・マルチビューカメラシステム
・プレミアムサウンドシステム、
・Hondaパーキングパイロット(後述)
・100AC電源
・センターカメラミラーシステム
・フロントガラスデアイサー
・17インチアルミホイール
最近は各自動車メーカーが欧州で強化される燃費規制を見越してEVの開発・販売に取り組んでいる。そこで競われている性能の一つが、航続距離だ。一充電あたり何km走ることができるか、というのがEVではとかく重視されがちである。
ホンダは、ホンダeのコンセプトを「街なかベスト」と設定し、航続距離を割り切ることとした。そうすれば、、バッテリー容量を小さくすることができ、サイズや重量、コストなどの面で有利となる。さらにホンダeは、デザインやダイナミックパフォーマンス、コネクテッドなどの付加価値で既存のEVと勝負しようというわけだ。
では、EVの世界では先輩にあたる日産リーフと比べつつ、ホンダeの特徴をおさらいしてみよう。
まずはボディサイズから。「都市型コミューター」を自称するホンダeの全長は、4mを下回る3895mmとかなりコンパクト。同社のフィットよりも100mm短い。それでいてホイールベースはホンダeもフィットも2530mmと同一だ。ホンダeは前後のオーバーハングが短いのだが、この効率的なパッケージングはEVならではのものと言えるだろう。全幅は1750mmと3ナンバーサイズとなる。全高は1510mmだ。
リーフは、全長4480mm(ホイールベース2700mm)、全幅1790mm、全高1540mmとホンダeよりも二回り大きい。ボディサイズでカテゴライズするならば、ホンダeはAセグメント寄りのBセグメント、リーフはCセグメントと言えるだろう。
そうしたボディサイズの違いは、室内の広さにも影響している。室内寸法はホンダeが長さ1845mm、幅1385mm、高さ1120mmなのに対して、日産リーフは長さ2030mm、幅1455mm、高さ1185mm。リーフの方が余裕があるのは間違いないが、ホンダeの後席も一般的な体型の大人が乗るには不自由ない。ただし、ホンダeの後席は2人掛けで乗車定員は4名となる。
ホンダeがボディサイズの割りに室内空間が広い秘密は、パワートレーンのレイアウトにある。リーフが一般的なフロントモーター・フロント駆動なのに対して、ホンダeはリヤモーター・リヤ駆動なのだ。そのおかげもあってホンダeは、最小回転半径4.3mを実現している。リーフの最小回転半径は5.2m(17インチホイール装着車は5.4m)、フィットですら4.9mと聞けば、ホンダeの小回り性能がいかに驚異的かがおわかりだろう。「街なかベスト」を謳うホンダeの面目躍如だ。
サスペンションは、ホンダeが前ストラット/後ストラットの四輪独立懸架を採用。リーフは前ストラット/後トーションビームだ。
ホンダeの大きな魅力は、先進的な装備の数々だ。ドアを開けて乗り込むと、目の前には5つのディスプレイが水平に並んでいる。左右はサイドカメラミラーの映像を映す6インチモニター、センターには12.3インチのモニターが2つ、そしてメーター部には8.8インチモニターが水平に並ぶ様は圧巻だ。
リーフのインテリアは、ホンダeと比べるとコンサバティブだ。モニターは運転席前のアナログ速度計の横に置かれる7インチタイプと、センター部の9インチタイプの2つのみ。
また、ホンダeはコネクティッド機能にも力が入っている。クラウドAIによる音声認識で情報を提供してくれるアシスタント機能、スマホをデジタルキーとして解錠・施錠だけでなくパワーオンまで行える機能、車内Wi-Fiなどが目新しい。
リーフには「ニッサンコネクト」が搭載されており、車内Wi-Fiがオプションで利用できるほか、スマホを使ってリモート操作でエアコン操作や充電開始が可能。しかし、この辺りの技術は日進月歩なだけに、最新のホンダeの方が多機能だ。
EVの場合、どうしても比較の俎上に上りやすい航続距離はどうだろうか。ホンダeのバッテリー容量は35.5kWhなのに対して、リーフは40kWhと62kWh、2タイプのバッテリーサイズが用意されており、一充電走行距離はそれぞれ以下の通りだ。
【一充電走行距離】
ホンダe:308km(JC08モード)/283km(WLTCモード)
ホンダeアドバンス:274km(JC08モード)/259km(WLTCモード)
日産リーフ(40kWh車):400km(JC08モード)/322km(WLTCモード)
日産リーフ(62kWh車):570km(JC08モード)/458km(WLTCモード)
航続距離に関しては、日産リーフの圧勝である。ホンダeは最初から航続距離では勝負しないことを明言しているので、この結果は致したかないところだろう。
ホンダeは、そのディスアドバンテージを優れた急速充電性能でカバーする。公共の急速充電施設は1クール30分となっていることが多いが、ホンダeは30分の急速充電で202kmの走行が可能となる。一方、リーフの40kWh車は144km、62kWh車は137kmだという。ホンダeではバッテリー専用ヒーターや、ラジエターによる水冷システムでバッテリーの温度管理を行っていることが効いているようだ。
モーターは、ホンダeはアコードハイブリッドで使われているものを流用。ただし、パワー・コントロール・ユニット(PCU)をモーターの上から横に移動して、コンパクト化を実現している。また、標準モデルとアドバンスではスペックに違いがあり、アドバンスの方が最高出力・トルクともに上回っている。一充電走行距離で、両者に違いがあったのはそのためだ。
では、リーフとモーターの諸元を比べてみよう。
【モーター諸元】
ホンダe:最高出力136ps(100kW)・最大トルク315Nm
ホンダeアドバンス:最高出力154ps(113kW)・最大トルク315Nm
日産リーフ(40kWh車):最高出力150ps(110kW)・最大トルク340Nm
日産リーフ(62kWh車):最高出力218ps(160kW)・最大トルク340Nm
実は、両者の車両重量は、バッテリー容量の違いから想像するほど大きな差がない。ホンダeが1510〜1540kgで、リーフは40kWh車が1490〜1520kg、62kWh車が1670〜1680kgだ。となると、パワーがほぼ同等のホンダeアドバンスとリーフの40kWh車が同等の加速力、ダントツでハイパワーなリーフの62kWh車が最速…と推測できる。
ホンダeとリーフで共通するのは、アクセルペダルだけで加減速をコントロールできること。アクセルペダルを戻すと、ブレーキをかけたのと同程度の減速が可能だ。ホンダeでは、パドルシフトを操作することによって、減速度合いをコントロールできるのがユニークである。
現行型リーフが登場した際に話題となったのは、自動駐車支援システムだ。ステアリングを制御してくれるだけでなく、ブレーキもシフト操作(前進→後退の切り替え等)もクルマが行ってくれるというもの。ホンダeも同様のシステムを採用しているが、斜めになっている駐車枠にも対応しているのと、縦列出庫を支援してくれるという違いがある(リーフは出庫は支援しない)。
最後に、気になる価格を比較してみよう。
【車両価格】
ホンダe:451万円
ホンダeアドバンス:495万円
日産リーフ(40kWh車):332万6400円~418万9900円
日産リーフ(62kWh車):441万1000円~499万8400円
ホンダeの価格は、決して安くない。はっきりとリーフの方が安い価格帯だ。また、両者はクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金(CEV補助金)を受けられるが、補助金の金額は一充電あたりの走行距離によって計算されるため、補助金額はリーフの方が多い。そうすると、ますます両者の支払い金額差は広がることとなる。
【CEV補助金額】
ホンダe:23万6000円
ホンダeアドバンス:16万8000円
日産リーフ(40kWh車):42万円
日産リーフ(62kWh車):42万円
しかもリーフの方が大きくて広くて長い距離を走ることができるのだから、「ホンダe、大丈夫か!?」と外野は勝手に心配してしまう。だが、そんなことはホンダも百も承知で、リーフが2019年に国内で約2万台を販売したのに対して、ホンダeの年間販売台数計画はわずか1000台。ホンダもホンダeがバカ売れするとは思っていないのである。
ホンダeは、リーフとは別の土俵で勝負をしようとしている。ホンダeは、ホンダが考える未来のモビリティーの技術のショーケースなのだ。それは、高級サルーンのレクサスESでさえオプション設定(22万円)としているサイドミラーカメラを、ホンダeでは量産車として初めて標準採用化したことからもうかがえる。既存のクルマと同じ物差しでは、ホンダeの真価を測ることはできない。
ホンダeは、ホンダのEV計画の一里塚だ。これから、ホンダがどのようにEVを展開しようとしていくのか。ホンダeを見ていると、EVにおいてもホンダらしさが存分に発揮されており、いちクルマ好きとして嬉しくなってくるのは確かである。