ポルシェは過給ダウンサイジングの概念を取り入れた小排気量ターボを選択。「より少ない燃料で、より大きなパワー、より高い効率、より低いCO2排出量」これが、ポルシェが掲げるスローガンだが、彼らのパワーユニット開発はまさに、そのスローガンを地で行く内容である。


TEXT:世良耕太(SERA Kota)

トヨタが3.7ℓの中排気量NAを選択(大排気量エンジンをゆっくり回してもいいが、重くなるので選択せず)したのに対し、ポルシェはターボ過給を選択した。排気量は2.0ℓである。レギュレーションが定める燃料流量などの観点から、最も効率の高い排気量だろうと見込んだ結果だ。もっと大きな排気量も検討したようだが、排気量を増やせば重要が増える。妥協点が2.0ℓだったというわけだ。




排気量が決まったところでシリンダー数だ。熱効率や熱損失の観点からシリンダー容積には適当な範囲が存在する。2.0ℓで6気筒にすると単気筒容積は333ccになるが、燃焼室のボリュームと表面積のレシオ(S/V比)の点であまりよろしくない。検討の結果、単気筒容積が500ccになる4気筒に落ち着いた。量産エンジンでは、これまで4気筒だった1.2ℓや1.5ℓの4気筒を3気筒にする流れが加速しているが、背景にある理由は同じである。効率を重視した結果だ。

ウェイストゲートが開く領域でのみ、排気をMGU-H駆動用タービンに導く考え。トヨタが減速時に一気にエネルギー回生を行なうなら、ポルシェはストレート走行中にじわじわ回生するタイプ。6MJを一気に回生するならMGU-Kを高出力にする必要があるが、熱エネルギー回生に頼ったシステムにするなら、その必要はない。

さて、シリンダーの数が4本の場合、それを直列に並べるのがセオリーだが、ポルシェはV4を選択した。耐久レースを走るプロトタイプカーのような車両の場合、エンジンはサブフレームに載せるのではなく、それ自体を車体構造の一部として機能させるストレスマウントにするのが一般的だ。サブフレームの助けを借りて成立しないことはないが、軽量化の点で不利である。ポルシェが直4ではなくV4を選んだのは、ストレスマウントが前提だったからだ。

運動エネルギーの回生よりも、熱エネルギーの回生に重点を置いてパワーユニットの開発に取り組んだのも、ポルシェの特徴である。「運動エネルギー回生に頼った場合、短い制動時間で大きなエネルギーを回生しなければならない。だが、熱エネルギー回生なら時間をかけて回生することができる」と、テクニカルディレクターのA・ヒッツィンガー氏は説明。回生に長時間費やせるので、キャパシタにする必要はなく、リチウムイオンバッテリーを採用した。

F1はターボチャージャーの同軸上にMGU-Hを配置することが規則で定められているが、WECにその縛りはない。ポルシェはターボ(写真)とは別にMGU-H駆動用タービンを設けた。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 内燃機関超基礎講座 | ポルシェが919ハイブリッドに2.0ℓV4直噴ターボを選んだ理由②