昨今、自動車市場で注目を集めているカテゴリーのひとつが『キャンピングカー』だ。かつては日本でキャンピングカーに乗ることは、富裕層のライフスタイルだったが、今は庶民も当たり前のように乗れる時代になった。しかし、キャンピングカーという概念は分かっていても、実は普通のクルマとは多くのことが異なっている。今回は、キャンピングカーをチェックする前に知っておきたいことをご紹介しようと思う。




TEXT●山崎友貴(YAMAZAKI Tomotaka)

旅のお供にキャンピングカー。2019年には保有台数が11万9400台まで増加。

休日に高速道路を走っていると、実に多くのキャンピングカーを見かける。大抵は「キャブコン(後ほど解説)」という形状のキャンピングカーだが、外観だけでは判別できない「バンコン(これも後ほど解説)」も走っているはずだから、日本でのキャンピングカーの普及率は相当なものと思われる。




キャンピングカーの業界団体である『JRVA(日本RV協会)』のデータによれば、キャンピングカーは2000年代に入ってから右肩上がりに増加。2005年には5万台だった保有台数が、2019年には11万9400台に増加している。数字を見ると、SUVなどには到底及ばないが、その特殊性を考えると順調にプラス成長していると言えるだろう。




キャンピングカーは200万円台から1000万円オーバーまでとプライスゾーンが広いが、最も売れている価格帯は500〜600万円くらいのモデルだ。一般の自動車市場で考えると、かなりの高級車ということになる。キャンピングカーは基本的にハンドメイドで、家具と言われる車中泊装備を手でインストールする。生産期間も1日や2日で収まらないことを考えれば、高額になってしまうのも致し方がないのである。




また、納期が非常に長く、新車を購入した場合には1年待ちは当たり前の世界だ。ビルダーと呼ばれる業者も大量生産をしたいだろうが、一般車のようにオートメーション化できないジレンマがある。それでものんびりと納車を待って、愛車が来るまでは普通車でキャンピングカーイベントに参加する人も多い。

2008年にリーマンショック、2011年に東日本大震災などの経済的影響があったにも関わらず、キャンピングカーの国内保有台数は右肩上がり。2019年位は11万9400台に達している。(日本RV協会調べ)

実はたくさんあるキャンピングカーの種類

ちなみにキャンピングカーと一口に言うが、日本には様々なタイプのキャンピングカーが存在する。まず二つに大別すると、ベースとなる車両の外観はそのままで、車内のみ車中泊ができるように改造した「バンコンバージョン(通称バンコン)と、ベース車両の一部のみを残し、居住空間はすべて作り直した「キャブコンバージョン(通称キャブコン)」がある。




キャンピングカーは欧米発祥だが、日本ならではの進化という部分も少なくない。特にバンコンは、今や日本のお家芸と言っていいカテゴリーだ。ハイエースやNV300キャラバンなどのワンボックスをベースに、ベッドやギャレーなどを組み込んでいる。メリットはキャンプに行かない時には普通のワンボックスとして使えることで、ボディサイズも手頃なので、駐車場事情が厳しい都市部でも手軽に所有することができる。




このカテゴリーは、ハイエースやNV300だけでなく、ライトエース/タウンエースやNV200、ボンゴ(本年生産終了)などの各種ワンボックスに加えて、ミニバンをベースにしたモデルも存在する。しかし、充実した装備をインストールしているモデルは、価格の安い商用車をベースにすることが多い。




バンコンというと、数年前までは簡易キャンパー的な立ち位置だったが、昨今は装備の充実化が急速に進み、中にはトイレ兼シャワールームを備えたものまで存在する。

ダイレクトカーズの「Retreat %DOOR」は、バンコンに分類できる。

キャンピングカー用のベースシャシーを使い、車両後部に甲羅のようにFRP製やアルミ製のキャンピングカーシェル(居住部分)を背負っているのが、キャブコンだ。バンコンに比べるとボディサイズが大きく、特に天井方向が広く取られている。そのため、バンコンでは中腰状態でも、キャブコンは立って車内を移動できるという大きなメリットを持っている。




また居住スペースがバンコンよりも広く、収納スペースなども多く取られている。トイレ兼シャワールームを備えているモデルも珍しくない。キャブコンにはちょっとした小屋のような雰囲気が漂っており、やはりいつかは所有してみたいと思わせるカテゴリーになっている。




しかし、持っているのは夢ばかりではない。まず車両の死角が多く、運転するには慣れがいる。さらにベースシャシーに対して上物が大きいため、空気抵抗や高重心を考慮しないとならない。また、多くのキャブコンのベースシャシーとなっているトヨタの「カムロード」は、エンジンが2Lガソリンと3Lディーゼルターボなのだが、これが十分な動力性能とは言えない。これらのことから、高速道路は時速100km/h未満での走行を強いられることとなり、スピーディな長距離移動はまず無理を考えた方がいい。

ボンゴをベースにしたキャブコン、AtoZのAlen30。

キャンピングカー市場を支えているファクターが買い替え需要だが、昨今は国産キャブコンからさらの上のカテゴリーに替える人が少なくない。それが「バスコンバージョン(通称バスコン)」や「フルコンバージョン(通称フルコン)」、「セミコンバージョン(通称セミコン)」というカテゴリーだ。




バスコンはその名の通り、マイクロバスや大型バスに装備をインストールしたもので、もはやちょっとした家が動いているようなモデルが多い。中には中型免許が必要なモデルもあるため、所有できる人が限られるが、日本でも意外とユーザーが多い。




フルコンやセミコンは、スケルトンの専用シャシーを使って、ボディを完全オリジナル、もしくは一部製作したモデルである。キャンピングカーの専用シャシーは欧州製がメインで、フィアットやメルセデスベンツのシャシーを使うことが多い。輸入車のため、独特の雰囲気と高級感を持っており、昨今は国産キャブコンからの乗り替え組が増えている。

RV BIGFOOTの「ACSエテルノオクタービアMパネル仕様」はバスコンだ。

日本独自のキャンピングカーと言えば、「軽キャンパー(通称軽キャン)」だ。軽バンに装備をインストールしたモデルや、軽トラにキャンパーシェルを載せたモデルある。コンパクトなサイズの上に、価格が安いため、キャンピングカー入門者が購入することが多い。ただし、居住スペースが限られるため、やはり大人2名で長期間旅するのは少々きつい。夫婦旅を楽しむために購入するリタイヤ組をよく見かけるが、より広いキャブコンに乗り替える人が少なくない。

軽キャンパーで人気モデルの一つがオートワンの「給電くん」。

この他、自走できないキャンピングトレーラーというカテゴリーがあるが、総重量が750kg以下の場合は牽引免許を必要としない。キャンピングトレーラーは、牽引車が別途必要になり、またバックの時などは独特の運転技術が必要になるが、実はメリットが多い。



まず、今乗っているクルマを買い替えることなく、オートキャンプが可能になる。またキャンピングトレーラーは自走式に比べると価格が安く、100万円台でかなりゴージャスな装備のモデルが購入できる。居住空間がキャブコンよりも広いというのも魅力だ。また出かけた先で、トレーラーのみをキャンプ場に置いておき、ヘッドの方は自在にドライブできるという利点もある。普段の保管場所も、普通車枠の駐車場でOKだ。今後、日本でも需要が伸びるカテゴリーと言えるだろう。

キャンピングトレーラーの「エメロード376 Vエディション・プレミアム」。トリガノがフランスから輸入・販売している。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 【キャンピングカーの基礎知識】キャブコン、バンコン、軽キャン...キャンピングカーの種類はいろいろ。メリットとデメリットを紹介