REPORT●川島秀俊
エンジンパワーを高めるには、より高回転化と高効率化が求められる。定番のチューニング手法といえるものだが、高強度のクランクシャフトに交換して高回転時の負荷に対応しつつ、ピストンプロフィールを変更してローフリクションを実現。吸気経路は大幅に見直し、スロットルボディをφ40mmからφ44mmに拡大することで、高回転時のパワー特性を大幅に高めている。排気系では、キャタライザーを大型化して排気効率のアップと環境対策を両立。エキパイの肉厚を最適化することで、重量増は最小限に抑えられている。
注目すべきは、これらの仕様変更が単にパーツ単位でのブラッシュアップではないということだ。吸気側のポート形状はスムーズになるよう、スロート部に非軸線加工を実施。容積を2.2%増加させ、エアファンネル長も最適化することで総合的に吸気性能を高めている。これに合わせ、バルブタイミングのインレット側を5°遅らせ、エキゾースト側を5°早めてカムプロフィールを高速寄りにシフト。カムシャフトやバルブスプリングの材質強度も高められ、安心して高回転でのパフォーマンスが発揮できるのだ。
エンジンチューンに詳しい人なら、これらの内容をアフターパーツと職人の手作業で実施すればどれだけ高額になるか理解できることだろう。さらに新型CBR600RRの凄いところは冷却系にも及んでおり、ヘッド周りのウォータージャケットを改良して高温にさらされるエキゾーストバルブとプラグ周辺の冷却効率を向上。従来より7mm長いロングリーチプラグを採用する設計は、CBR1000RR-Rと同じ構造となっている。
エンジンパワーと直接の関係はないが、今や高性能モデルで定番化したアシストスリッパークラッチも新たに採用。従来比で32%軽減されたレバー操作荷重や、急激なエンブレによる後輪ホッピングを軽減できるスリッパー機能は、高性能エンジンを楽しむうえで重要な要素といえる。
これらエンジンの改良ポイントを見てみると、新型CBR600RRがどれほど王道のチューニングを受けたのかがよく分かる。メーカーの技術者と現役トップライダーが「勝つため」に煮詰めた珠玉のパワーユニットは、あらゆるライダーのスポーツマインドを刺激することだろう。
車名・型式:ホンダ・2BL-PC40
全長×全幅×全高(mm):2,030×685×1,140
軸距(mm):1,375
最低地上高(mm)★:125
シート高(mm)★:820
車両重量(kg):194
乗車定員(人):2
燃料消費率(※6)(km/L):
国土交通省届出値…定地燃費値(※7)(km/h)23.5(60)
WMTCモード値★(クラス)(※8)…17.3(クラス3-2)
最小回転半径(m):3.2
エンジン型式・種類:PC40E・水冷 4ストローク DOHC 4バルブ 直列4気筒
総排気量(㎤):599
内径×行程(mm):67.0×42.5
圧縮比★:12.2
最高出力(kW[PS]/rpm):89[121]/14,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):64[6.5]/11,500
燃料供給装置形式電子式<電子制御燃料噴射装置(PGM-DSFI)>
始動方式★:セルフ式
点火装置形式★:フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式★:圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L):18
クラッチ形式★:湿式多板コイルスプリング式
変速機形式:常時噛合式6段リターン
変速比:
1速…2.615
2速…2.000
3速…1.666
4速…1.444
5速…1.304
6速…1.208
減速比(1次★/2次):2.111/2.562
キャスター角(度)★/トレール量(mm)★:24°06´/100
タイヤ:前…120/70ZR17M/C(58W)、後…180/55ZR17M/C(73W)
ブレーキ形式:前…油圧式ダブルディスク、後…油圧式ディスク
懸架方式:
前…テレスコピック式(倒立サス ビッグ・ピストン・フロント・フォーク)
後…スイングアーム式(ユニットプロリンク)
フレーム形式:ダイヤモンド
◼道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
■製造事業者/本田技研工業株式会社
(※6)燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります
(※7)定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です
(※8)WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます