東レは、リチウムイオン二次電池(LiB)用無孔セパレータの創出に成功した。本セパレータをウェアラブルデバイスやドローン、電気自動車(EV)向けなどの次世代超高容量・高安全LiBへの適用を目指す。

 LiBの需要は、携帯型電子機器、定置用蓄電池などの民生用途に加え、EVの普及拡大に伴う車載用途で急速に拡大している。用途の拡大に伴い、LiBには更なる高容量化・高エネルギー密度化が求められており、最も理論容量が高く、酸化還元電位(*1)が低い金属リチウム負極が注目されている。しかし、金属リチウム負極は充電時に金属リチウム表面からリチウムデンドライト(*2)が成長し、セパレータを突き破り、正負極がショートすることで電池の安全性の低下が起こるため、実用化に至っていない。




 リチウムデンドライトは、微多孔フィルムの空孔に沿って成長するため、セパレータの空孔をなくすことでデンドライトの成長を止めることができるが、リチウムイオンの透過性が大幅に悪化することから、リチウムデンドライト抑制とイオン伝導性の両立が不可欠。また、金属リチウム負極を用いた電池は、高容量化に伴い安全性への要求がより高くなるため、セパレータの耐熱性や熱寸法安定性の一層の向上が求められる。




 この課題に対して東レは、長年培ってきた高耐熱アラミド(*3)ポリマーの分子設計技術を駆使し、分子鎖間の間隙やリチウムイオンとの親和性を制御することで、高いイオン伝導性と高耐熱性を有する新規イオン伝導性ポリマーを創出した。これをポリマー無孔層として微多孔セパレータ上に積層したリチウムイオン二次電池用無孔セパレータとすることで、金属リチウム負極使用電池におけるデンドライト抑制とイオン伝導性の両立を実現した。




 本イオン伝導ポリマーで無孔層を設けたセパレータを使用した金属リチウム負極電池は、デンドライトによるショートを抑制でき、充放電サイクル100回で80%以上の容量維持率を確認している。東レは金属リチウム負極を用いた超高容量・高安全LiBをはじめとする次世代LiB分野への展開を目指し、早期の技術確立に向けて研究開発を加速していく。




 なお、東レは本技術について、11月20日(金)に開催される第61回電池討論会に発表を行う。

*1 酸化還元電位:


物質の酸化力および還元力を示す尺度。電池において、負極の還元電位が低く、正極の酸化電位が高くなると電圧を高くすることができ、電池の高容量化が可能となる。




*2 リチウムデンドライト:


電池の充電によって結晶成長するリチウムの樹枝状結晶。リチウムデンドライトが成長すると、バッテリー性能の劣化や内部でのショートを引き起こすことがある。




*3 アラミド


アラミド(芳香族ポリアミド)は優れた耐熱性と剛性を有する高機能ポリマーで、 フィルム分野においては東レが世界で唯一、ミクトロンブランドで製品化している。量産フィルムで最高の剛性を活かしてデータ保存テープとして広く使用されている他、ポリイミドに次ぐ耐熱性を有することから薄膜の回路材料にも採用されている。
情報提供元: MotorFan
記事名:「 東レ:リチウムイオン二次電池用無孔セパレータを創出|金属リチウム負極電池の安全化で電池容量の大幅向上に貢献