というわけで、今週は、JA71型ジムニー君の独白です。週1で大荷物を積んでアウトドアを旅するジムニー君の胸の内は如何に?
TEXT &PHOTO◎伊倉道男(IKURA Michio)
「吾輩はスズキ・ジムニーである。1986年の生まれで、型式はM-JA71Cだ。金属のルーフもエアコンもない、切替え式のパートタイムの四輪駆動車である。錆も進み、あちこちがへこんでいるので、ゆっくりと余生を送ろうとしていたが、週に1回、旅に出る事となる」
「エンジンはたった550ccなのだが、なぁにターボチャージャーがある。それでも重い船外機をシートに縛り付けられたり、カナディアン・カヌーをソフトトップにキャリアもなしに、直に積まれたりしている。おいおい、ちょいと無茶じゃないかと思うのではあるが、なぁに、いつも乗り切ってやっている。さてさて、今回は何をやらされるのやら」
「吾輩も一応クルマであるので、歩行者専用道路やサイクリングロードには入れない。湖の横までなんて、4輪駆動に切替えてくれれば難なく入っていけるのではある。たとえ少しくらいの水の中だって平気だし、そこから直接、湖に舟を降ろしてくれれば良いのだが、最近は規制も多く、吾輩が入ってはいけない場所がある。そこがちょいと悩みの種だ」
「そこで新しい相棒が登場する事になる。まぁ子分のようなものなのだが、14インチの折りたたみ自転車とバーレーと言うアメリカ製のサイクルトレーラーだ。(おいおい、キャンピング用品だって、山のようにあるのに、それにゾディアックタイプのボートとけっこう重いトーハツの船外機、それに足してサイクルトレーラーまで我が輩に積むのか!)まぁ何とかなるだろう。湖の近くまで行けば、吾輩は高みの見物と言う事で、少しはのんびりと過ごせるだろう」
「雨上がりの霞ヶ浦は、まだ霧に包まれてはいたが、午後になると霧も晴れてきた。でも、まだ水面は波だっているし、こんな時に舟を出すんかい。まぁ、さっさと重いボートと船外機を降ろしてくれよ。エアを入れたゾディアックタイプのボートと折りたたみ自転車、それにサイクルトレーラー。組み上げるとこんなに場所を取ることになる」
「よく運んで来たなぁ」と、吾輩は自分ながらに驚いているのだが、早く残りのキャンプ用品もそのボートに積んでくれ。おっと食材の入ったクーラーボックスも忘れるなよ。なんかニンニクの匂いが漏れてんだよ。ガソリンとオイルの匂いは好きだけれど、どうもニンニクとニラは苦手なのさ」
「今回のキャンプ用品は割とコンパクトにまとめられてるな。ワンウォールのゴアテックスのテント。ガスのシングルバーナー。ボートと船外機の補修パーツはひとつのボックスに納められている」
「自転車とサイクルトレーラーは上手く船首に載るようだ。おいおい、積んだ携行缶にガソリン20ℓかよ、どこまで行くつもりだよ。その船外機、我が輩よりも燃費が悪いのか、たった2馬力しかないくせに」
「ボートやカヌーに折りたたみ自転車とサイクルトレーラーを積んで出艇する。これには大きな意味がある。例えば川を舟で上流から下る。その後、吾輩の元に帰って来るのに、吾輩のようにパワーのある?エンジンでないと水流に逆らって戻るのはつらい」
「トーハツの船外機なら戻れるだろうが、カナディアンカヌーやファルトボートのクレッパーでは、何千回も漕ぐ事になるだろう。そこで帰りは陸路。サイクルトレーラーでボート、カヌーを積んで帰る。上手く考えたものだ」
「それは良いけれど、本当は何がしたいんだよ?」と聞いてみたところ、どうやら、夏にある湖で対岸まで舟で渡り、そこから折りたたみ自転車で陸路を行き、お肉屋さんで(メンチカツとコロッケ)を買いたいらしいのだ。吾輩にもハイオクのガソリンを買って来てくれると言うので、まぁこれはよしとしよう。そんなわけもわからないおっさんに、もう20回以上もつき合わされている」
「吾輩は背伸びをして湖面を見てみた。白波が立っているところがあるな。気を付けて行け。ダートならマニュアルフリーハブをロックして、4輪駆動のHに入れる。そんなところだ。吾輩なら簡単に越えて行けるが、あまり良い状況ではない。無理はすんなよ」
「まぁ、今回は折りたたみ自転車とサイクルトレーラーを使うことで、確実にボートと船外機、キャンピング用品を運べる事がわかったのだ。これで水路も陸路も行ける。それで良いのではないのかな」
「おっと、それでも吾輩にはハイオクガソリンは入れておくれよ。これから相棒達、いや、子分達の折りたたみ自転車とサイクルトレーラーを積んで帰る役目がある」
「吾輩はスズキ・ジムニーである。型式はM-JA71C。名前はまだない」