DLCコーティングは真空チャンバーの中に蒸発源として炭化水素ガスを導入、直流アーク放電プラズマ中で炭化水素イオンを生成させ、負電圧をもった被コーティング材にその電圧に応じたエネルギーで炭化水素イオンを衝突、固体化させて成膜させる手法(炭化水素イオンプレーティング法)が一般的だが、これでは膜中に水素が含有されてしまう。水素は撥油性があるため、常にオイルと接するエンジン内部部品には不都合だ。
そこで日産では炭化水素の代わりに水素を含まないグラファイト(黒鉛)を蒸発源に使用することで膜中から水素を除き、オイルとの密着性を高めた世界初の「水素フリーDLCコーティング」技術を2006年に開発した。この水素フリーDLCコーティング膜に特殊オイルを組み合わせて超低フリクション皮膜を形成、摩擦係数0.07という、エンジン部品向けとして過去最良の摩擦低減効果を実現している。
バルブリフターだけでなく、ピストンリングやピストンピンなどに適用可能で、これらすべてにコーティングを施した場合、従来より摩擦損失を25%低減させ、燃費を3~4%改善する効果があるという。