リーン燃焼の前に、まずエンジンの基本骨格から見てみよう。もちろん、直列4気筒と水平対向4気筒というエンジン形式の違いはある。ところが、まったく同じ数値になる指標もある。
S/B比である。
S/B比とは、ストロークをボアで割った数値で、1ならいわゆる「スクエア」、1より小さい場合は「ショートストローク」、そして1より大きい数値なら「ロングストローク」と言われる。かつては、ショートストローク=高回転型、ロングストローク=トルク重視型などと言われたが、現代のエンジンは効率を重視してロングストローク化するのが最新の手法だ。冷却損失の小ささが、最新エンジンがロングストローク化する理由である。
S/B比
CB18型:1.092(ボア80.6mm×ストローク88.0mm)
SKYACTIV-X:1.092(ボア83.5mm×ストローク91.2mm)
と同じ数値になった。
通常、エンジンの理論空燃比は「14.7」。これを「ストイキ(ストイキオメトリ=stoichiometry)」と呼ぶ。重要比でガソリン1に対して空気14.7で燃やすと完全燃焼するから、理想的な空燃比と言える。これをλ=1と呼ぶ。
新エンジンであるスバルのCB18型は、負荷率約40%かつ2400rpm以下の領域で「λ=2」で燃焼させる。
マツダのSKYACTIV-Xも低/中負荷かつ自着火に適した環境下でリーン燃焼させる。SKYACTIV-Xの場合は「λ=2以上」としている。
SKYACTIV-Xは、リーン燃焼を「SPCCI」と呼ぶ燃焼方式で実現している。
SPCCIとは「火花点火制御圧縮着火」のことで、スパークプラグで火を着けた上で圧縮による自着火をコントロールして燃焼させるという革新的な燃焼方法だ。
スバルのCB18型のリーン燃焼は、マツダとは違うアプローチを採る。薄くて火が着きにくい、着いても燃え広がりにくいリーン燃焼を、自着火ではなくコンベンショナルな方法(点火プラグと直噴インジェクターを可能な限り近づける、燃焼室内のタンブル流の強化など)で実現した。
両者の違いは圧縮比に表れている。SKYACTIV-Xは、ガソリンエンジンで世界最高の16.3(欧州仕様、国内仕様は15.0)。スバルCB型は10.4と「通常の圧縮比」で対応している。燃料はSKYACTIV-Xがハイオクなのに対してCB18はレギュラー対応だ。
今度はBMEPという指標で比べてみよう。
BMEPとは「正味平均有効圧」=Break Mean Effective Pressureのこと。エンジンの排気量によらずに、トルク特性を横並びに評価するために用いられる理論的な数値だ。
最大トルク÷排気量×4π×10で求められ、単位は「bar」である。ガソリンNAは10-13bar程度、ガソリンターボは18-24bar程度、ディーゼルターボでは、18から30barを超えるものまである。
次に燃費を比べてみよう。
燃費に関しては車重、前面投影面積、トランスミッションなどさまざまな要因によるものなので、参考程度に見てほしい。
新型レヴォーグのGTモデルの車重(参考値)は1550kg
これに合わせて
マツダCX-30 X PROACTIVEを選んだ。車重は1550kgと同一だ。
どちらもカップリング式フルタイムAWDモデル。トランスミッションは、レヴォーグがチェーン式CVT(リニアトロニック)でCX-30が6速ATである。
WLTCモード燃費は
レヴォーグGT:13.7km/ℓ(参考値)
CX-30:15.7km/ℓ
となった。燃費に関してはSKYACTIV-Xにアドバンテージがありそうだ。しかし、SKYACTIV-Xには、24Vのマイルドハイブリッドシステムが使われていることも付け加えておかないと公平ではないかもしれない。
パワートレーン単体のコストを比較するのは難しいが、おおよその価格が発表されているレヴォーグの場合は、現行(1.6GTアイサイト=291.5万円)に対して、新型(GT=308万円程度)となっているから、5~6%の価格アップに収まっている。いっぽうのSKYACTIV-Xエンジン搭載モデルの価格(CX-30 X PROACTIVE)の価格は353.1万円だ。現状では「高圧燃焼直噴システム/スーパーチャージャー/各種センサー/24Vマイルドハイブリッド」などを採用するSKYACTIV-Xの価格が高い。
ただし、SKYACTIV-XもCB18も、世界的に見て最先端のエンジンであるのは間違いない。「内燃機関でどこまでいけるか」を両社のエンジン開発者たちは突き詰めているのだろう。この生まれたばかりのふたつエンジンは、生まれたばかり故、そのポテンシャルのすべてを見せてくれているわけではない。これからまだまだ伸び代(しろ)のあるエンジンだ。