REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
1.軽快なハンドリングでより安定した乗り心地を提供
2.空力性能と防風性を最適化
3.ブレーキ性能と効率を改善
これがフレームや足周りに関する、新しい隼の開発コンセプト。ハイパワーエンジンに対応する強靭な足元、軽快なハンドリング、ライダーの安全をアシストするコントロール性能などを盛り込んでいる。
新型は前モデル同様、路面の凹凸を瞬時に吸収し、ライダーの意志に対して忠実に対応する、スムーズで快適な乗り心地を実現。 怒涛のパワーを確実に、しかも効果的に路面へと伝達。
また、今回新たに導入されたスズキが誇るインテリジェントな電子制御システムをフル活用し、直進orコーナーにかかわらず、安定した走りを獲得しているのが大きな魅力だ。
新型の開発にあたり、開発陣はエンジン同様、様々なタイプのメインフレーム&スイングアームを試作・テスト。その結果、最終的に辿り着いたのが、2代目となる前モデルを踏襲したタイプ。
通常、フルモデルチェンジ時は、メインフレームやスイングアームは刷新されるのが当たり前。しかしスズキは、コストダウンが理由ではなく、あえて変更しなかった。「フルモデルチェンジなのに、なぜ?」と、誰もが思うに違いない。これはある意味、既存の常識を覆した判断だ。
スズキは今回、いろんな仕様のメインフレームやスイングアームを試作し、テストを繰り返した。だが、試作・テストした数々のメインフレーム&スイングアームは、最終的に前モデルの仕様には適合しなかった。
この事実は、いかに前モデルのシャシーの完成度、性能、素性が高かった(過去形だが、実際には現在進行形)のかを物語っている。
前モデルでも定評のある、ツインスパーアルミニウムフレームとスイングアームは、アルミ鋳造と押し出しアルミニウムセクションという、極めて高度で、非常に贅沢な組み合わせ。剛性のある合金フレーム構造により、しなやかさと強度を獲得しているのがポイントだ。
これらは最高速度度299km/h~を誇るマシンには、必要不可欠なアイテム。なお、押し出しアルミニウムセクションは、多くのスーパーカーフレームにも使用。製作コストは掛かるが、隼が押し出しアルミニウムセクションを採用した大きな理由はここにある。
隼のスタイリング変更に合わせて設計された新しいシートレールは、より真っすぐなパイプセクションとし、前モデルよりも700gの軽量化に貢献。
フロントとリアのサスペンションは、前モデルにあった低速域でのオーバーステアの兆候を排除。すべての速度域にて、ニュートラルな感触で安定した乗り心地を実現するように最適化されている。
隼が持つ低重心や長いホイールベース、またNEWタイヤとの組み合わせにより、高速域での直線の安定性を確保しつつ、軽快なハンドリングを獲得。
フロントフォークはDLCコーティングされた、インナーチューブ径Φ43mmの新しいKYB製倒立フォークを採用。リアショックは内部構造を見直し、路面吸収能力をさらに向上させ、最適なグリップ力でよりスムーズかつ安定した乗り心地を実現したフルアジャスタブルのKYB製を選択している。
ラジアルマウントされたダブルディスク式のフロントブレーキキャリパーは、レーサーにも多用の名門・ブレンボ(ニュータイプ)を採用。軽量、コンパクト、美しく削り込まれているのが特徴だ。ブレーキパッド周辺の空気の流れを増やし、より迅速に冷却し、迅速なブレーキレスポンスを提供している。
フロントディスクローター径は、前モデルのΦ310mmからΦ320mmに拡大して制動力をアップ。冷却効率をさらに最適化するため、穴加工のパターンも変更済み。
新型の隼に採用されたタイヤは、ブリヂストンと開発した「BATTLAX HYPERSPORT S22」。このNEWタイヤの採用で、パフォーマンスが大幅に向上。走りのレベルを大幅に引き上げている。
新しいコンパウンドと構造を併せ持ったNEWタイヤは、乾いた路面でのグリップ力に加え、濡れた状態でのパフォーマンスを向上させ、俊敏性をアップ。キサイティングかつ安全性の高い走りに寄与している。