日産が先代ジュークのパフォーマンス版に採用した直噴ターボエンジンは、世のダウンサイジングムードに流されず(?)高出力をねらった性格を備えていた。


TEXT:世良耕太(SERA Kota)


*本記事は2010年9月に執筆したものです

日産ジューク(先代)に搭載される1.6ℓ・直4直噴ターボのMR16DDTは、過給技術によって低回転域のトルクを高め、従来よりも1クラス下の排気量に置き換える、ダウンサイジングを目的としたエンジンではない。この点については、日産はすでに公言している。ミニの1.6ℓ自然吸気版に対する1.6ℓターボ版のような、高性能エンジンの位置づけだ。大きなクルマに小さな排気量、ではなく、エンジンの排気量は小さなままで、大きなパワーを得る発想。MR16DDTは2.5ℓ並みのパワーを絞り出すのが狙い。最高出力/最大トルクは140kW/5600rpm、240Nm/2000-5200rpmで、比較的低回転からトルクを出すチューニングにはなっている。欧州で設定のある2WD・6MT仕様の複合モード燃費は、6.9ℓ/100km(約14.5km/ℓ)だ。

インジェクターは燃焼室の外周、2つ並んだ吸気バルブの間に置く。ライナーは密着度の高いスパイニー(とげ状の)ライナー。

点火プラグの周辺に濃い混合気を形成するための、浅いキャビティが確認できる。MR系ボアピッチは92.0mm。HR系は85.0mm。

欧州では、ジュークの自然吸気仕様は日本と違って、1.6ℓ・直4のHR16DEを搭載する。ターボ化にあたってはこれをベースにするのではなく、MR系をベースにした。理由は、ターボ過給によって発生する大きな熱量を受け止めるため。MR系は1.8ℓと2ℓしか持っていないため、1.6ℓを新設。84.0×81.1mmのボア×ストロークを持つMR18DEボアを4.3mm狭くし、ロングストロークのディメンジョンとした。ボアピッチは92.0mmなので、12.3mmのボア・トゥ・ボア寸法を確保できる。

オーソドックスなシングルターボを採用。ツインスクロールに対する「シングル」のメリットは、排気圧力損失や熱容量が小さく、(壁がふたつに分かれていないので)触媒が温まりやすいことだと日産は説明。

ターボはシングルスクロール。排気干渉をキャンセルできるツインスクロールにしなかったのは、高回転側の圧損を嫌ったため。圧損に打ち勝って出力を出そうとすれば、サイズを大きくする必要がある。サイズを大きくすると、ジュークには載らない。シングルを使いつつ、可変バルブタイミングで低速を補い、140kWを引き出すコンセプトだという。

低速を補いつつ高回転まで回すため、吸排気ともに可変バルブタイミング機構(日産の呼称ではCVTC)を装備。MR/HR系エンジンはQR/QG系エンジンの後継として2000年代半ばに登場。ルノーの小型車にも搭載される。

ローラーフィンガーフォロワーの良さを認識しつつも、バルブ駆動は伝統(?)の直打式。バルブリフターにDLCコーティングを施す。

■ MR16DDT


エンジン形式 直列4気筒 DOHC


排気量 1618cc


内径×行程 79.7×81.1mm


圧縮比 9.5


燃料供給システム DI


過給システム ターボチャージャー


最高出力 140kW/5600rpm


最大トルク 240Nm/2000~5200rpm
情報提供元: MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | 日産の直噴ターボ[MR16DDT]高出力志向のターボエンジン