TEXT●森口将之(MORIGUCHI Masayuki)
ダウンサイジングターボのハイテクエンジンが主流になったからこそ、6.2ℓもの大排気量V8を自然吸気のプッシュロッドという原初的なメカとともに用意するGMの男気?を受け入れたい。もちろん彼らも2ℓ4気筒DOHCターボのようなエンジンは持っているが、一度でもビッグV8を味わったらこれしかないと思ってしまう。
シーンによって4気筒と8気筒を切り替え、ATは10速と環境対応もしつつ、アクセルを踏めばロロロ...という重低音を響かせ、回せばエモい快音が乗り手を包み込む。でもそこに威圧感はなくフレンドリーな空気感。だからミッドシップに切り替わったコルベットより、カジュアルなカマロとともに味わいたい。
チューニングという言葉はパワーアップのことではない。楽器の世界を見ればわかるように、調律が本来の意味だ。自動車の世界でその語源にもっとも近い仕事をしているのがアルピナだろう。
今はV8やディーゼルもラインナップしているが、個人的なイチオシは初の市販車B7ターボと同形式の直列6気筒ガソリンターボ。3ℓツインターボは圧倒的にパワフル&トルクフルである一方、5000rpmを超えたあたりから高度にバランスされたストレート6の機械の音を聞かせてくれる。スピードではなくサウンドを楽しむためにペースを上げてしまう。M3のようなクルマは日本車が真似できるかもしれないが、こういう世界はアルピナの独壇場だ。
今年生誕40周年を迎えたパンダ。多くの人はジウジアーロの傑作である初代を思い出すだろう。でも現行型も捨てがたい。量産乗用車として希少な2気筒エンジンを積んでいるからだ。ツインのモーターサイクルを3台連続で所有し、先代フィアット500とシトロエン2CVに同時に乗っていた自分にとって、これは外せない。独特のピックアップとパンチでぐいぐい速度を上げていく様子が頼もしいし、タコメーターを見なくても美味しいところが分かる。鼓動を味わいながら流すのも、活気みなぎる中回転域を多用して走るのもいい。
日々の生活にリズムとテンポを加えてくれるツインエア。だから器は500でなくパンダを選んだ。
【近況報告】
ジムに行かなくなった代わりにウォーキングを始めた。凝った建築を発見したり、昔の川の跡を探索したり、スローに動く楽しさに開眼。2駅ぐらいは平気で歩くようになった。
【プロフィール】
カー・マガジン編集部を経てフリーに。2輪車、自転車、公共交通などモビリティ全般を守備範囲とする。フランス車を中心に乗り継ぎ現在の愛車はルノー・アヴァンタイム。
『気持ち良いエンジンならこの3台』は毎日更新です!
内燃機関は死なず! 世の中の流れは電動化だが、エンジンも絶えず進化を続けており、気持ちの良いエンジンを搭載したクルマを運転した時の快感は、なんとも言えないものだ。そこで本企画では「気持ち良いエンジンならこの3台」と題して、自動車評論家・業界関係者の方々に現行モデルの中から3台を、毎日選んでいただく。明日の更新もお楽しみに。(モーターファン.jp編集部より)