TEXT●御堀直嗣(MIHORI Naotsugu)
昨年の東京モーターショーに出展されたホンダ初の電気自動車(EV)となるホンダeの日本仕様が公開された。まだ正式発表前なので、内容は暫定という扱いだが、それでもホンダeの魅力を身近に感じられる情報が手に入った。
EVは、2010年に日産リーフと三菱自のi-MiEVが一般の消費者向けに発売されたが、エンジン車に比べると一充電走行距離が短く、充電への懸念も多く語られた。そして10年後の今日販売されるEVの多くが、一充電で300~400km走行できるようになり、販売は徐々に伸びている。
一方ホンダeは、あえて一充電走行距離200kmを目安とし、市街地での利用を中心に商品性を確立した。(実際の走行距離はWLTCモードで283km、JC08モードで308kmを達成している)
特徴は、デザイン/走り/HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)/コネクティッドの4項目で示される。
外観は、簡素で親しみのある造形で、市街地で他のクルマと一緒になっても目立ちそうだ。実は機能的な狙いもあり、黒色をした部分に充電口など機能が示されており、それ以外の外装飾は滑らかな造形である点にこだわりがある。たとえば丸みのある外観を追求するためフロントはドアノブが外板と一体となっており、ドアの開閉の時だけせり出す仕組みだ。
室内は、自宅のリビングのような居心地のよさを求めている。市街を中心とした日常の移動を主とした自宅から仕事先へというように、部屋から部屋への移動をつなぐモビリティとして、住まいに通じるインテリアとされたのである。
ダッシュボードは平らで、そこに5枚の液晶画面が並び、ファブリックの座席はソファーのようで、グレーと茶と黒を使い分けた淡い印象の緊張感を伴わない色遣いの空間になっている。
走りは、モーター駆動による力溢れる加速はもちろんだが、欧州の石畳の道路などでも快適な乗り心地を目指し、4輪独立懸架のサスペンションを採用する。ホンダの乗用車といえば前輪駆動が特徴だったが、ホンダeは後輪駆動をあえて採用した。それは最小回転半径が軽自動車より小さい4.3mを実現するためだ。
パリ市街では、バンパーとバンパーが接触するほどの縦列駐車をする。単に路地を曲がるというだけでなく、縦列駐車のような使い勝手においても小さな回転半径は大いに役立ち、フランス人たちを驚かせるのではないか。加減速の運転操作は、アクセルのワンペダル方式を選択できる。
HMIで、全面的な液晶画面が正面に並ぶ様子はモーターショーなどのコンセプトカー以外ではめったに見ることのない取り組みだ。その画面は、スマートフォンのようなタッチ操作で様々に内容を切り替えられる。左右の端の画面は、ドアミラーの代わりとなる後方確認のためのカメラ映像になる。ほかに、パーソナルアシストと呼ばれる、AI(人工知能)技術を応用した音声入力での各種操作も行える。
コネクティッドは、スマートフォンの機能との連動が主たる内容だ。EVは空調に電気を奪われると走行距離に影響が及ぶ。そこで出発前の充電中に空調を作動させ、事前に車内の温度環境を整えておくことで、リチウムイオンバッテリーに充電された電力を走りに有効活用することができる。
駐車しているときにも役立つクルマであるようにと、車内Wi-Fi機能を備え、たとえば急速充電中に動画を観るなど時間を有効活用できるようにしている。
ホンダeの4つの特徴の概要を一部紹介するだけで、これだけ長くなってしまった。ホンダ初の市販EVとして、内外装の造形はもちろん、EVらしさを活かした走行性能に加え、最新そして先進の情報通信技術を満載したというのが、ホンダeである。
次回から、それぞれの詳細を解説していくことになる。