微笑みの国タイから魅力的なメーカーが次々と出てきているが、そんな新進気鋭のニューメーカーの一つが「フェニックスエンジニアリング」。その第一弾となる「ガンナー50」が日本上陸! ポップでファニーなデザインと信頼の横型50ccエンジン、こりゃ楽しそうなバイクが入ってきたぞ!




TEXT●ノア セレン


PHOTO●山田俊輔




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フェニックスエンジニアリング・GUNNER50

全てのスタート地点は、やっぱり50!

カラーは全6色の展開。ブラックやホワイトといったスタンダードの他、イエロー、グリーン、レッド、ブルーと鮮やかなカラーリングを設定する。国産の125ccクラスファンバイクは今や高級感をまとうが、ガンナー50はむしろポップさを前面にだしており、より若いライダー層や女性にウケそうである。

 レジャーバイクだとかファンバイクだとか言われたバイク達、かつてはいっぱいいたことを思い出す。モンキーやゴリラはもちろんのこと、ノーティダックスやジャズ、マグナフィフティなど贅沢であり遊び心に溢れるモデル達だったが、最近の日本メーカーは原付二種(125ccクラス)にこの遊び心をシフトさせているようで、50市場はちょっと寂しいのが現状だ。


 そこでやってくれたのがタイの新興メーカー「フェニックスエンジニアリング」。まるっきり新しいメーカーで、この「ガンナー50」がまさに1台めの生産車。タイ王国のバイク界の勢いを感じさせてくれるではないか! これを日本に入れくれているのは最近メキメキと知名度を上げている同じくタイのメーカー「GPX」を取り扱うMOTOSHOPクロニクルである。「かわいいでしょう!」「おもしろいでしょう!」「どうぞ乗ってみて!」というのでありがたく試乗した。

横型4スト50、馴染みあるエンジンです

もう一台撮影できたのはブルーバージョン。イエローと2台並んでいる時の注目度は非常に高く、通り過ぎる人たちがみな食い入るように見ているのが面白い。「これはどこのバイクですか?」「タイから新しく入ってきたものですよ」「日本車にはない独特さが良いですねぇ!」という会話の後に「で、どこで買えるんですか? 値段は?」と突っ込んで聞いてくる人まで!

 バズーカ砲というかロケットランチャーのようなメインフレーム部から、初期モンキーのスイングしないスイングアームみたいなループ形状のダブルクレードルを生やし、そこに横型4スト50を搭載。タンクもヘッドライトもそのロケットランチャーに内蔵、シートはロケットランチャーに直付け。もうロケットランチャーありきのフレーム構成であり、だからこそ独特のスタイリングになっていて直感的に「楽しそう」と思えるのだろう。6色のカラー展開にもワクワクさせられる。


 足周りは前後12インチ&ディスクブレーキ、リアサスはけっこう硬そうではあるものの、跨った時点では「本当に初めての市販車?」と思えるほどの完成度だ。


 メーターは7種類の色に設定できオシャレだし、スイッチ類もシンプルだけれど使いやすいし節度も良い。ブレーキマスターやキャリパー、キャブレターなどは国産車で見たことのあるカタチをしていて、日本メーカーの下請けが多く存在したタイならではのノウハウ蓄積があると感じる。そもそもエンジンが、スーパーカブのようないわゆる横型タイプ。ボア×ストロークもかつてのカブ50と同様なのだから実績もあるだろう。


 バイク王国であるタイだからこそ、様々なコンポーネントが豊富に入手可能である背景が伺える構成であり、そんな中で個性的で魅力的なものを提案するフェニックスエンジニアリングはなかなか面白い。

大柄なのが良いよね

 セルで始動して走り出すと、50ccならではの牧歌的な動力性能で、決して速いわけではない。ただ法定速度まではすんなり出るしその先だってまだまだ伸び、その工程で嫌な振動や雑音などはないのだから優秀だ。ましてや試乗車はまっさら新品のナラシ中。にもかかわらずストレスフリーで嬉しくなった。ミッションは4速で、50のパワーだとどんどんとシフトアップしてすぐにトップに入ってしまう。でも4速固定でも街道の流れにヨチヨチついていくには全然苦にならず、のんびりと流して走る感覚はまさにかつての国産50ccレジャーバイクを思い出してしまった。


 新メーカーということでエンジンをまず気にしていたが、そこの不安が払しょくされると今度は車体の大きさに気付いた。筆者は185cmと長身なのだが、かつてのホンダモンキーなどに乗ると小さすぎて危なっかしいということがあった。しかしガンナーは今のホンダグロムのようなサイズ感で窮屈な感じはない。ハンドルをフルロックしても膝に当たってしまうだとかそういったことがないため安心して走らせ、Uターンもさせることができた。さらにこのサイズ感だとしっかりと存在感があり、他の交通に見落とされることも少ないのも魅力、というかシンプルに安全に感じられた。


 大柄でそこそこのホイールベースがあるとなると、ファンバイクにとどまらずちゃんとオートバイとして走らせたくなってくる。しっかりとブレーキを握り込みコーナーに入っていくと、ブレーキの効きはとても良く、またフォークの節度も十分。リアサスは跨った時の印象そのままにちょっと硬め(次期ロットではもう少し柔らかい設定を希望しているとか)ではあったが、コーナリングも十分楽しめることが確認できた。当初50ccのパワーとこのサイズ感はちょっとアンバランスにも思えたが、走っているとむしろこの大柄さが安心感に繋がっていると感じた。

「その先」がすぐに浮かんじゃう

 乗れば楽しいし、独特のルックスは注目を集める。事実撮影中に驚くほど多くの人に声をかけられた。バイクになじみのない人も惹きつけるような独特の可愛さがあるのだろう。老若男女に声をかけられて悪い気はしないし、ましてや今50ccでこんなにチヤホヤしてもらえるなんて嬉しいではないか。調子に乗って走っているとナラシが進んでどんどんエンジンやミッションが滑らかになってくるのが実感でき、ますます走らせ続けたくなる。ブレーキも良く効くし、コーナリングも素直だ。


 しかしそうなると「90ccだと速度違反で捕まる心配も減るし、いいかもなぁ」なんてことを思い始める。動力性能的にも、もう少しパンチがあってこの独特の車体がノンビリだけでなくキビキビ走っていても面白い。現地には既にこのエンジン用のボアアップキットも存在するようで、MOTOSHOPクロニクルでは「やっぱりそうですかね! 今後はボアアップキットの入荷、もしくはそもそも90ccバージョンの展開なども考えていきたいところです」と答えてくれた。新興メーカーだからこそ小回りがきいて、細かな要望にも柔軟に対応してくれるというから楽しみだ。


 加えて個人カスタムが楽しめそうなのも魅力だろう。そもそもタンクがないのだから、整備やカスタムの大前提であるタンクとシートを外すという工程がない。思い立ったらもう、すぐに着手できる。このエンジンなら吸気系やシリンダー周りの分解もそれほど難しくはなさそうで、タイ本国ではすでにエンジン系のチューニングパーツがスタンバイ中なんて話もある。

GPX販売店にて現車チェック!

 まっさら新しいバイク、面白そうだけどどこで買えるのかな? と考えるのは普通のこと。しかしご安心を! 最近知名度を高め販売店も増やしている同じくタイのメーカーGPXと基本的には連動してくれるそうなのである。中心となるのは関西方面のツキギレーシング、関東ではMOTOSHOPクロニクル、そして全国のGPX販売店で購入可能。新興メーカーだからこそ様々な要望が言えるし小回りのきいた対応もしてくれるそう。これから販売店が育ててくれるメーカーという感覚もあるし、販売店を通じてユーザーの意見も直接メーカーに届くという魅力もある。


 みんなで育てるガンナー50! みんなで育てるフェニックスエンジニアリング! これは楽しい展開になりそうだ。

足つき性をチェック(ライダー身長185cm)

リアサスが硬めの設定なのと、シートもわりとしっかりしているため、跨った時の沈み込みが少なく最初は足つき、どうかな?とも感じたが、慣れるとステップのすぐ後ろに足が下せることに気づき、また車体がとてもスリムなため、シート高自体は802mmとそんなに低くないのに、足つきは良好だった。

12インチホイールでミニマムなイメージではあるが車格は案外堂々としていて、長身の筆者が乗っても窮屈さは皆無。ハンドルをフルロックしても膝に当たるだとか、そういったことはなかった。

ディテール解説

50ccクラスながらも正立式のフロントフォークを採用した剛健な見た目が特徴的。ディスクブレーキにはピンスライド2ポッドキャリパーを組み合わせ、アルマイトカラーを採用したブレーキホースはカスタム車のようなルックスに。ホイールはグロムなどのイメージの12インチ。タイヤサイズは100/70-12としている。

メインフレームであるロケットランチャー部に他のパーツをひたすらくっつけていったような構成がかわいらしいし、ウインカーステーなどは今後さらに色んなカスタムをするにあたって便利なステーにもなりそう。新興メーカーならではの手作り感が楽しめるのだ。リアサスはプリロード調整ができるが、最弱でもちょっと硬めかな? という印象(ライダー体重72kg)。MOTOSHOPクロニクルでもこれは把握していて、次期ロットからはもう少しストローク感のある設定にしてもらえるよう要望を出している。

シンプルな構成の中にも随所に遊び心があるのが嬉しい。スイングアーム後端のチェーン引きのデザインも丸くてかわいいし、ブレーキペダルの曲げ感やサイレンサーのタイコ形状など、機能パーツもしっかりとデザイニングしてこのスタイルを確立していると感じる。リアタイヤは120/70-12サイズで、タイヤのブランドはFUJIYAMA MONSTER! フロントと同じピンスライド2ポッドキャリパーは効きもコントロール性も十分。

ホンダスーパーカブやモンキーなどでもおなじみのエンジン。39×41.4mmというボア×ストロークはカブと同数値のため、もしかしたら既存の4MINI系アフターパーツが使える可能性も。また現地タイではこのエンジン用のボアアップキットやハイカムといったカスタムパーツも既にあるというから、改造の楽しみも広がっていきそうだ。

メインフレーム内に配置されたタンクは4.5Lの容量。タンクキャップの節度の良さ、タンク内の作りの良さには驚かされた。メインフレームを貫通する形のステム部はキャスター角26度。MOTOSHOPクロニクルでは「もう少し寝かせて、のんびりした操作感でも良いかも」と言っていたが、今のままでも十分楽しめるだろうし、タイヤやサスを換えればまた印象も変わってくるはず。というか、ステムの角度まで変えてもらえるほど小回りがきくメーカーということ!?

メインフレーム先端にポコッとつけられたヘッドライトもまたガンナー50のアイデンティティ。ポジション灯も備えたマルチリフレクターがかわいらしく、一部では「ロケットランチャーというよりは懐中電灯じゃない?(笑)」などと言われているとか。

リラックスしたポジションのハンドル周りは、どこにも無理のない設定で誰でも馴染めることだろう。全幅は690mm、渋滞路でも気になることはなかった。なおミラーは裏側がグロム的デザインとなっているが絶妙にデフォルメされた一回り小さいものでこれまたかわいらしい。

7色に背景色を変えられるメーター。わかりやすく速度表示とオドメーター、燃料計、タコメーター、そしてニュートラルのNという簡素な表示。エンジンのアタリがついてきたなと感じた後半は1万回転まで回っていた。燃料計は4つのバーグラフとざっくりしたものではあるが、昔ながらの燃料コックにはリザーブがあるから大丈夫!

コンパクトなスイッチボックスは、左側にハイ・ロー切り替え、ウインカー、ホーン。ウインカーはプッシュキャンセルではないものの、いずれのスイッチも節度は良く冬用手袋でも操作は簡単だった。

右側はライトのオフ/ポジション/オンのスイッチとセルスターターボタンに加え、ハザードも備えていた。

ロケットランチャーメインフレームの後端はすぼまってそのままテールランプに。スイングアームにつく泥除け及びナンバーステーにもリフレクターがついているが、テールライトレンズ内にもリフレクターが内蔵。シート後端にナンバーをつけてもかわいいかも!

メインフレームに直接ボルト留めされるシートはカマボコ状でわりに硬めの印象。50ccで出かける近距離で尻が痛くなるようなことはないだろう。逆にダイレクト感を楽しむには良い。しかし数値上のシート高を落とすという意味でも、今後もう少し形状を改めたローシート仕様も検討しているそうだ。

主要諸元

全長:1670mm


全幅:690mm


全高:1270mm


軸距:1150mm


最低地上高:105mm


シート高:802mm


乾燥重量:75kg


タンク容量:4.5L


エンジン形式:4ストロークSOHC空冷単気筒


ボア×ストローク:39mm×41.4mm


排気量:49.47cc


圧縮比:7.3:1


最高出力:2.4Kw/8000rpm


最大トルク:3Nm/7500rpm


始動方式:セル/キック


タイヤサイズ前・後:100/70-12・120/70-12


価格:225,500円(消費税込み)
情報提供元: MotorFan
記事名:「 ”バズーカ砲”!?と話題のバイク、何cc? さっそく乗ってみた。|フェニックスエンジニアリング・GUNNER50