TEXT◎鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi〕PHOTO◎山上博也(YAMAGAMI Hiroya)
スバル新型レヴォーグが搭載するエンジンは、完全新規開発した水平対向4気筒ターボである。2010年にデビューしたFB型から10年、2020年代のスバルを支える主力エンジンの型式名は「CB18型」となる(パワースペック等は「参考値」である)。
見所の多いCB18エンジンを可能な限り詳細に解説したい。
まずは、型式名だ。「EJ型」「EE型」から「FB型」「FA型」と「EからFへ」の次なので、「G」が頭文字になると予想した人もいるだろう。新型エンジンは「CB型」と名付けられた。現行主力エンジンのFB型は「Future Boxer」の意味が込められていた。今回の新エンジン、CBは「Concentration Boxer(Concentration=集中、濃厚)」の頭文字だという。
「FBを開発してから約10年経つのですが、その間にどうしてもやりたかったことが溜まってきていました。とにかくそれを全部つぎ込んでやろう、我々の持てる技術をすべて結集しましたという意味を込めてCBにしました」と開発エンジニアは話してくれた。
本稿はまずCB型エンジン解説の前編として、その骨格について詳解する。
まず、大きく変わったのは、エンジンの骨格を決める「ボアピッチ」が大幅に短縮されたことだ。
EJ型からFB/FA型まで続いた113.0mmというボアピッチがCB型では98.6mmに短縮された。実に14.4mmの短縮である。ボアピッチが短くなったことで、クランク長もFB型の350.5mmから315.9mmへと34.6mmも短くなった。
これはつまり、エンジンの全長が短くなることを意味する。CB18型は現行FB16型より全長が約40mm短くなっている。スバルの宿命として、フロントオーバーハングに水平対向エンジンが載ることになるのだが、新型ではエンジン長が短くなったことで約20mm重心が後方へ移動できたという。
現行のF型(FA型/FB型)のボアピッチは113.0mm。これは、最大94.0mm(2.5ℓのFB25型)のボア径に対応するため。1.6ℓのFB16型の78.8mmのボア径に対しては大きすぎるボアピッチだったのだ。
CB18型の98.6mmのボアピッチは80.6mmのボア径に最適化している。これは、「C」型の新エンジンの排気量の上限が1.8ℓであることを示唆している。エンジニアは、「排気量ダウンは可能。排気量アップは絶対にしないという約束はできないが、1.8ℓを上限に開発しました」という。
ボアピッチが短くなったことで、クランク長も34.6mm短くなった。それを可能にしたのは、「カミソリの薄型化」である。スバルの水平対向エンジンのクランクは、薄いクランクウェブゆえにその独特な形状から「カミソリクランク」と言われてきた。今回のCB18を見ると、現行のFB16のクランクウェブは「カミソリ」ではなく「斧」くらいに見える。そのくらい新型のクランクウェブは薄い。「設計と言うより、製造の面でこれ以上薄くは造れない。水平対向エンジンを作り続けてきたスバルだからこそ造れるクランクです」とエンジニアは話してくれた。これだけ薄くても、強度はFB型より新型CB型の方が高いというのも驚きだ。
CB18型はクランクセンターに対してボアセンターを8mmオフセットするオフセットクランクを採用している。
結果、CB18型は排気量がFB16型より196cc排気量アップしたにもかかわらず、全長で40mm短く重量も補機込みで5kg軽く仕上がった。補機はCB型の方が多くのデバイスを採用しているので、主機のみでは10kg以上CB型が軽い。
新型CB18型のボア×ストロークは80.6mm×88.0mm。ストロークをボアで割ったS/B比は1.092である。
現行のFB16は、78.8mm×82.0mmでS/B比は1.04だ。効率を追求するためにロングストローク化するエンジンの例に漏れずスバルの水平対向もCB型でロングストローク化してきたわけだ。