自動車業界は今、100年に一度の大変革時代を迎えていると言われているが、クルマを所有しメンテナンスする私たちユーザーが直に接するアフターマーケットも決して例外ではない。当企画では、そうしたアフターマーケットの現状を、近年生まれた新しいキーワードを切り口として解説する。




今回は、車両購入後の毎月の支払額に含まれる費用の範囲が「残価設定型クレジット」よりもさらに広い「個人向け自動車(マイカー)メンテナンスリース」について紹介したい。




TEXT&PHOTO●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)

まず「残価設定型クレジット」とは、契約が終了する時点でクルマに“残”されている“価”値(=“価”格)を「残価」として“設定”し、クルマの価格から残価を差し引いた分を毎月支払う。これにより毎月の支払額を低く抑えたローンのことを指す。




残価設定型クレジットの支払が終了した際は、別のクルマに買い換えるか、そのクルマを返却するか、そのクルマを買い取る(残りの金額を通常のローンで支払う「再クレジット」が可能な場合もあり)かを選ぶことになる。




なお、いずれの場合もその時点で査定が行われ、月間走行距離が規定の範囲を超えていたり、クルマに損傷や修復歴、改造箇所があったりした場合は残価が減額され、その分を支払わなければならなくなるため注意が必要だ。




この残価設定型クレジットの場合、ローンの対象となるのはあくまで車両購入時に発生する費用だけなので、購入後に定期的に発生する税金やメンテナンス費用は含まれない。また、支払期間中の所有権は原則として、販売会社に留保される。




これに対し「個人向け自動車(マイカー)メンテナンスリース」は、簡潔に言えば「残価設定型クレジットに購入後の税金やメンテナンス費用を足したもの」ということになる。




ただし、リース契約期間中の所有者はリース会社となる。また、リース料金に含める税金やメンテナンス費用の範囲は契約内容によって異なり、中には自動車保険料や延長保証の料金を含められるものも存在するので、商談の前によく確認してほしい。




では、メンテナンスリースを使うメリットとは何か。端的に言えば「クルマに関する費用の支払いを毎月ほぼ均等にできること」、これに尽きる。車両購入時はもちろん車検や12ヵ月点検の際は、一度にまとまった金額の費用が発生しがちだが、これらを全部まとめて契約期間の月数分で均等に割って“ならす”ことが可能だ。




逆にデメリットは何か。まず残価設定型クレジットにも共通することだが、前述の通り過走行や損傷、改造で残価が減額されるため、オーナーとしてクルマを自由に扱える範囲が著しく狭い。そのため「フルノーマルのままちょっとしか乗らずに2~3年で乗り換える」という人以外は不向きだ。「完全に壊れるまでずっと乗り続けたい」「業務や通勤に使いたい」「遠くまでドライブに出掛けたい」「サーキットを走りたい」「いろいろカスタマイズしてみたい」というクルマ好きや、「運転が苦手でしょっちゅうぶつけてしまう」という人は論外とさえ言えるだろう。




また、事故で全損になった場合の金銭的リスクが極めて高い。残価設定型クレジットやメンテナンスリースの場合、毎月の支払額が少ないうえ、自動車保険に新車特約付きで一般型の車両保険を付帯していたとしても、年式が低くなるほど車両保険金額(=車両保険の支払い上限額)は減っていく。そのため、購入から2年後以降に全損し中途解約となった場合は自動車保険金だけで返済しきれず、不足分を現金で一括払いしなければならなくなる危険性が、通常のローンよりも高いのだ。




そして、割賦手数料(=利子)は契約期間中に支払う金額だけではなく残価に対しても発生するため、通常のローンと実質年率(=金利)が同じ場合は割賦手数料も変わらない。メンテナンスリースの場合はむしろ、上乗せした諸費用に対しても割賦手数料が発生するため、その分だけ総支払額も高くなることを念頭に入れるべきだ。




それ以前に残価自体、契約期間終了時点でその車種が不人気になり中古車相場が暴落しても販売会社やリース会社が損をしないよう、低めに設定されている。しかも契約期間が長いほど、相場暴落のリスクが高まるため、その傾向は強くなる。「普通にローンで買って下取や買取に出した方が得だった」と泣きを見たくない人は、素直に通常のローンで購入することを強くオススメする。




だが敢えて、残価設定型クレジットやメンテナンスリースを選ぶ理由があるとすれば、一体どういう場合だろうか。




一つは、通常のローンより実質年率(=金利)が遥かに低く、残価を含めた総支払額が通常のローンを下回る場合。




もう一つは、通常のメンテナンスパックを購入するよりも、メンテナンスリース加入時のメンテナンス費用が低く設定されている場合。




そしてもう一つは、メンテナンスリースにも含められない維持費、具体的には燃料代や洗車・コーティング代などに関して大きな割引制度が設けられている場合だ。




メンテナンスリースは残価設定型クレジット以上に千差万別。取扱各社のリース内容や特典をじっくり比較し、最もお得なものを選んだうえで、さらに残価設定型クレジットや通常のローンよりも経済的負担が少ないと確信できた時に初めて、利用すべきものと考えるのが無難だろう。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 「残価設定型クレジット」+「購入後の税金・メンテナンス費用」をすべて均等払いに。だがその分だけ割賦手数料は増える傾向