TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
アバルト(ABARTH)が好調だ。2019年は2955台を販売し、17年の3264台に次ぐ史上2番目の好成績を残した。本国イタリアに次いで、世界第2位の販売台数を誇るという。2020年上期(1〜6月)は例に漏れず、新型コロナウイルスの影響を受けて……と言いたいところだが、6月に記録した月販420台は、これまた史上2番目の好成績なのだという。
新型コロナウイルス感染防止の対策を徹底しつつ営業を続けていたこともあるが、新しいCI(コーポレートアイデンティティ)を導入したショールームの整備が一因だと、日本でアバルトを展開するFCAジャパンは分析している。フィアットとアバルトを扱う新しいショールームは、新CIで内外装を統一。外観はグレーの壁にFIATとABARTHのエンブレムを配置。フィアットを展示するコーナーのインテリアは、ホワイトを基調にレッドをアクセントカラーに用いてイタリアらしい明るい雰囲気を演出している。
いっぽう、アバルトの展示コーナーは、サーキットを連想させるようなグレーのタイルを敷くなどし、フィアットとは異なるムードの別空間に仕上げている。そのアバルトの現在のラインアップは、フィアット500がベースのアバルト595シリーズが3バリエーション。それに、フィアット124スパイダー(国内未導入)をベースにチューンアップした、アバルト124スパイダーである。16年8月に国内デビューを果たしている。
アバルト124スパイダーのベースはマツダ・ロードスター(ND型)だ。エクステリアからその素性を感じ取るのは難しく、むしろ、72年の初代アバルト124スパイダーを強く想起させる。対照的に、インテリアはマツダ・ロードスターの雰囲気が強く残っている。クラシカルな雰囲気のシート、スクエアな形状のシフトノブ、真っ赤なエンジン回転計とホーンパッド中央のアバルトエンブレム、それに、ステアリングホイール頂点の赤いマーキングが、アバルト124スパイダーらしさを主張する。
エンジンルームは観賞する価値がある。全長の短いコンパクトな4気筒エンジンは、サスペンションマウントよりも後方で縦置きに搭載されている。もうそれだけで、存分にスポーツだ。エンジンの左側にあるコンプレッサーが力を誇示しているかのよう。FRスポーツカーの定石どおりの設計をしっかり受け継いでいることが、エンジンルームからも伝わってくる。
サスペンションやブレーキは、ハードに攻めても音を上げない程度のスペックを備えているが、沿道に生い茂る木々の様子や、雲の動きを意識しながら、肩の力を抜いて走るのがちょうどいい。自然を身近に感じながら、刺激の強いクルマとの対話を楽しめるのが、アバルト124スパイダーの魅力だ。
アバルト124スパイダー(6MT)
全長×全幅×全高:4060mm×1740mm×1240mm
ホイールベース:2310mm
車重:1130kg
サスペンション:Fダブルウィッシュボーン式/Rマルチリンク式
駆動方式:FR
エンジン
形式:直列4気筒SOHCターボ
型式:3268
排気量:1368cc
ボア×ストローク:72.0mm×84.0mm
圧縮比:9.8
最高出力:170ps(125kW)/5500pm
最大トルク:250Nm/2500rpm
燃料供給:PFI
燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク:45ℓ
燃費:JC08モード 13.8km/ℓ
トランスミッション:6速MT
車両本体価格:406万円