REPORT●栗栖国安(KURISU Kuniyasu)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
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日本国内ではバックボーンフレームを採用したスーパーカブに代表されるバイクが幅広く支持されているが、それと同じように東南アジア諸国ではアンダーボーンフレームを骨格としたコミューターが、多くの人々に支持されている。そのため日本の4メーカーもアンダーボーンフレームのバイクを数多く投入している。今回試乗したヤマハのT115もそうした中の1台だ。
フルカバードタイプのボディは、一見するとスクーターのようでもある。しかし、ステップやペダル類がちゃんと独立していて、その形状はまさしくバイクそのもの。駆動方式も一般的なチェーンドライブだ。そしてなんといっても特徴的なのが前後17インチタイヤを装着していることだ。最近はスクーターでもラージホイールを採用するものが増えてきたが、アンダーボーンフレームのバイクは当初から17インチだった。メイン市場である東南アジアでは、舗装状態の悪い道や未舗装路がまだまだ多い。そうした悪路を3人乗り、4人乗りで走る光景が当たり前だ。そうした状況にも対応させるため17インチタイヤは必然だったのだ。
エンジンはFI採用の空冷単気筒。114㏄の排気量から8.7psの最高出力を発揮する。パワー自体は排気量なりの数値だが、低中速重視のエンジン特性なので、市街地から郊外を走ったときの瞬発力は侮れないものがある。ミッションは4速で、自動遠心クラッチ式を採用している。そう、クラッチ操作なしに変速できるシステムだ。だから適切なギアチェンジ操作をすると気持ちよく加速させられるのだ。そういう点でもバイクらしさがあるのがT115の特色だといえるだろう。また、小型二輪のAT限定免許でも乗ることができるのも大きな魅力だ。
ポジションは一般的なバイクと大差ない。前方に燃料タンクが位置していないのでニーグリップはできないが、違和感は覚えない。おそらくスーパーカブなどと同じという意識があるからだろう。
ハンドリングは軽快だ。車重が98㎏と軽量なことに加え、タイヤサイズがフロント70/90-17 、リア80/90-17と細めなのでバンク操作が軽やかなのだ。コーナリングの感覚もスポーツバイクに近い印象で、だからこそ、この手のバイクによって争われるレースに人気が集まるのだろう。今回は市街地をメインに走行したが、これならワインディングも十分に楽しめそうだ。
ブレーキはフロントシングルディスク、リアドラムの組み合わせだが、制動力に不足は感じなかった。適度なクッション性を持つ前後サスペンションも、快適な乗り心地を与えてくれるだけでなく、そこそこのスポーツライディングを許容してくれる性能はある。市街地をはじめ一般道を走行するぶんにはノーマルでも大丈夫だ。よりスポーティさを求めるのなら、ユーザー自身で高性能サスペンションに換装するなりすればいい。
実用性においても高レベルだ。シートは余裕でタンデムできる長さがあるし、後部にはキャリアも標準装備している。さらにシート下には収納スペースが確保されているというおまけ付き。荷物の積載能力が高いので、夫婦やカップルでタンデムツーリングもできてしまうのだ。もちろんコミューターとしての実力も高いから、さまざまな用途に利便性を発揮してくれる。これだけ活躍できる要素がありながら15万9000円(税込み)という低価格を実現しているT115は、コストパフォーマンスの高さでも群を抜いている。
年式:2019
排気量:114cc
馬力:6.4kW ( 8.7PS ) / 7,000 rpm
全長×全幅×全高(mm):1,910 × 710 × 1,095
シート高:780mm
重量:98kg
タンク容量:4L
タイヤサイズ:F 70 / 90 - 17 R 80 / 90 - 17
製造国:中国