TEXT●今井優杏(IMAI Yuki)
往々にして天の邪鬼の自動車評論家は、時として「欲しい」と「最高」は別の評価軸だったりもするもので(ちょっと手間がかかる子くらいのほうが可愛かったりもして!)、「最高だった!」の位置づけが難しいのですが、今回は初乗りの印象がとにかく鮮烈だった3台を選びました。
第3位「え?ベントレーがSUV? しかもこんなにデカイやつ?」と世界を驚かせたベンテイガは、その大きさのせいで「さぞや愚鈍なんだろうなぁ」という思い込みがあったため、ワインディングロードに持ち込んだときの裏切られ方が最高だった一台。
あの車高、そしてグラマーすぎる車重をして、80km/hでコーナーに突っ込んでなお、涼しい顔で駆け抜ける運動性能の高さに本気で慄きました。しかもキャビンは超フラットで無音のままなんだから!
重力や横Gを完全に無視した挙動は、まさに魔法の絨毯。今はカジュアルで廉価なV8をラインナップする同車ですが、W12気筒の、みっちりと隙間のないトルクや底の見えない加速など、最高だった!と思わせるにふさわしい一台でした。
2位のスマートは、どの世代のものもどれでも魅力的。ハンドリングも世代ごとに個性が違うし、“どれが一台”を決められないクルマです。メルセデス・ベンツ傘下に入ってからは質感も高級車然としてしまったけれど、それはそれでやっぱり魅力的だしね。あの極端に短いオーバーハングから生まれる、圧倒的な接地感とオン・ザ・ロード感に、いつも夢中にさせられちゃうのです。
これって完全に唯一無二のもの。時代を遡るに従って、前輪の上に跨ってるかのような、まるでそのまま前転しちゃうんじゃないの?みたいな、ピッチング挙動丸出しのキワモノ感が増していくのも面白い。
なので、どの世代も、とは言ったけれど、やっぱ全長の短い二人乗りモデルが大好きです。現行のフォーフォーはちょっと大人すぎるかな。
1位のジョンクーパーワークス(JCW)はひとつ前のモデルのものを(2015年日本導入モデル)。このクルマに試乗した時の喜びは鮮烈! 今でも鮮明に覚えています。
2リッター4気筒のエンジンのパワフルなこと、そしてこのとき採用された6速AT(ティプトロニック)との相性の絶妙さ。やはりJCWにはレーシングなスペックやトルクを求めてしまうけれども、この世代のはヤンチャさがちょうど一般道を走るのに程よかったのでした。
箱根のワインディングロードを、何回も何回も駆け抜けたくなるような、純粋に良いハンドリングカーだなって感激しました。内装もようやくナビ関係が整備されて、欧州モデルと変わらない使用感になったのも嬉しかったし。
現行のはもう少し、大人になっちゃった感があって、好きなクルマではあるんですが、このときの印象ほどではない感じです。