フォードの直噴ターボエンジンファミリー:EcoBoost(エコブースト)の末弟1.0。世界中のBMEP比では最大レベルを誇る。


TEXT:世良耕太(SERA Kota)

フォードは環境指向型直噴ターボエンジンの総称であるエコブースト・ファミリーに、1.0ℓ・直列3気筒版を追加した。2012年初頭に、フォーカスの1.6ℓ・直4NAと置き換える形で投入。つづいて現行C-MAX、新型B-MAXにも搭載された。エコブーストの1.6ℓと2ℓの直4、3.5ℓ・V6はアルミブロックを採用するが、1.0ℓ・直3は鋳鉄ブロック。クランクシャフトベアリングの膨張率とブロックの膨張率をそろえて過剰なオイルフローを抑え、オイルポンプの負担を減らす考え。

排気干渉がない3気筒ゆえに、排気系はコンパクトにできる。その利点を生かし、エキゾーストマニフォールドをシリンダーヘッドに組み込んだうえで冷却水回路が囲む構造。排ガス温度を下げて燃料リッチ領域を回避する狙い。

他のエコブーストと同様、シンプルな小径タービン/コンプレッサーのターボチャージャーを搭載。フロント側が排気。冷間時はバルブを閉じてヘッドの排気側に冷却水を循環させない仕組み。水温が75°Cになると循環。

「バルブをワイドにオープンさせたいから」と、カムシャフト駆動はダイレクトにこだわる。BPと共同でオイルを開発し、フリクション低減に取り組んだ。サンプに置く2ステージ式のオイルポンプはベルトドライブ。

3気筒特有の振動は、フロントプーリーにアンバランスを設けてキャンセルする仕組み。日産の1.2ℓ・3気筒と同様の手法。最大噴射圧は150barで、現状、最大2回噴射。エコブースト1.6ℓと同様、高圧インジェクターはセンターに配置する。ボアピッチは78mm。

欧州エンジンらしく、過給圧によってバリエーションを生み出している。大きく分けると3種がある模様。




【100 PS】74〜77kW/170Nm(圧縮比 10.0)


【120 / 125 PS】90〜92kW/170Nm(圧縮比 10.0)


【140 PS】103kw/170Nm(圧縮比 9.9)




それぞれに、エミッションレベル「Stage V」「Stage VI」が用意されている。エンジンコードはそれぞれに割り振られていて、一言で「○○シリーズ」「○○系」とは言い表せず、フォルクスワーゲンに似た状況である。スパークプラグに、ガスケットを用いないコニカルシート型を採用するのがユニーク。

■ 1.0 EcoBoost


エンジン形式 直列3気筒 DOHC


排気量 999cc


内径×行程 71.9×82.0mm



圧縮比 9.9〜10.0


燃料供給システム DI


過給システム ターボチャージャー
情報提供元: MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | フォードEcoBoost 1.0:世界最強の3気筒直噴ターボエンジン