かねて独自の高機能素材やエンジニアリング技術、成形技術を駆使して、マルチマテリアルによるコンポジット製の自動車部品の開発・設計に取り組んでいる帝人グループは、こうしたニーズに対応するため、このたびマルチマテリアルのバッテリーボックスを開発することとした。
開発したバッテリーボックスは、これまで帝人が培ってきたマルチマテリアル技術を駆使し、複合材料(FRP)と金属材料を最適条件で組み合わせて設計したもの。顧客の求める特性に応じて、FRPには炭素繊維またはガラス繊維を使用することができる。FRPをプレス成形することで、バッテリーボックスを形成するトレイやカバーなどの複雑な形状を一体成形できるため、容易にシール性を確保して安全性を担保できる他、製造コストの最適化も実現する。
また、車種ごとに異なるサイズに適切に対応しながら、従来のバッテリーボックスと同等の剛性や耐衝撃性を確保するため、フレームには金属を用いている。さらに、アルミニウム製の従来品と同等の軽量化を実現した他、バッテリーボックスに求められる耐火性、寸法安定性、耐腐食性にも優れており、FRP製のトレイやカバーには、電磁波シールド性を付与することも可能。
帝人は、2017年に北米最大の自動車向け複合材料部品メーカーであるContinental Structural Plastics社(CSP)を買収して以来、グローバルTier1サプライヤーとして自動車向け複合成形材料事業を展開しており、2020年2月には、欧州における自動車向け複合成形材料のデザイン、設計、プロトタイピングなどを担うテクニカルセンターとして、ドイツ・ブッパタール市にテイジン・オートモーティブ・センター・ヨーロッパ(TACE)を設立。軽量性や強度に加え、デザイン、生産性、コスト効率といった顧客ニーズへの対応を強化している。このたび開発したバッテリーボックスも、国内の複合材料技術開発センターや、CSP、TACEなどの設備や人財を活用し、顧客ニーズに沿った最適な設計や改良を行うことにより、2025年からの量産開始を目指す。