2019年から国内導入が始まった現行モデルのA6は5代目となる。3代目A6から採用が始まったシングルフレームグリルはサイズも随分大きくなり、もはやフロントマスクの3分の2がグリルではないかと思えるほど。それでいて下品なオラオラ系になることなく、シャープな造形のLEDヘッドライトと相まって地味すぎず出しゃばりすぎずない、スタイリッシュな顔つきにまとめられている。個人的には、アウディの現行セダンのなかで一番好みのデザインだ。
さて、今回試乗したのは、ディーゼルエンジンを搭載したA6アヴァント40 TDI quattroである。エンジンがかかっている状態で車外にいると、意外なほど「カラカラカラ」というディーゼルらしい音が聞こえてくる。しかし、いったん乗り込んでドアを閉めると、まるでノイズキャンセリングヘッドホンを装着したかのように、カラカラ音は聞こえなくなった。言われなければ、ディーゼルエンジンとは気づかないだろう。
そして走り出せば、縁の下の力持ちのように約1.9トンのボディを頼もしく加速させていく。3Lくらい排気量があるのかな、と思って確認してみると、排気量はたったの2.0L! スペック表の誤植かと思うくらい、低回転からモリモリと力を発揮してくれるので、じつに運転しやすい。
この新開発の直列4気筒2.0L直噴ディーゼルターボエンジンは、最高出力204ps(150kW)&最大トルク400Nm。マツダの2.2Lディーゼルが最高出力190ps(140kW)&最大トルク450Nmなので、最新のディーゼルエンジンとしては、スペック的に突出したものがあるわけではない。A6ディーゼルのスムーズな加速には、発進時などに5秒間のエンジンアシスト(最大2kW&60Nm)を行なってくれるという12Vマイルドハイブリッドの効果もあるようだ。
続いて驚かされたのが、乗り心地の良さである。箱根の荒れた道路の凹凸を、トンッと軽くいなしてくれる。程よい温度の温泉に浸かっているような気持ち良さで、心も身体もすっかり癒されてしまった。
この直前には、ビッグマイナーチェンジを受けたばかりのA4を試乗しており、その乗り心地の良さにも感銘を受けたばかり。しかし、こうして乗り比べるとA6に軍配を上げざるをえない。かたやA4 35TFSI advanced(FF)が523万円、こなたA6アヴァント40 TDI quattroが828万円と圧倒的な価格差があるので、当たり前といえば当たり前だが…。
乗り心地がいいからといって、ハンドリングが鈍重なわけではない。ステアリングを切ると鋭すぎず鈍すぎず、絶妙なレスポンスで反応してくれる。のんびり走りたい人も、たまには山道で元気に走りたい人も、どちらも満足できちゃいそうな絶妙な塩梅である。
自動車ジャーナリストのように鋭い分析能力を駆使して欠点を指摘できればいいのだが、正直なところ、短時間の試乗体験においては、まったく不満を覚えることはなかった。やはり私が見込んでいたとおり、最新のアウディA6もデキる男であった。
アウディA6 アバント 40 TDI quattro sport
全長×全幅×全高:4940mm×1885mm×1465mm
ホイールベース:2925mm
車重:1880kg
サスペンション:Fウィッシュボーン式Rウィッシュボーン式
駆動方式:AWD
エンジン
形式:2.0ℓ直列4気筒DOHCディーゼルターボ
型式:DF8(EA288 evo)
排気量:1968cc
ボア×ストローク:81.0×95.5mm
圧縮比:15.5
最高出力:204ps(150kW)/3800-4200pm
最大トルク:400Nm/1750-3000rpm
燃料供給:コモンレール式電子制御高圧噴射装置
燃料:軽油
燃料タンク:63ℓ
トランスミッション:7速DCT
燃費:WLTCモード 16.1km/ℓ
市街地モード 14.2km/ℓ
郊外モード 15.6km/ℓ
高速道路モード 17.6km/ℓ
車両本体価格:828万円
オプション:カラットベージュM 9万円、ドライビングパッケージ 40万円、パワーアシストパッケージ 18万円、リヤコンフォートパッケージ 16万円、ワイヤレスチャージング 3万円、アシスタンスパッケージ 14万円、Luxuryパッケージ 51万円(オプション合計151万円)
トータル 979万円