間もなく正式発表されるスバル新型レヴォーグ。袖ヶ浦フォレストレースウェイで行なわれた試乗会では、新型のGT-HとSTI Sport、そして現行レヴォーグ(1.6ℓモデル)の比較試乗が行なわれた。走りの評価のスペシャリスト、瀬在仁志はどう感じたか?




TEXT◎瀬在仁志(SEZAI Hitoshi)

新型レヴォーグ STI Sport 全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm ホイールベース:2670mm

日本自動車研究所でのレヴォーグ・プロトタイプの試乗では、アイサイトXの出来の良さに驚かされた。コーナーや料金所手前での減速制御、レーンキープ性能、追従性の良さなど、どれをとっても自動運転が目前まで近づいていることを予感させるものだった。


今回は待望の運動性能を試すべく、サーキットでの試乗である。ステアリング操作から解放されることに喜びを感じていた前回とは異なり、いかにドライバーの操作に対して、クルマが応えてくれるかが今回のポイントだ。




新型レヴォーグはインプレッサをベースに大幅にアップデートさせた、スバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)や、新開発の1.8ℓ直噴ターボエンジン、多くの部品を新設計した国内初投入の新型リニアトロニックの採用など話題満載。パッケージング的にもホイールベースの20mm延長による後席居住性の向上など、走りの基本性能ばかりではなく、ワゴンボディの使い勝手の良さもアップ。久しぶりの大物デビューといった印象である。




最初に乗ったのはSTI Sport。ZF製の電子制御サスペンションの3モード違いの確認のためにコンフォートから試してみる。コースインしてまず最初に思ったのは、前回日常レンジで走行した時と同様に静粛性が高い。ということ。サーキットで全開で加速していっても、エンジン本体の雑音が少なく、足元からのロードノイズも気にならない。路面がきれいなこともあるが、エンジンもサスペンションもフリクションが少なく、振動が元となる音の発生が抑えられている。

STI Sportのダンパーはスバル初の電子制御式ZF(ザックス)製を採用する

ステアリングは左右90度の範囲で軽く、大きくノーズが反応することも少ない。切った分はボディが深く沈み込み、外からの力を優しく包み込む感じだ。それでもロードホールディング性が失われることがなく、スキール音も少ない。4WDであることに加えて、ボディがしっかりとしていることで、深いロールにもかかわらず、接地感が保たれている結果だ。




スポーツモードではステアリングの締まり感が出てきて、ノーズの動きとリンクしてくる。沈み込みが抑えられ、快適性のなかに動きの正確さがある。旋回中の安定感はロール進行が穏やかになった分だけフロントの入りはよく感じる。リヤが伸びあがってこないことも無駄な動きがなくていい。もしかしたらボディのしっかり感に加えて、フロントの軽さもあるかもしれない。一体感を持ってスッとノーズがインを指す感じは、新型レヴォーグのバランス性能の良さを表している。

その証拠に横滑り防止装置のVDC(ESC)は結構攻め込んでいっても介入してくることがない。このVDCユニットと組み合わされる電動ブースターも重めのペダルフィールながら、リニアな減速感を引き出すことができていた。接地性の良さがABS介入も深くでき、ブレーキ本来の性能を引き出してくれている。




「スポーツ+」では、ボディのフラット感が強調される一方で、Gの抜けどころが少なくタイトコーナー出口ではややプッシュアンダー気味。駆動力がレスポンスよく立ち上り、蹴りだし感は好印象なため、高速サーキットや低ミュー路でこそ本領発揮するに違いない。パワーフィールはサクサクと高回転域でシフトアップしていくキレの良いリニアトロニックによって、トップエンドの力強さをしっかりと引き出してくれている。

剛性感の高いボディと、フリクションが少なく、たっぷりとしたストロークを持つサスペンションによって、コンフォートからスポーツ+まで幅広く味付けができていることこそ新型レヴォーグの高い性能の証。エンジンのスムーズさとともに従来の荒々しさはすっかり影を潜め、快適性も向上。モードを選べばSTiならではの高次元の走りを楽しめるうえに、コンフォート性能さえもカバーしてしまう懐の深さを持っている。

型式:CB18 形式:水平対向4気筒DOHCターボ 排気量:1795cc ボア×ストローク:80.6×88.0mm 圧縮比:10.4 最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm 最大トルク:300Nm/1600-3600rpm 燃料供給方式:筒内直接噴射 使用燃料:無鉛レギュラーガソリン

スバル・レヴォーグ STI Sport EX




■ボディサイズ


全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm


ホイールベース:2670mm


車両重量:1580kg


乗車定員:5名


最小回転半径:5.5m


燃料タンク容量:63ℓ




■エンジン


型式:CB18


形式:水平対向4気筒DOHCターボ


排気量:1795cc


ボア×ストローク:80.6×88.0mm


圧縮比:10.4


最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm


最大トルク:300Nm/1600-3600rpm


燃料供給方式:筒内直接噴射


使用燃料:無鉛レギュラーガソリン




■駆動系


トランスミッション:CVT


駆動方式:フロントエンジン+オールホイールドライブ




■シャシー系


サスペンション形式:FマクファーソンストラットRダブルウィッシュボーン


ブレーキ:FベンチレーテッドディスクRベンチレーテッドディスク


タイヤサイズ:225/45R18




■燃費


WLTCモード:13.6km/ℓ(社内測定値)


JC08モード:16.5km/ℓ(社内測定値)




※数値はすべてプロトタイプのもの。

GT-Hの走りは?

GT-Hのダンパーはコンベンショナルなタイプ

電子制御サスを持たないGT-Hの走りはフロントの重さを感じさせず、スッと初期に入っていってくれる印象は変わらぬものの、荷重移動をゆっくりと行なうことができ、STi同様ワゴンボディの重さを感じさせない。深く攻め込んでいくとボディはぴたりと収まり、駆動力も落ち着いていて、ライントレース性をキープ。

新開発CB18型1.8ℓ水平対向4気筒ターボのスペックは全グレードで共通

サス設定的にはSTI Sportのスポーツモードより少しだけ「スポーツ+」寄りといった感じ。走行モードに悩むことなく、従来のレヴォーグの走りをそのまま受け継ぎながら、シャシーの進化で静粛性や快適性を身に着けたモデルといえる。もっともわかりやすく進化の痕を味わうなら、GT-H。幅広い走りの性能とスポーツ4WDの強力なトラクションと安定感によるスバルの走りを極めたいならSTI Sport。それでも決してコンフォート性能を失ってはいないから、STIですべてを楽しんでしまうという、選択肢もあり。




完成度が高くスキのないクルマ作りに、車両選択で大いに頭を悩ませてしまうことだけが今度のレヴォーグ一番のウィークポイントに違いない。

タイヤサイズ:225/45/R18 これはSTI SportとGT-Hで共通

スバル・レヴォーグ GT-H


■ボディサイズ


全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm


ホイールベース:2670mm


車両重量:1570kg


乗車定員:5名


最小回転半径:5.5m


燃料タンク容量:63ℓ




■エンジン


型式:CB18


形式:水平対向4気筒DOHCターボ


排気量:1795cc


ボア×ストローク:80.6×88.0mm


圧縮比:10.4


最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm


最大トルク:300Nm/1600-3600rpm


燃料供給方式:筒内直接噴射


使用燃料:無鉛レギュラーガソリン




■駆動系


トランスミッション:CVT


駆動方式:フロントエンジン+オールホイールドライブ




■シャシー系


サスペンション形式:FマクファーソンストラットRダブルウィッシュボーン


ブレーキ:FベンチレーテッドディスクRベンチレーテッドディスク


タイヤサイズ:225/45R18




■燃費


WLTCモード:13.6km/ℓ(社内測定値)


JC08モード:16.5km/ℓ(社内測定値)


 




※数値はすべてプロトタイプのもの。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 スバル新型レヴォーグ グレード選択に迷ったら | スポーツ4WDの強力なトラクションと安定感によるスバルの走りを極めたいなら「STI SPORT」だ