TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
新型ハリアーは、視覚に訴える高級感の演出がうまい。メーカーイチ押しのカラーはプレシャスブラックパールだ。パネルの抑揚が作る陰影が艶やかさを引き立てており、パンパーやグリル、ドアノブに配したクロームメッキがいいアクセントになっている。
横一文字のテールランプは最近の流行りを取り入れたものだろう。このグラフィックを見ただけで、「最新のクルマだね」とわかる仕掛けだ。リヤのキャビンは強く絞り込まれており、そのせいもあってリヤフェンダーの張り出しが強調され、真後ろから眺めたときの安定感といったらない。運転席に収まって前を眺めるより、そこからの視点でハリアーのリヤスタイルを眺めていたい気分だ。
インテリアもいい。最初に目に飛び込んできたのは、ダッシュボードのセンターに位置する大型ディスプレイだ。カタログを確認してみたら12.3インチある。ヤリスに乗ったときは8インチのディスプレイがやけに大きく見えたものだが、車格と空間の広さに合わせたということだろう。大画面の4Kテレビをリビングルームに据えたような満足感が味わえる。画面を3分割して複数の情報を表示しても充分な表示面積を確保できるのは、大画面ならではだ。マップをはじめグラフィックが古くさくては興ざめだが、大画面で表示しても見栄えのするグラフィックになっている。
センターコンソールは馬の鞍をイメージした革張りで、上質感がある。ダッシュボードからドアパネルにかけての形状や素材、加飾も上質だ。押しつけがましさがないのがいい。ライト点灯と連動した室内のイルミネーションは深いブルーで、「なんだか、いやらしいなぁ」と思いつつも、好きである。
新しい技術の採用にも積極的だ。新型ハリアーはトヨタ車として初めて前後方録画機能付きのデジタルインナーミラーを採用している。画像が粗いとモヤモヤした気分になるものだが、ハリアーのそれはクリアで、後続車のドライバーの顔までしっかり認識できる。試乗時は悪天候だったが、視界の条件が悪いときほどありがたみを感じる装備だ。
調光パノラマルーフもトヨタ車としては初採用だ(一部グレードにメーカーオプション)。調光システムがオフの状態では障子越しのようなやわらかな光が差し込み(不透明の状態)、調光システムをオンにすると瞬時に透過状態に切り替わる。シェードの電動開閉も可能だ。フイルムに電圧をかけることで、ランダムに並んでいた液晶が整列し、光を透過させる仕組み。電圧オフ(調光システムオフ)の状態では液晶がランダムに並んでいるため外からの光が拡散され、障子のような不透明な状態になる。紫外線は99%以上、赤外線は90%以上カットするのもポイントだ。
この手の装置をルーフに搭載すると頭上空間が犠牲になりがちだが、身長184cmの筆者が後席に乗り込んでも、頭上に充分なスペースが残る。もっというと、足元のスペースにも余裕がある。柔らかな光が室内を満たす感じが新鮮だし、ボタンひとつでパッとクリアになるマジックのような切り替えも新鮮。調光パノラマルーフは後席のゲストをもてなすのにちょうどいい。後席ついでに触れておくと、市街地での乗り心地や前席乗員との会話明瞭性も高級車にふさわしいレベルであることを確認できた。
運転席に戻る。プラットフォームを共有する(TNGAプラットフォームひとつ、GA-K)RAV4の運転席と比べると、ハリアーはやや深くもぐり込んだ印象で、囲まれ感が強い。逆に、ハリアーからRAV4に乗り換えると、上半身が大きく露出した感じを受ける。機動力をウリにするRAV4は不整地などで周囲がよく見えることが重要だが、ストリートがメインステージのハリアーは落ち着いた雰囲気を優先したいということだろうか。囲まれ感が強いからといって、四囲の視界に何ら問題はなく、初めて乗り込んでも取り回しに気を遣うことはない。
ハイブリッド仕様は、最大熱効率41%を達成したA25A-FXS型の2.5ℓ直4自然吸気ガソリンエンジンとモーターの組み合わせだ。2WD(後述するが、4WDの設定もある)のシステム最高出力は160kW(218ps)である。フロントに搭載するモーター単体の最高出力は88kW(120ps)だ。ヤリス・ハイブリッドでも感じたことだが、最近のトヨタは電気エネルギーと、電気で動かすモーターを、燃費よりもファン・トゥ・ドライブに振り向けて使うようになっている。
だから、走りが気持ちいい。モーターならではの応答性の良さと伸びのある加速は、トヨタの最新ハイブリッド車の大きな魅力だ。走りの気持ち良さは、ガソリン単独仕様よりもはるかに上である(それに、はるかに静かで、速いのに上品だ)。ドライバーの加速要求やバッテリー残量などの関係で、エンジンが始動してモーターを助けるケースが出てくるが、エンジンの存在は徹底的に押さえ込まれており、意識しなければ気にならない。ハリアーのハイブリッド仕様はモーターが主役で、エンジンは完全に脇役に徹している。
新型ハリアーには、「もっと楽しんでよ」とばかりに「SPORT」モードが設けてある。シフトレバーの前方にあるドライブモードセレクトのスイッチを操作してSPORTモードに切り換えると(「ECO」モードもある)、鋭い加速をする制御になり、同時に電動パワーステアリングの制御もスポーツ指向に切り替わる。NORMALでも、モーターの気持ち良さは充分に味わえる印象だ。
トヨタ・ハリアー ハイブリッド Z レザーパッケージ
全長×全幅×全高:4740mm×1855mm×1660mm
ホイールベース:2690mm
車重:1690kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rダブルウィッシュボーン式
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:A25A-FXS
排気量:2487cc
ボア×ストローク:87.5mm×103.4mm
圧縮比:-
最高出力:178ps(131kW)/5700rpm
最大トルク:221Nm/3600-5200rpm
過給機:×
燃料供給:DI+PFI(D-4S)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:55ℓ
モーター:
フロント 3NM型交流同期モーター
最高出力120ps(88kW)
最大トルク202Nm
駆動方式:FF
WLTCモード燃費:22.3km/ℓ
市街地モード19.5km/ℓ
郊外モード25.1km/ℓ
高速道路モード22.1km/ℓ
車両価格○482万円
試乗車はオプション込みで521万6000円
4WD仕様は電気式で(トヨタは「E-Four」と呼んでいる)、プロペラシャフトで機械的にフロントの動力をリヤに分配するのではなく、リヤにモーターを搭載することで成立させている。リヤモーターの出力は40kW(54ps)だ。ドライバー正面のマルチインフォメーションディスプレイを前後輪のトルク配分を表示するモードに切り換えて観察していると、日常的に後輪に駆動力を分配しているのがわかる。
駆動力を掛けながら旋回するシーン(首都高速のコーナーを通過するようなシーン)では、旋回に入ったところで後輪に駆動力を分配しはじめる様子が、メーター表示でわかる。頭が入った後に駆動力をリヤに振り向けることで、フロントタイヤの能力を曲がるため残す考えだ。同時に、車両挙動も安定する。悪路走破性だけではなく、曲がりやすさを向上させるためにも4WDを使っているのだ。
新型ハリアーは上質なムードにだけ価値があるSUVではない。ハイブリッドも4WDも、走りの楽しさを高めるのに使っているし、よくできている。そしてそれが、ハリアーの価値を高めるのに大きく貢献している。スタイルが良くて身体能力の高いアスリートが、タキシードを見事に着こなして歩いているかのようだ。完璧である。
トヨタ・ハリアー ハイブリッド Z E-Four
全長×全幅×全高:4740mm×1855mm×1660mm
ホイールベース:2690mm
車重:1740kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rダブルウィッシュボーン式
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:A25A-FXS
排気量:2487cc
ボア×ストローク:87.5mm×103.4mm
圧縮比:-
最高出力:178ps(131kW)/5700rpm
最大トルク:221Nm/3600-5200rpm
過給機:×
燃料供給:DI+PFI(D-4S)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:55ℓ
モーター:
フロント 3NM型交流同期モーター
最高出力120ps(88kW)
最大トルク202Nm
リヤ:4NM型交流同期モーター
最高出力54ps(40kW)
最大トルク121Nm
駆動方式:AWD
WLTCモード燃費:21.6km/ℓ
市街地モード18.9km/ℓ
郊外モード24.2km/ℓ
高速道路モード21.4km/ℓ
車両価格○474万円
試乗車はオプション込みで513万1600円