が困難だった。今回開発した「ハロゲンフリー超低伝送損失多層基板材料(品番:R-5410)」は、熱硬化性樹脂からなるプリプレグで、アンテナ層をビルドアップ工法[6]により形成・多層化することが可能。高周波基板の設計自由度向上に寄与し、材料・加工コストを低減した小型・高密度なアンテナ一体型モジュールの実現と、より高効率なアンテナ性能の実現に貢献する。




<特長>


1.低伝送損失で、ミリ波帯アンテナの低損失・高効率化に貢献


 ▶︎ 伝送損失 0.079 dB/mm(@79 GHz)


 (パナソニック従来品[超低伝送損失多層基板材料“MEGTRON7”R-5785]:0.081 dB/mm)


2.アンテナ層の多層化、高周波基板の設計自由度向上に寄与


3.基板製造時の加工コスト低減に貢献




<用途>


ミリ波帯アンテナ用基板(車載ミリ波レーダーや5G無線通信基地局など)、高速伝送基板

[1]ミリ波帯:30~300 GHzの周波数範囲。


[2]伝送損失:プリント基板上の配線(伝送線路)を通る信号が材質や距離などに応じて減衰する度合い。


[3]ミリ波レーダー:ミリ波帯電波を送信し、 物体からの反射波を受信することにより、 物体の位置・速度を検出するセンサ。 車載ミリ波レーダーは主に76~81 GHzが割り当てられており、 衝突防止システムに代表されるADAS(運転者支援システム)を構築するセンサの1つとして自動車への搭載が加速している。


[4]ビームフォーミング技術:複数のアンテナ素子を配列し、 その位相を制御するフェーズドアレイアンテナにおいて、 特定の方向に指向性の高い電波を飛ばす技術。


[5]フッ素樹脂基板材料:熱可塑性のフッ素樹脂(PTFE、 ポリテトラフルオロエチレン、 フッ化炭素樹脂などとも呼ばれる)を絶縁体としたプリント基板材料。 フッ素樹脂は一般的なプリント基板材料に用いられるエポキシ樹脂に比べてミリ波帯での比誘電率、 誘電正接が優れている。


[6]ビルドアップ工法:コアとなる基板の上に絶縁層(プリプレグ)と導体層(銅箔)を1層ずつ積み上げていき、 多層の配線層を形成する工法。
情報提供元: MotorFan
記事名:「 パナソニック:ミリ波帯アンテナ向け「ハロゲンフリー超低伝送損失多層基板材料」を製品化