1982年12月にチャップマンが逝去した後、この個体は1983年7月にロータスから販売され、以来個人所有にて1万1000マイル(約1万7700km)走行。その間、定期的なメンテナンスを受けている。
この個体は、メタリックシルバー・ダイヤモンドにボディがペイントされており、サイドにはレッドのストライプと「turbo esprit」が表示されている。
追加されたオプションアイテムのリストには、フルレッドレザーのインテリアやエアコン、ヘッドライナーに組み込まれたパナソニック製オーディオシステムが含まれている。
追加されたのはそれだけではない。チャップマンは快適さや運転の楽しみをさらに向上させるために、いくつかのカスタマイズをオーダーしている。その代表例がエスプリとしては初となるパワーステアリングだ。これに加えて、サスペンションの仕様変更とローダウン、ブレーキの変更、BBS製の鍛造アルミホイールも特別に装備していた。
また、この個体については歴史的なトピックもある。車両の初登録に先立つ1981年の8月5日、当時英国の首相を務めていたマーガレット・サッチャーがノーフォーク州を訪れた際に、チャップマンは彼女をロータス・カーズのへセル本社に招くことに成功した。そこでチャップマンはサッチャーに最新のロータス・モデルラインナップをアピールすべく、この個体を活用。サッチャーは本社敷地内のテストコースでこのターボ・エスプリをテストドライブした。このときの様子を地元メディアは、「鉄の女ことサッチャー首相が『このままどこかに乗って行きたくなっちゃうわね』と語った」と報じた。
なお、このプログラムのスタートに際して、フィル・ポップハムCEOは次のように述べている。
「ロータス・アーカイブは完全にカタログ化された情報データベースであり、あらゆる時代のあらゆるロータス車に関する豊富な知見に基づく事実をご提供できます。(このプログラムは)世界中のロータス・オーナーにぴったりの贈り物となるでしょう」