REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
問い合わせ●MVアグスタジャパン(https://www.mv-agusta.jp/)
取材協力●MVアグスタ東京
MVアグスタ・スーパーベローチェ800……2,497,000円~
往年の名車を模した、いわゆるネオクラシックというジャンルが世界的にブームとなっている。エイドリアン・モートン率いるCRCデザインチームは、F3 800をベースに見た目はクラシカルでありながらスーパースポーツならではの走りに妥協しないという、全く新しい発想のニューモデルを2018年のEICMAで発表した。それがスーパーベローチェ800だ。
世界的にも珍しい逆回転クランク採用の798cc水冷並列3気筒エンジンを、ALS鋼管トレリスフレームに搭載するスーパースポーツがF3 800(2,222,000円)。そのパワーユニットとシャシーをベースにして作られたのがスーパーベローチェ800だ。最高出力148hp(150.1ps)/13,000rpmや最大トルク88Nm/10,600rpmなど、エンジンの基本的なスペックはF3 800と共通だが、低中回転域のトルク特性は街乗り向きに改善されているという。また、シート高は830mmで同じだが、セパレートハンドルの位置はわずかながら上方かつ手前にあり、そこからも公道走行への配慮が伺える。
初めて実車を目にし、しばし呆然とする。画像からも類い希な美しさは十分に伝わってくるが、流麗な面構成は直射日光下でより際立ち、そのオーラは圧倒的だ。いち早く乗りたい気持ちよりも眺めていたいという欲求が勝ったのは久しぶりと言っていい。
存在感はリッタークラスのスーパースポーツ以上だが、ライディングポジションは600cc並みにコンパクトであり、ほどよく絞られたセパレートハンドルと、下半身のスリムさがマシンとの一体感を高めている。バーエンドに設けられたミラーは視線の移動量こそ多いものの、後方確認という本来の目的ではカウルマウントのF3 800よりもはるかに上回る。
ライディングモードはレスポンスのいい順にレース、スポーツ、レインとなっており、これ以外にスロットルレスポンスやエンブレ、トラコンなどを任意に設定できるカスタムモードを用意する。798ccから148hp(150.1ps)という、ヤマハの初代YZF-R1並みの最高出力を発揮する水冷並列3気筒エンジンは、F3 800よりも低中回転域の特性が改善されているとはいえ、同系列のパワーユニットを搭載するドラッグスター800RR(141.9ps)よりも市街地ではわずかにトルクが薄いと感じる。だが、車体の軽さもあって不足はなく、レインモードでもキビキビと走ることができる。
スーパーベローチェ800 主要諸元
エンジン形式:4ストローク DOHC 12バルブ 3気筒 12バルブ
総排気量:798cc
圧縮比:13.3:1
始動方法:エレクトリック
ボア×ストローク:79.0mm×54.3mm
最高出力:108kW(148hp)/13,000rpm
最大トルク:88Nm(8.97kgm)/10,600rpm
エンジンマネージメント:
MVICS イグニッションシステム(MOTOR &VEHICLE INTEGRATED CONTROL SYSTEM)
4モード(スポーツ・レース・レイン・カスタム)
8段階調節トラクションコントロールシステム
EAS(クイックシフター アップ・ダウン)
ミッション:カセット式6速
クラッチ:湿式多板スリッパークラッチ
全長×全幅:2,030mm×730mm
ホイールベース:1,380mm
シート高:830mm
最低地上高:120mm
タンク容量:16.5L
車両重量:173kg(乾燥重量)
フレーム:ALSスチールパイプ ・トレリスフレーム
スイングアーム:アルミニウム ・シングルサイドスイングアーム
フロントサスペンション:MARZOCCHI φ43mm 倒立フォーク
リヤサスペンション:SACHS プログレッシブ シングルショック
ブレーキキャリパー(前/後):brembo 4ピストン ラジアルマウント/brembo 2ピストン
ブレーキディスク(前/後):φ320mmフローティング ダブル/φ220mmシングル
ホイール(前/後):アルミニウム鋳造 3.50″×17″ /5.50″×17″
タイヤ(前/後):120/70-17 / 180/55-17