前回の記事からずいぶんと時間が経ってしまったが、1978年式ベスパP125Xのレストア作戦はしっかり継続中だ。今回は前に使って効果が認められたサビ取りケミカルで、腐食が激しいボディのフロアをキレイにしてみたい。

 世の中新型ウイルスの話題で持ちきりだ。GoToキャンペーンで各地は賑わいを取り戻したかに見えるが、まだまだ油断はならない。濃厚接触を避けつつ趣味に没頭するなら、ガレージや車庫に籠もってレストアをするのがオススメだ。これなら誰にも迷惑をかけないし、趣味心を満たすことができる。というわけでもないが、ベスパP125Xを手に入れ分解を始めたところまで紹介した。それから時間が経ってしまったので「途中で断念したのだろう」なんて思われてしまったかもしれない。ところがどっこい、まだまだ作業を進めたいと思っている。


 時間が空いてしまったのは、単に筆者の仕事が忙しくなってしまっただけのこと。コロナ禍で基本的にヒマだから、これから作業を再開したいと思う。ということでまずはボディのフロアからサビを落とさなければ先に進めない。そこで前回サビが見受けられたトランクに使って効果が認められたサビ取りケミカルを、フロアにも使ってみたいと思う。

作業をするため台の上にボディを載せる。

 以前の記事でボディからエンジンや足回りを取り外したことは紹介済み。重たいエンジンや足回りがないので、何とか一人でもボディを持ち運びできる。でも、そのまま作業するには長時間屈んでいなければいけない。これは腰にくる。何を隠そう筆者はCBX750Fという空冷4気筒エンジンを持ち上げギックリ腰になったことがある。それ以来、年に数度の頻度で「ギクッ」とやってしまうから腰に負担がかかる作業には慎重なのだ。


 そこでボディを台の上に載せて作業することにした。これなら椅子に座ったままでいられるから、腰にかかる負担は最小限で済むのだ。同じようなことをされるなら、台を用意することをオススメしたい。

ケミカルを使う前にフロアに残った塗装をできるだけ剥がす。

 準備ができたら、まずはサビを落としたいフロアから塗装を剥がそう。本来ならフロアレールも外して作業すべきだが、そのためにはリベットを外して再度打ち込むための工具が必要になる。この作業は意外に難しく、以前試した時は途中で断念したことがあるので、今回は初めから外さないことに決めていた。


 塗装を剥がすためのケミカルもある。だがこれ、使った後は十分な水洗いが必要になる。今回使うケミカルも使用後は水洗いが欠かせないため、何度も水洗いしなければならないことになる。ということで塗装剥がしも人力で行うことにした。


 剥がすといって難しいことはなく、ひたすらスクレーパーを使ってガシガシと塗装を剥がしていくだけだ。ただ時間と力は必要。また作業中に塗料の破片が飛び散るので、目を保護するためにゴーグルなどを着用するといいだろう。

塗装の下地であるサフェーサーが固くて剥がれない!

 慎重かつ力を込めてスクレーパーでガシガシやっていると、面白いように塗装は剥がれる。だが、その下に塗られているサフェーサー(本塗料の前に塗る下地塗装)が固くて歯が立たない。何個所かガシガシやってみると、意外なことにサフェーサーが残っている部分はサビに浸食されていないように思える。だったら、無理してサフェーサーを剥がさず、サビが出ている部分だけ露出すればいいのではないか。そう頭を切り替えて塗装が残った部分を重点的に剥がすことにした。

フロアを上から見て一番サビがひどいと思われる個所。

 作業をしているとサビの程度が場所によって異なることもわかる。今回の作業で上から見て最もサビが深刻と思えたのが、フロアの突起(トンネル)左のパネルの継ぎ目。ここは大きくえぐられるようにサビが進んでいる。このような部分はできるだけスクレーパーでサビの表面をこそぎ落とし、内部はワイヤーブラシなどで磨くように削っておくといいだろう。

フロアの反対側も同じように塗装もろともサビを落としていく。

 フロアの中央にはトンネルがあり、ここがボディの強度を生み出している。また内部にはワイヤーやハーネスが通っているため、外部にワイヤーが露出しないのもベスパの特徴。幸いにも強度が必要なトンネル部分にサビは少なく感じたので、フロアの反対側も同じように塗装を剥がしていく。


 右側はブレーキペダルの穴が空いていて、この周囲はサビがかなり激しい。鉄板がボロボロと取れてしまうのだ。また写真は剥がれた塗装を取った状態なのだが、こうしてみるとサビはフロアレールの下から浸食してきているとわかる。おそらく上からではなく下からの湿気によりフロアがサビ始め、フロアレールを留めているリベットの穴からサビが上まで進んできたのだろう。

フロアの上側にはジェル状のサビアウトを塗ることにした。

塗る範囲が広いので筆でサビアウトを伸ばしてみた。

 塗装の破片やサビの粉をフロアから落としたら、いよいよサビ取りケミカルの登場だ! まずフロアの上にはサビアウトを使ってみる。これはジェル状なので下に垂れにくいという特性を前回確認している。だから上側に垂れにくいサビアウトを塗ってボディをひっくり返しても、あまり垂れないということ。


 もう1つ手元にあるネジザウルスリキッドはスプレータイプの泡状なので、下に垂れやすい。フロアの下側を処理するにはボディをひっくり返す必要があるため、垂れにくいケミカルをフロア上に、垂れやすいケミカルはフロア下に、それぞれ使おうという作戦だ。

ネジザウルスリキッドをフロア下側にスプレーする。

 サビアウトをフロア上に塗りたくったら、ボディをひっくり返してフロア下側を表にする。ドンガラになったボディは軽いので、一人でも持ち上げることが可能。ということで台座の上でボディをひっくり返すのだが、塗ってあるケミカルは酸性。あまり肌に良いものではないので、必ずビニールなどの手袋を着用しておこう。


 台座の上で無事にひっくり返せたら、フロア下にはスプレータイプのネジザウルスリミッドをスプレーしまくる。すると、写真のようにサビが化学変化を起こして紫色に変色してくるはずだ。これは効果がありそうだと頬が緩んでくる。

数十分ケミカルを漬け置きしたら、水洗いしよう。

 スプレーの泡が化学反応を起こしてくると、見ているだけでもワクワクしてくる。そんな筆者は異常だろうか……。さておき、そのまましばらくケミカルは漬け置くと効果が高まる。説明書には10分から20分と書かれているが、できればトランクに使ったときと同様に30分以上は放置したい。だが、悲しいかな季節は秋。日が短くなっているので、あまりノホホンとしていると暗くなって気温が下がる。つまり丸洗いしても乾きにくくなるので、30分ほど漬け置いたら水洗いすることにした。


 写真が水洗いしたフロア上の状態。確かにサビが黒く化学変化していることは認められるものの、サビ内部の奥にはしっかり赤茶色の憎いやつが認められる。これはもしかしたらサビアウトを筆で薄く伸ばしたせいかもしれない。

水洗いしたフロア下側にもサビが残っている。

フロアレールの内側にはケミカルが残っている。

 悲しいかなフロアの下側もサビがまだまだ残っている。以前に使ったトランクと違いサビがそれほど深刻な状況ということだろう。ではどうする。今回はもう一度同じことを繰り返すことにした。ただ、水洗いしただけだと、フロアレールの内側などに水分とケミカルが残っていると考えられる。そこでもう一度ケミカルを塗る前にエアでフロアレールを吹いてみると、案の定アブクがプクプクと出てくる。念のため、フロアレールすべての内側にエアを吹いて、水分を飛ばしておいた。

2回目の結果は期待したほどでもなかった。

 サビアウトをフロア上に塗りたくる2度目は、できるだけ筆を使わずにジェルを万遍なく垂らすようにした。またフロア下にもネジザウルスリキッドをスプレーしまくる。この状態で放置して、さらに30分後にもう一度水洗いしてみた。


 その結果がこちらの写真。う〜ん、1回目とあまり大差ないような。ちなみに2度目の写真はエアを吹いてフロア上を乾燥させた状態。こう見ると、やはりサビの根を断つことはできていないと考えていいだろう。このまま放置すれば、サビがどんどん再発するはずだ。

施工2度目のフロア下。こちらはサビが1度目より落ちている!

 そのままボディをひっくり返してフロア下を確認すると、なんと上より下の効果が劇的なように感じられるではないか! 以前にトランクで使った時はネジザウルスリキッドよりサビアウトの効果が大きく感じたものだが、今回は逆の結果になったようだ。


 とはいえ、フロア上下ともにサビの芯が残った状態のままで今回はタイムアウトとなった。次回はさらなるサビ対策と同時に、穴が空いた個所を補修してみたいと思う。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 サビはボディのフロアから除去すべし!【ベスパレストア計画】